メルセデスベンツSL500 (7AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツSL500 (7AT) 2004.03.10 試乗記 ……1311.0万円 総合評価……★★★★★ 電動格納式ハードトップ「バリオルーフ」を装備する、メルセデスベンツの高級ロードスター「SL」。2003年11月から、トランスミッションが7段ATとなった「SL500」を、自動車ジャーナリストの笹目二朗がテストした。
|
期待を裏切らない
最大の関心事である7段AT「7G-トロニック」の採用、これが聞きしに勝る素晴らしいできだった。メルセデスベンツの流儀通り、レバーの左右で行うマニュアル操作は、自分がやりたいようにできてストレスなし。Dレンジのオートマチックは、ドライバーとクルマの以心伝心がうまく、自分がやりたいことを機械がすべてやってくれる。BMWやジャガーに採用されているZF製6段ATより数段洗練されおり、不満はほぼ皆無だ。「ほぼ」と加えたのは、シフトレバーがやや手元に近く、肘を曲げて操作することになり、ハンドルからは遠いため。テレスコピックでハンドルやシートバックをレバーに合わせると寝そべり過ぎるし、ペダルが遠くなってしまうからである。
ポジション以外では文句がない。加減速の「−」「+」も横方向ゆえ、G感覚との方向性も問題ない。左ハンドル車は右手でシフトノブを操作するので、左に倒してシフトダウンするのが自然である。ギアのステップアップ比は、1速/2速間がクロースしており、エンジン回転の落差がすくなく繋がりはスムーズ。パワーも途切れない。
「SL」として他の部分に関しては、特にコメントを加えるまでもない。高価格スポーティ車としての造り込み、走りの性能などは第一級。期待を裏切らない。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
メルセデスベンツの最高級ロードスターが「SL」シリーズ。現行モデルは、2001年秋、12年ぶりににフルモデルチェンジした「R230型」で、電動格納式ハードトップの「バリオルーフ」を備える2座オープンである。電子制御シャシー「ABC」(アクティブボディコントロール)や、電子制御ブレーキ「SBC」(センソトロニックブレーキコントロール)などが新機軸として盛り込まれた。
ラインナップは、3.7リッターV6(245ps)搭載の「SL350」、5リッターV8(306ps)の「SL500」、5.5リッターV12気筒ツインターボ(500ps)を積む「SL600」、そして、5.4リッターV8スーパーチャージャー(500ps)搭載の「SL55AMG」。トランスミッションは、5段ATが基本だが、2003年11月からV8エンジンのみ、新開発の7段AT「7G-トロニック」を採用した。
(グレード概要)
SL500の特徴は、2003年11月に導入された新開発の7段AT。従来の5段ATよりギア比がクロースし、滑らかで素早いシフトを実現したほか、状況に応じて2段のシフトダウンを行うことで、加速性能を高めたという。
装備品は豊富で、電動調節式シートやエアコン、オーディオ、ナビゲーションシステムなどを標準装備。グレードが違っても装備品にほとんど差はなく、大きな違いは、「SL350」にABCが設定されないこととくらいである。多彩な電子デバイスも特徴。メルセデスベンツが誇る電子制御ブレーキSBC、シャシーコントロールABCをはじめ、ABSやESPなどが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
独立した丸型基調のメーター類は、視認性がよく、デザインもすっきりして厭味がない。7ATのギアポジションを示す表示はやや小さいが、Dレンジで走る人がほとんどであることをふまえれば、目立ち過ぎないといえる。ライトスイッチやウインカーレバーなど、メルセデスの伝統が受け継がれており、操作上の戸惑いはない。初めて乗った人でも、目で見てすぐ馴染めるだろう。ハイテク電子部品も採用されているが、押し売りがなくておおむね自然。ナビゲーションシステムは見やすい位置にあり、操作性まずまずだ。
(前席)……★★★★★
サイズ、形状ともに良好。たっぷりした容量を持ち、ホールド性よく、調整機構も完備している。いたれりつくせりだ。あらゆる体型にフィットさせうるように調整幅も大きい。小難は、助手席の人が降りたあとのシートポジションを標準状態に戻す際、ドア内張にあるポジションスイッチまで手が届かないこと。さらに欲をいうと、ヘッドレストは上下だけでなく前後調整が欲しい。座面先端に物入れがあって便利だが、蓋のロックはやや甘い。
(荷室)……★★★
折り畳み式の「バリオルーフ」を格納する関係で、スペースは大きく変化する。しかしオープンにしても、手荷物程度はシート後方の棚にも置けるし、格納されたルーフ下にもある程度はスペースが残る。イザとなったらルーフを上げてしまえば問題ないのだから、この手のクルマながら、贅沢なサイズゆえの基本は確保されているといえよう。開口部は広く、使い勝手もいい。内張りの仕上げも上々。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
エンジンに特筆すべきキャラクターはなく、即物的ながら、トルクもレスポンスも申し分ない。欲しいままのパワーがいつでも手に入る。新開発の7段AT「7G-トロニック」は、制御ソフトウェアの煮詰めが十分で、完成度が高い。7段階のステップアップ比も適切で、シフトは素早く変速ショックもすくない。横方向でシフトするマニュアルモードは、ステアリングの位置や前後Gに左右されず、賢明な方式だ。エンジンブレーキが即座に使えるのは便利である。レバーの位置が少々近すぎて肘が曲がり、かつハンドルから遠いのが玉に傷。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
硬めのセッティングながら、ソリッドな動きに乗り心地面での不快感はなく、ハンドリングは意のままになる従順さを持つ。ボディをはじめとするサスペンション各パーツの剛性が十分に高く、ステアリング操作に対して遅れのない、素直なレスポンスが心地よい。基本的にハイグリップなのはタイヤの恩恵も大きいが、パワーもシャシーもしっかり仕事をしており、十分な接地荷重/重量配分等々、FRとしての歴史の長さを感じさせる。ミューが確保された条件であれば無敵だ。ただし、ステアリングホイールの復元性は相変わらず期待薄だった。
(写真=郡大二郎)
|
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2004年1月11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:3059km
タイヤ:(前)255/40R18 95W/(後)285/35R18 97W(いずれもピレリ PZERO ROSSO)
オプション装備:パノラミックバリオルーフ(26.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:270.2km
使用燃料:40.5リッター
参考燃費:6.7km/リッター

笹目 二朗
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






























