ホンダ・エリシオンG FF/VX 4WD(5AT/5AT)【短評(後編)】
エリシオンの第一印象(後編) 2004.05.27 試乗記 ホンダ・エリシオンG FF/VX 4WD(5AT/5AT) ……338万6250円/419万4750万円 “新世代プレミアム8シーター”を謳う「エリシオン」。よりホンダらしいモデルは、V6モデルか直4か? 自動車ジャーナリストの河村康彦が試乗した。オススメ・アイテム
2004年5月13日から販売が開始されたホンダの新型ミニバン「エリシオン」。そのインテリアは、“プレミアム8シーター”と謳われるだけあり、スウェード調のルーフライニングを採用したり、木目調パネルを各部に配したりと、上質さが前面に押し出される。奥行き感と未来感を強調した「スーパー立体自発光メーター」は、ホンダ特許のプリズム原理を用いた“ホログラム調表示の液晶ディスプレイ”を加えたジマンの作とか。全般にガンダム(死語?)調デザインの目立つ「オデッセイ」より、やはり大人びた雰囲気だ。
さすがに「2+3+3」で8名イッパイが乗り込むと、窮屈感は否めない。が、各列2名(すなわち合計6名)までであれば、どこのポジションでも相当な余裕が感じられる。
2列目、3列目の対座にこだわるというのであれば、オプションで「2列目回転機構付き6:4分割チップアップ&スライドシート」を選択することも可能だ。しかしその場合、セカンドシートが“回転台座付き”となって、サードシートの住人のレッグスペース(特に足先)をスポイルする。ぼくとしては、必ずしもオススメではない。
一方で、是非ともオススメのオプション装備が、ほとんどのグレードに用意される「リア右側のパワースライドドア」(トップグレードの「VZ」では標準装備)。せっかくの両側スライドドアのデザインを活かすには、これは“マスト”のアイテムだろう。
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小排気量の“ゆとり”
“走り”の話題となると、まずは気筒休止という最新デバイスを用いた3リッターV6モデル(250ps、31,5kgm)に注目が集まりそうなエリシオン。が、実際にドライブすると、2.4リッター直4モデル(160ps、22.2kgm)の、予想を上まわる仕上がりぶりにも驚かされる。
当然ながら、動力性能全般でより大きな余裕を味わわせてくれるのが3リッター版であることは間違いない。静粛性や加減速のフィーリングがよく、気筒休止システムによる切り替えなど一切意識させない、上級ミニバンとして「納得のレベル」だ。そのうえ、絶対的な加速力も十二分。通常走行であれば、まずアクセルペダル“半開”で「オツリがくる」と、そんなふうに感じられる。
一方で、絶対的な加速力では3リッター車に後塵を浴びはするものの、全般的な走りの軽快感では、2.4リッターが上をいく。なかでも、ハンドリングの感覚は明らかに3リッターバージョンを上まわる。走りのシーンによっては、「前輪が負担できる能力が、思ったより早く一杯一杯に近づいてしまう」印象があるV6モデルに対し、4気筒版では、路面とのコンタクト感の濃密さや微舵操作時の応答のたしかさ、それにコーナリング終了時のヨーダンピング性など、さまざまな点で、むしろ大きな“ゆとり感”がある。
よりホンダらしいのは?
2.4と3リッター。エリシオンの、搭載エンジンによる車両重量の違いは約100kg。その大半が「前輪荷重の違い」となると考えると、3リッターと比較したときの2.4リッターモデルのハンドリングのよさは、むしろ当然かも知れない。加速時の余裕や静粛性の差を認めたうえでも、ぼくは2.4リッターモデルをオススメしたくなる。
ちなみに、エリシオンのトランスミッションは、排気量を問わず5段ATのみ。オデッセイに用いられたCVTをエリシオンに導入しなかったのは、「重量の増加で動力性能に余裕がすくなくなったため、“可能なかぎり低回転域を選ぶ”というCVTのメリットを活かしにくいことや、そもそも3リッター用のCVTを現時点では用意できなかった」からだという。
さて、エリシオンの選択に関してまとめると、「大人数で高速道路をたびたび走る機会があるヒト」には、6気筒モデルをオススメする。「重量ハンディを負う4WD が必要で、かつ“走り”に余裕を感じたいヒト」にも、やはりV6がいいだろう。
けれども、ミニバンといえどもしっかり地に足がついたハンドリングを望む向きには、4気筒モデルの方が好まれると思う。幸い、ホンダ自慢の「i-VTEC」システムを採用した2.4リッターのDOHCユニットは、レギュラーガソリン仕様でありながら、必要にして十分な加速性能を発揮する。テストコース上で頑張れば、180km/のスピードリミッターにタッチできる程度の能力は備えているのだ。「よりホンダらしいエリシオン」といった場合、ぼくには、むしろ4気筒モデルの方が該当するように思える。
(文=河村康彦/写真=佐藤俊幸/2004年5月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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