第112回:やめろぉ〜! クルマをイジめるなぁ〜(!?)「日産栃木工場で目撃したニッポンメーカーの意外なる“筋トレ”
2004.04.01 小沢コージの勢いまかせ!第112回:やめろぉ〜! クルマをイジめるなぁ〜(!?)「日産栃木工場で目撃したニッポンメーカーの意外なる“筋トレ”
■クルマ残酷物語!?
「や、やめてくれ〜うわぁ、そんなことぉ……」
先日の週末、日産の栃木工場で行なわれた「勉強会」に行ってまいりました。正確には「耐久信頼性実験見学・体験会」っつうんだけどね。俺たちみたいな40歳以下の若手(!?)フリー執筆者に向けて、日産様が開いてくれる貴重なイベント。アチラにも全然下心がないとはいわないけど、ありがたいお話です。日々、勉強不足を痛感しておりますから。
しかし驚いたね、耐久信頼性テストの実態。ほとんど「クルマ残酷物語」……っていうのはウソだけど「あーんなこと」や「こーんなこと」まで行なわれてるのだ。
まず驚いたのは名付けて「Z、アゴぶつけテスト」。現行「フェアレディZ」を30km/hで走らせ、高さ10cmの縁石へ直角に突っ込むのだ。
「これでアライメントが狂ったらダメなんですよ」って言ってたけど、痛そうなのなんのって。実際に運転させてもらったけど「バン!」どころか「バキッ!」っていいそうな衝撃。「うわぁ、Zちゃん、大丈夫ぅ?」みたいな……。
いわゆるひとつのサディズム!? かなりの自虐的行為でありました。まるで、転んで机の角にアゴでもブツけちゃうような感じ。
これのSUV版はもっと凄くて、高さ20cmの縁石に突っ込んだり、40km/hで直前ブレーキをかけつつ15cmの障害物にぶつかったり。いやー、性格ヘンになりそうです。
さらに驚いたのが「クルマしゅうまいテスト」(!?)。
たとえば摂氏40度、湿度90%、ついでに塩っけもたっぷりな大型サウナ室にクルマを数時間放置し、“蒸す”。次に乾かして、走行テストをし、数時間後に同じパターンを繰り返す、みたいな。
真夏の熱帯地方の海岸などを想定した耐久テストで、いかにサビないかをチェックしてるわけだけど、案外「食べたらおいしかったりして」!?
なーんて冗談はさておき、ほとんど“クルマイジめギリギリ”のリアルなテストばっかりなんでビックリよ。他にもいろいろアイデアを凝らしたテストが行なわれておりました。
■厳しすぎてもダメ
日産のエンジニア氏いわく「お客様になかなか伝えにくい部分」で、たしかに地味なテストの連続。パッと見わかりにくい品質向上のための努力だから、プロスポーツ選手で言えば「筋トレ」みたいなもんだよね。直接見てすぐわかる“品質”じゃなくって、長年使った時の“体力みたいな”品質だから。
あの世界のレアル・マドリード(スペインのクラブサッカーチーム)だって試合はもちろん、ことによっては練習風景でもお金取れるけど、さすがに筋トレじゃムリでしょ。
しかし、これぞ日本メーカーの核となる部分。欧米メーカーがなかなか敵わないところでもある。日産さんも言ってたもんね。「ドイツ車メーカーより、トヨタさんがなにやってるかは意識しますね」と。
実はこのテストの難しさは「厳しければイイってもんじゃない」ところにある。過度に過酷なテストは、無駄にボディを重くしたり、意味のないコストをかける結果になりかねない。お客にとってもデメリットになる。また最近では、求められる性能の質も変わってきて、新しいナビの操作系などに関しては「いかにストレスがたまらないか」をテストしたりするんだって。そのほか「中国は未知の世界ですねぇ。これからどういう風にクルマが使われるかをもっと調べなきゃ」だそうな。
うーむ、凄いぞニッポン! おそらく、この部分のテスト、管理が厳しくリアルだからこそ、日本車がジワジワと世界における「信用」を築き、日本メーカーがいまだにトップ企業でいられるんでしょう。すくなくとも、理由のひとつではあるな。某メーカーは、とりあえずおいといて……。
こうなったら俺も見習って、日経新聞でも過去10年分みっちり読むか? それより英語、中国語のトレーニングかな? などと思わされた1日でありました。きっとムリだけどね。あ〜ぁ。
(文=小沢コージ/2004年3月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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