メルセデスベンツEクラスワゴン(5AT)【試乗記】
変身した部長 2004.01.09 試乗記 メルセデスベンツEクラスワゴン(5AT) 「ちかごろ軟弱になった」とメルセデスをお嘆きの方、では、スリーポインテッドスターの“荷車”ことEクラスワゴンはどうだろう? 『CG』編集委員の高平高輝が乗った。日本車あやうし?
メルセデスは変わった。ここ数年、皆さんも同じように感じているはずだが、新しいステーションワゴンを見て本当にそう思う。何しろ、今度のワゴンは、後席を畳もうとしてレバーを握ると、邪魔にならないようスルリとヘッドレストが縮んで収まったりするのである。ちょっと前までの、いかにも頑丈でガンガン使えるけど「細腕じゃ扱えないよ、ウチの流儀を知らない素人さんはお断りだよ」といった乗り手を選ぶような雰囲気が一掃された。ひとことで言えば、人当たりがよくなった。
「初めてのお客様ももちろん大歓迎」という張り紙を掲げるようになった老舗、あるいは急に優しく部下思いになったモーレツ・ビジネスマン、「部長、変わったッスねー」という感じだろうか。
その部長、何があったか知らないが、人当たりよく優しくなったばかりでなく、実に気が利くようになった。細かなアイディアや気配りはこれまで日本車の独擅場のようなものだったが、いまやメルセデスも負けていない。というよりこのままでは日本車の立場が危ないほどだ。
「あれば便利」がある
メルセデスベンツのミディアムワゴンとしては4世代目に当たるこの新型Eクラス・ステーションワゴンには、「EASY-PACKシステム」と総称されるラゲッジルーム関連の多種多様な機能が盛り込まれている。
たとえば「イージーパック・ラゲッジルームカバー」は、テールゲートの開け閉めに伴って荷室カバーがDピラーに沿って自動的に上下するというもの。また「イージーパック・アンダーラゲッジルームトレー(床下物入れ)」や「イージーパック・シートバックコンテナ(後席背後の収納箱)」も標準装備されるほか、オプション(セットで10.0万円)で「自動開閉式テールゲート(リモコンキーでも操作可)」と「荷物固定用のイージーパック・フィックスキット」なるものも用意されている。
このフィックスキットに含まれる伸縮式バーやベルト(見た目も上等だ)などを組み合わせて使えば、フラットで広大な荷室(VDA容量は650〜1910リッター)の中で荷物が転がらず、植木鉢などもきちんと固定できる。ついでに言うと日本仕様は荷室手前の側面がえぐられており、ゴルフバッグも真横にして楽々積める。
要するにワゴンとしての基本を押さえながら、「あれば便利だよな」という細かな工夫に至るまできっちり詰めてある。繰り返すが、危うし日本勢である。
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お値打ち品
メカニズム面は、ベースとなった「W211型」Eクラスセダンと大差ない。エンジンは当面2.6リッターV6と3.2リッターV6の2種類(V8搭載のE500と4マチックは後日導入予定)、トランスミッションもティップシフト付き5ATのみ。それぞれモデル名は「E240ステーションワゴン」「E320ステーションワゴン・アバンギャルド」となる。
セダンとの相違点は30mm長くなったリアオーバーハングと、90kg重くなった車重である。そのぶん“走りっぷり”が気になるところだが、E240はいくぶん重さを感じるものの、もともと余裕のあるE320のほうは事実上変わらない。
乗り心地はワゴンのほうが若干硬め、特にリアは路面によって多少突き上げが気になることもある。これはリアに車高調整機構付きのエアサスペンションを採用した影響らしい。
そうそう、このワゴンの発売を機に、メルセデス自慢のバイ・ワイヤ式ブレーキSBC(センソトロニック・ブレーキ・コントロール)も、ホールドおよびストップ機能が加わった最新版にバージョンアップしている。
「ホールド機能」は、ペダルから足を離してもブレーキ圧を維持するというもの。「ストップ機能」は渋滞などでの低速時にブレーキを踏まなくても自動的に緩やかに車を停止させるというものだ。
これ以外はセダンと同じ、「ESP」や「6エアバッグ」などの安全装備は言うに及ばず、「メモリー付き電動シート」「DVDナビゲーション付きマルチファンクションコントローラー」など、まさに至れり尽くせり。セダンでは16.0万円のオプションだった「スライディングルーフ」が標準になっていることも僕は見逃さないね。まぁそのぶん、エアコンがちょっとグレードダウンしたりという部分もあるが、これでセダンの35.0万円高の640.0万円なら、お値打ち品と言える。
軟弱になってしまったと先代、先々代の質実剛健さを懐かしむ人はいるだろうが、それでも新型の洗練度は否定しようがない。メルセデス・シンパならずとも一度乗ってみればクラクラッとするのではないだろうか。
(文=CG高平高輝/写真=峰 昌宏、清水 健太)

高平 高輝
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