フォード・フィエスタ1600GHIA(4AT)【ブリーフテスト】
フォード・フィエスタ1600GHIA(4AT) 2004.05.10 試乗記 ……195万8250円 総合評価……★★★ 1000万台以上を生産したヨーロッパの定番ながら、日本では馴染みの薄い「フォード・フィエスタ」。久々に導入された5代目に、自動車ジャーナリストの生方聡が乗った。 |
誰にでもオススメできる
ヨーロッパのコンパクトカーほど、日本の交通環境にぴったりの輸入車はない。ふだんのアシとして使うにはちょうどいい大きさだし、ハッチバックだから小さいわりに人も荷物も乗せることができる。そのうえ、日本車にはない“垢抜けた”雰囲気がある。
ヨーロッパフォードが日本に紹介した5代目「フィエスタ」も、まさにそんな輸入車である。派手さこそないが、乗ってみると「エンジン」「トランスミッション」「乗り心地」などが実に洗練されている。また、難しい操作のクセやアクの強さもないから、誰でもすぐに乗りこなせるところがいい。
強いてウィークポイントを挙げるなら、強烈なアピールが足りないことだろうか。実用車として生まれても、日本において、輸入車はいまだに“特別なクルマ”である。特別だからこそ、購入の動機づけになるようなアピールがほしい。
そんな気持ちを込めて、総合評価は★★★だが、誰にでも自信をもって薦められるクルマであることは間違いない。かつて「フォルクスワーゲン・ポロ」のオーナーだった筆者としては、「フィエスタもなかなかやるな!」というのが正直な感想である。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
欧州フォードのコンパクトハッチ「フィエスタ」は、初代が1976年にデビュー、これまでに1000万台以上が生産された息の長いモデルだ。2002年のフルモデルチェンジで5代目に進化した新型は、フォードグループの一員「マツダ・デミオ」とプラットフォームを共有。「Latin Spirit&German Head」をキーワードに開発され、実用性や基本性能の高さと、カジュアルなルックスや楽しい走りを両立したという。
ヨーロッパでは、3ドアと5ドア、エンジンは1.3、1.6、1.4ターボディーゼルと、バリエーション豊富なフィエスタだが、日本に導入されるのは、5ドアの1.6リッター+4AT仕様のみ。ベーシックな「GLX」と、アルミホイールやフォグランプなどを装着する「GHIA(ギア)」の2グレードを設定した。ボディ色は豊富で、イメージカラーの「フレアメタリック」(オレンジ)など8種類が用意される。
(グレード概要)
上級グレードの「GHIA」は、アルミホイールやフロントフォグランプ付きカラードバンパーなどを装着。6連奏CDチェンジャー付きラジオ+4スピーカー、オーディオリモートコントロール、フロントマップランプが備わるのが、GLXとの違い。SRSサイドカーテンエアバッグが標準装備されるのも、GHIAのみだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
最近のコンパクトカーは、ボディサイズのわりにインストゥルメントパネルが大きくて立派、存在感がある。このフィエスタもそうだ。シンプルなデザインのメーターパネルは見やすい。センターパネルのデザインも同様、スイッチ類が整然と配置されて使い勝手がいい。実に機能的なのだが、あまりにデザインが素っ気ないのが惜しい。なにも女性や若者に媚びる必要はないが、オトコでもうれしくなるような気の利いた演出がほしいものだ。
……などとまじめにコメントしてみたものの、フィエスタのセンターパネルを見て思わずニヤけてしまう私である。丸いふたつのエアベントが“目”、ハザードのスイッチが“鼻”、CDのスロットが“口”のようで、アニメに出てくるロボット顔に見えてしまうからだ。インテリアデザイナーはそこまで意図したのだろうか!?
大きなクルマより、コンパクトカーのほうが安全装備は気になる。フィエスタには衝突状況によって2段階に展開する、運転席/助手席SRSデュアルステージエアバッグが装着されるほか、運転席/助手席SRSサイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグ(GHIAのみ)を標準装着。3点式シートベルトは、後席中央を含めた全席分用意される。一方、ブレーキアシストやESPは装着されず、オプションでも用意されないのは残念だ。
(前席)……★★★
フィエスタには鮮やかなボディカラーがたくさん用意され、選ぶ側にとってはうれしいかぎり。シートやドアトリムは、GHIAではベージュの一色のみとなる。明るくやさしい雰囲気をつくりだすいい色である。
運転席に座ると、表面はソフトな生地だが、クッションはやや硬めで、それでいて平板な感じはしない。しっかりと身体を受け止めてくれる心地よさがある。
運転席からボンネットの凹凸が見え、また、スクエアボディに6ライトのサイドウインド構成のおかげでリアの見切りもいい。5ナンバー枠に収まる1685mmの全幅のおかげもあり、十分コンパクに感じられるはずだ。
(後席)……★★★
リアドアを開けてまず目に入ったのが、ドアウィンドウから生える黒いレギュレーターハンドル。いまどきパワーウィンドウじゃないのも珍しいが(フロントはパワー)、前席に比べて使用頻度がすくないからいい、ということだろうか?
居住空間は、大人2人が座っても十分なスペースが確保される。ボディ後ろまでルーフがまっすぐ伸びる2ボックススタイルだから、頭上スペースは十分。着座姿勢がアップライト気味なので、ボディサイズのわりに足下も窮屈ではない。フロントシートに比べると、フォールディング機構の弊害か、バックレストがやや平板で硬めなのが気になった。
(荷室)……★★
リアシートを起こした状態でも、奥行きが70cm弱あるラゲッジスペース。狭い感じはない。
もちろん、荷物が増えたら、リアシートを倒して荷室を拡大することが可能だ。フィエスタのリアシートは6:4の分割可倒式で、さらにシートクッションを起こせばフラットなフロアになる、ダブルフォールディング式を採用。ヘッドレストを外さなくてもダブルフォールドできるのは便利だ。しかし、クッションが分割式ではないので、片側だけダブルフォールドできないのは、もったいないと思った。
★が2つの理由は、テールゲートの外側にドアハンドルがないこと。ハッチを開けるには、いちいちダッシュボード上のスイッチを操作しなければならない。これではハッチバックの魅力は半減してしまう。ワゴンやミニバンが浸透したせいか、日本製ハッチバックでも、車内のテールゲートオープナーを廃止するクルマが増えてきたのに……。ぜひ改善を!
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
日本に導入されるフィエスタのエンジンは、1.6リッター直列4気筒DOHCユニットの1タイプだけ。最高出力100ps/6000rpm、最大トルク14.9kgm/4000rpmのスペックは際だったものではないが、実用性は非常に高い。
1130kgのボディをストレスなく発進させるエンジンは、常用する3000rpm以下の回転域でスムーズ、かつ必要十分なトルクを発生する。そのうえ、ちょっと加速しようとアクセルペダルを踏み増せば、適度にスリップして回転を上げるアイシンAW製の4段オートマチックとの組み合わせによって、実にレスポンスよく速度を増す。高回転域でもスムーズさは変わらず、静粛性も高い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
パワートレインと並び、フィエスタの美点といえるのが足まわりである。ヨーロッパ仕込みということもあり、コンパクトボディでも乗り心地は落ち着いており、重厚感すら覚えるほどだ。やや硬めではあるが、荒れた路面での突き上げは遮断され、段差を超えたときのマナーも悪くない。
試乗会では、パイロンスラロームの特設コースが用意されていた。きびきびと軽快に動き、ロールも抑えられている。楽しくて安心感があるうえ、癖のない素直な運転感覚が好印象だ。
(写真=荒川正幸/2004年5月)
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【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2004年4月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)175/65R14(後)同じ(コンチネンタル ContiTouringContact)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(6):高速道路(3)山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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