日産フェアレディZロードスター バージョンT(6MT)【ブリーフテスト】
日産フェアレディZロードスター バージョンT(6MT) 2003.12.18 試乗記 ……407.7万円 総合評価……★★★★ 北米をメインマーケットに据えた「Zカー」ことフェアレディZ。本命は、1年遅れで登場したオープンモデル!? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが乗った。![]() |
正しいスポーツカー
アメリカのご婦人いうところの「ゴウジャス!」な2座オープン。華やかで、存在感のあるクルマだ。
幌の開閉は、トップ前端のロックを外せば、あとはボタンを押すだけ。約20秒で、「Kiss The Sky!」。路面が荒れている場所や段差を越えるときなどにオープンボディを感じさせることがないわけではないが、あくまでZクーペ比。絶対的なボディ剛性は望外に高い。
初期型クーペよりスムーズになった乗り心地。3.5リッターV6エンジンは、トルキーだけど軽々とは回らない。加えて、ストロークの大きなスティックシフトが大味感を増幅するが、まァ、ご愛嬌。攻めてタノシイ、流してウレシイ、価格もリーズナブル。存在の正しいスポーツカー。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
“日産復活の象徴として”、2002年7月30日に登場した5世代目ズィーカー。エンジンは3.5リッターV6、トランスミッションは5ATまたは6MTが組み合わされる。
クーペモデルには、ベーシックな「フェアレディZ」、本革内装が奢られた「バージョンT」、ブレンボ製ブレーキを得たスポーティな「バージョンS」、ハイエンド「バージョンST」がラインナップされる。
2003年10月1日に追加が発表されたロードスターは、電動ソフトトップをもつモデル。ベーシック版と、ラクシャリーな「バージョンT」がある。
(グレード概要)
バージョンTは、ロードスターのレザーインテリア仕様。オーディオも、BOSEサウンドシステム(インダッシュ6CD、カセット、ラジオ、7スピーカーなど)にアップグレードされる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
モダンで魅力的なエクステリアと比較すると、いまひとつ説得力に欠けるインテリアデザイン。センターコンソール上部の3連メーター(電圧+油圧+情報)、メーターナセルの3連メーター(ガス/水温+回転+速度)それに3連の空調ダイヤル。楕円のエアコン吹き出し口の反復。黒とシルバーでまとめたクールな色使い。随所にデザイナーの意図は感じられるのだが……。
ソフトトップのオープンスイッチはインストゥルメントパネル右端にある。
(前席)……★★★★
ブラックレザーにブラウンのステッチ、ドットをあしらったほどほどに洒落たシート。体に触れる部分以外は、ビニール、ファブリックが使われているが、かえって惜しげなくていい。ドライバーズシートにのみ、座面の角度を調整するダイヤルが備わる。平板な見かけのわりに座り心地はよく、かつ上体をホールドしてくれるのはさすが。
特許の関係か、シートクッション脇に縦に並んだ「スライド」「リクライニング」のパワースイッチは、直感的に使えない欠点がある。いかにオーナーになれば慣れるとはいえ。32度まで目盛りがふられたヒーターに加え、すぐに温かくなるシートヒーターはありがたい。
Zを“日常のスポーツカー”と見た場合、欠点は、モノ入れが少なく使いにくいこと。ドアポケットは小さく浅く、シート脇の小物差しは座面の角度調整ダイヤルに遮られ、トンネルコンソールのカップホルダー、小物入れは、後ろすぎて、頻繁に使うには不便だ。助手席後ろに、薄い書類カバン程度は入れられる、奥行き25-40cmの小物入れあり。
(荷室)……★★
ソフトトップの収納部とは、まったく独立したトランクルーム。幅75-132cm、奥行き70cm、高さ25-35cm。2本のダンパーでリッドを支え、すこしでもラゲッジスペースを確保しようとしているが、ふたりの小旅行にギリギリといったところか。
リッドの裏にゴルフバックの搭載方法のシールあり。向かって左からバックを入れるように、とのこと。なお「ゴルフバックの種類によっては入らない場合もあります」。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2000rpmも回していれば、モリモリ力持ちな3.5リッターV6。ただし、テスト車のエンジンは、あまり「回りたがらない」ように感じた。タコメーターの右半分、つまり4000rpmから上になると、にわかに針が重くなる。
もっとも、そこをおして、ゴンゴンいわせながらブン回して走るのは、それなりに男らしくてイイもんですが。
6MTは、セカンドギアが100km/hまでしかカバーしない、細かく刻まれたもの。ギア比はスポーティだが、シフトの物理的なゲートが、特に「3-4」と「5-6」の間が開いていて、前後のトラベルも長く、大味なイメージをドライバーに与えてしまう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「フラットライド」の宣伝文句ほどではないけれど、スカイラインより短いホイールベースながら、それなりにフラットに走る。街なか、高速道路とも、乗り心地はいい。
山道もエクサイティング。「カッコいいオープンカーに乗っているオレ」「風になぶられる髪」といった心情&雰囲気ファクターのみならず、真剣に走らせても応えてくれる。一方で、“速度”を求めなくても、Zロードスターは運転しているのが楽しい。
テスト車は、ディーラーオプションの「レイズ製18インチアルミホイール(29.0万円)」を履いていたが、ことによると、オリジナルの17インチの方が、“穏やかなスポーティ”を楽しめるかもしれない。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2003年12月4日-5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:7918km
タイヤ:(前)225/45R18 91W(後)245/45R18 96W(いずれもブリヂストンPOTENZA RE040)
オプション装備:TV/DVDナビゲーションシステム(24.2万円)+前席サイドエアバッグ(3.5万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:387.5km
使用燃料:62.4リッター
参考燃費:6.2km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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