フォルクスワーゲン・ゴルフE(6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフE(6AT) 2004.06.17 試乗記 ……265万1250円 総合評価……★★★★ すべてを一新したフォルクスワーゲンの代表選手「ゴルフ」。ラインナップ中、唯一1.6リッターエンジンを搭載するエントリーグレード「E」を、自動車ジャーナリストの生方聡がテストした。
|
すべてにおいてリーダー
2003年10月、ドイツで開かれた国際試乗会で手応えを感じた新型ゴルフがついに日本に上陸した。
国際試乗会では、1.6リッター直噴「FSI」エンジンをほとんど試すことができず、また、6段オートマチックとの組み合わせも用意されなかったから、日本での試乗を心待ちにしていたが、新型ゴルフは私の期待を裏切らなかった。それどころか、6ATとの組み合わせが、新型ゴルフの印象をさらによいものにしたのだ。
旧型のいわゆる「ゴルフIV」は、品質や質感という点でライバルを一歩リードする存在だったが、ガソリンエンジンや走りの部分では、むしろライバルに後れを取っていたと思う。しかし、新型ゴルフは、新開発のFSIエンジンやマルチリンクリアサスペンションの採用によって、いまやあらゆる点でこのクラスをリードする存在になったといえるだろう。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2003年のフランクフルトショーでデビューした5代目「ゴルフ」。大きくなったボディ、マルチリンク式の独立懸架になったリアサスペンション、そして直噴エンジンの採用がメイントピック。本国では、1.4リッターからのガソリン、複数のディーゼルユニットと、パワーソースの種類は豊富。
(グレード概要)
ゴルフVの日本での販売は、ミニバン「ゴルフトゥーラン」が先行した。大本命たる5ドアハッチバックは、2004年6月9日発売。エンジンは、1.6リッター(116ps)、2リッター(150ps)のいずれも直噴ユニット。トランスミッションはティプトロニック付き6段ATの1種類。ベーシックな1.6リッター「E」、2リッターは「GLi」をベースに、上位車種「GT」とレザー内装の「GTレザーパッケージ」がラインナップされる。
「E」は1.6リッターエンジンを積むベーシックグレード。「GLi」以上のグレードに較べて装備品が簡略化され、ホイールはスチール製+キャップを装着。オートライト、レインセンサー付きフロントワイパー、クルーズコントロールやランバーサポートなどの設定はない。とはいえ、快適装備は必要十分。AM/FM付きCDプレイヤー+10スピーカー、セミオートエアコンは標準装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーターは、フォルクスワーゲンらしい、シンプルで大きく見やすいデザインだ。速度計と回転計のまわりにクロームリングがはめられているが、その内側の目盛り部分が立体的になったのが従来と違うところ。ふだんは白、ライト点灯時はブルーのイルミネーションで照らされるのはこれまでどおりだ。
旧型に比べると、ダッシュボードの形状が多少シンプルで直線的になり、すっきりした印象を受ける。センターパネルに配置される標準のオーディオは機能のわりにスペースを使いすぎている感じがするが、メーカーオプションの純正DVDナビを装着すると収まりがよく、バランスもいい。
エントリーモデルということで、上級グレードに比べて装備が省かれていたりグレードダウンしている部分はある。たとえば、ステアリングホイールやシフトレバーは革巻きではないし、エアコンは温度調整のみ自動で、吹き出し口や風量の選択は手動のセミオート式を採用している。オートライト、自動防眩ミラーなども装着されないが、いずれもなければないで、とくに不便は感じないものばかりだ。
(前席)……★★★★
旧型に比べて改善されたのは、運転席まわりに小物などの収納スペースが充実したことだ。
グラブボックスやアームレスト下の収納、センターコンソール、ドアポケットは拡大された。灰皿下のトレイ、ステアリングコラム横のポケット、天井のサングラスケース、そして、ダッシュボード中央のトレイなど、ちょっとしたモノを置くスペースが増えている。ドリンクホルダーは運転席と助手席の間に移されて使い勝手が向上した。仕切りが栓抜きというのがなんともユニークだ。
シートはサイドサポートが低いゆったりした形状で、厚めでソフトなクッションのおかげもあって、座り心地はゆったりしている。ランバーサポートは省かれているものの、腰が疲れる気配はなかった。
シートの調整はすべて手動式で、スライド、リクライニングはもちろん、座面の上下も可能。ステアリングコラムのチルト/テレスコピック機能も備わり、自然なポジションを得ることができる。
(後席)……★★★★
旧型より50mm全長が伸びた新型ゴルフだが、それ以上に伸びたのがホイールベースで、こちらは60mmのアップである。一番の恩恵を受けたのはリアシートのスペース拡大で、足下や膝のまわりの余裕が確実に増した。また、ルーフが後ろに伸びるハッチバックだけに、頭上のスペースも十分確保されている。
シートは、フロントと違ってクッションが硬めだが、それでも座り心地は悪くない。後席中央にヘッドレストと3点式シートベルトが用意されたのは歓迎すべき点。また、左右シートのISOFIX対応チャイルドシート固定装置が使いやすくなったのもうれしいトコロだ。
(荷室)……★★★
旧型よりもリアオーバーハングが短くなっているにもかかわらず、標準状態のラゲッジスペースは、20リッター増えて350リッターになった。トーションビーム式からマルチリンク式に替わったリアサスペンションは、ダンパーとコイルスプリングを別体化するなどの工夫を凝らし、荷室への影響を抑え、スクエアで使いやすい形状としている。もちろん、分割可倒式のリアシートを倒せば荷室の拡大が可能。シートバックのヒンジを工夫することによって、ダブルフォールディング方式をやめても、シートバックが水平近くまで倒れるようになった。トランクスルー機能も搭載される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ひとまわり大きくなったボディに1.6リッターエンジンの組み合わせは「大丈夫か?」と不安だった。実際に運転してみると、6段オートマチックと組み合わされたおかげもあって、出足にもたつきはなく、想像以上に力強く走る。トルク特性はほぼフラットだが、4000rpm付近で多少盛り上がりを見せ、回せばそれなりにスポーティに走ることさえできるのだ。
試乗コースとなった箱根の山道では、登りでもうすこしトルクがほしいと思ったし、2リッターFSIと比べると、確かにトルクは細く、静粛性やスムーズさは引けを取る。とはいえ、ふだん使ううえでは十分実用的な実力を備えていると思う。あとは実用燃費がどうなのか、機会があれば確かめてみたい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
新型ゴルフでは、新開発のマルチリンクリアサスペンションが注目されているが、予想をはるかに超える仕上がり具合には驚くばかりだ。
まずハンドリングは、これまで乗ったどのフォルクスワーゲン車よりもアンダーステアが弱く、軽快で、気持ちよくコーナーをクリアできる実力を手に入れた。旧型に比べると重心は高いのだが、それを感じさせることはなく、コーナリング時のロールも安定しており、まさにオンザレール感覚でワインディングロードを駆け抜けることができた。
乗り心地についても、大きな入力に対するサスペンションの動きがしなやかで、しかも、十分なダンピングを示し、フラット感も上々。ただ、荒れた一般道を低速で走るような場面では、タイヤの硬さが災いして、乗り心地が悪化するのが玉にキズだ。
(写真=荒川正幸/2004年6月)
|
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年5月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)195/65R15(後)同じ
オプション装備:マルチメディアステーション(24万6750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】 2026.7.18 ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。
-
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】 2026.7.17 「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。





























