日産フェアレディZロードスター バージョンST(FR/7AT)【試乗速報】
さよならヤンキー 2009.11.11 試乗記 日産フェアレディZロードスター バージョンST(FR/7AT)……577万7650円
新型「Z」のデビューから10カ月、新たに追加されたオープンバージョンの乗り心地と走りやいかに? 最上級の「バージョンST」で試した。
名が体を表す
10月にデビューした「日産フェアレディZロードスター」と公道上で初対面、浮かんだ言葉は「見返り美人」と「バックシャン」だ。それくらい、後ろ姿がステキ。まずは幌をかけた状態で眺めたけれど、佇まいが上品だ。個人的には、屋根開きのクルマはソフトトップに限ると思う。リトラクタブルのハードトップはどうも趣に欠ける。
クーペ版「フェアレディZ」のお尻がツルンとしていて固そうだったのに対して、ふくよかなロードスターのお尻はやわらかそう。ちょっと触ってみたくなる。電車の中でそういうことをすると一生を棒に振るけれど、クルマのお尻は撫でても平気だ。実際に触ってみると、ボリューム感のある曲面にワックスをかけたくなった。個人的に、「後ろ姿・オブ・ザ・イヤー」を進呈したい。そんなのもらっても嬉しくないでしょうが。
今の時代、やわらかくてやさしい造形を“女性的”と表現するのはちょっと遅れた感じがする。けれど、このクルマの外観を女性的と表現するのは許されるのではないか。なぜって、名前が「フェアレディ」だから。新型「フェアレディZロードスター」は、名が体を表している。
乗り込んで、早速屋根を開けてみる。センターコンソールのスイッチ操作で約20秒、フルオートマチックで幌が開く。手動でロックする必要がなくなったから、思いついた時に気軽に幌が開けられる。インテリジェントキーを持っていれば、外からでも幌の開閉は可能だ。「START STOP」ボタンを押してエンジンスタート、走らせるにつれ、このクルマが外観だけでなくトータルでやわらかな機械であると思えてきた。
「なにも引かない」乗り味
まず、デビュー直後に試乗したクーペよりも乗り心地がしっとりしている。試乗したのは最上級版「バージョンST」の7段AT仕様。オプションの19インチホイールに前245/40R19、後275/35R19というポテンザRE050(ちなみに標準は前225/50R18、後245/45R18)を履いていて、試乗前はキツい乗り心地を覚悟した。実際、乗り心地はかたいのだけれど、スポーツカーとしては好ましいしっかり感だ。
クーペ版も乗り心地はよかったけれど、路面から伝わるザラザラした雑味がなくなった感じ。同グレード同士で比べるとロードスターはクーペより50〜60kgほど重くなっていて、その影響かもしれない。あるいはロードスターとクーペの違いではなく、生産開始から9カ月の間に多少の変更を受けている可能性がある。どちらにせよ、洗練された乗り心地が好ましいものであることは間違いない。
ロードスターの開発はクーペと並行して行われ、そのテーマは「クーペと同じ走行性能」だったそうだ。確かに、高速道路からちょっとしたワインディングロードまで、屋根が開いていることによるデメリットは感じられない。ボディがねじれる感じもなければ、ガタピシという低級音も聞こえない。短いホイールベースとワイドなトレッドから生まれる「クルックルッ」という軽快な身のこなしに、純粋にオープンエアの楽しさだけが加わった。まさに「なにも引かない」乗り味だ。
屋根を開けて高速道路を疾走しても快適な理由は、乗り心地のほか、必要以上に風を巻き込まない点にも見つけられる。シートの背後にあるちっぽけなウインドディフレクターが想像以上に機能しているようで、ちょうどいいあんばいで風を取り込んでくれる。空調システム内蔵のエアコンディショニングシートが頭寒足熱の環境を提供してくれるのも嬉しい。
7ATが弱点をかくす
デビュー直後は、自動的に回転を合わせてくれる「シンクロレブコントロール」が備わる6段MTにばかり注目してしまったけれど、トルコン式の7段ATも相当にいい。ドライバーの目線で見ると、バットマンのマークのように見えるパドルシフトは左がダウンで右がアップ。同業他車に比べるとパドルはかなり大きめで、見た目としてはカッコ悪いけれど、確実に操作できるのは確かだ。
変速は、スポーツカーとして十分に満足できるくらい素早いし、プレミアムカーとして納得できるくらいスムーズだ。ただし、5速→3速など、パドルを「パンパン」と2度引いて“1段飛ばし”のシフトダウンをするのはやや苦手の模様。一瞬つんのめるような動作を見せた後で、やや大きめのシフトショックを伝える。ま、MTを扱う時のように1段ずつシフトダウンすれば問題はない。
6MT仕様はシンクロレブコントロールのおかげもあって変速は素早かったけれど、シフトフィール自体はそれほど繊細ではなかった。ややゴリゴリした感触がある。7AT仕様で嬉しいのは、この弱点を感じないですむことだ。
それから、V6エンジンのパワーやレスポンスには文句なしだけれど、高回転域の目の粗いフィーリングが欧州のライバルに比べた時のウィークポイントだった。不思議なもので、MTだとギンギンにエンジンを回したくなるのにATだとそこまで引っ張る気にならない。4000rpmくらいの一番美味しいところを多用する運転スタイルになるから、結果としてエンジンのアラも目立たなくなった。シフトとエンジンの粗っぽさが目立たなくなったことも、7AT仕様の「フェアレディZロードスター」がやわらかい機械だと思えた理由だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
これがZのイチオシ仕様
試乗した日は暑くもなく寒くもない日で、秋の青空が広がっている。オープンカーは本当に気持ちがよくて、乗り心地やエンジンのフィーリングに好印象を持ったのも“オープンの魔術”かもしれない。だれが言ったか知らないけれど、“オープンは七難隠す”とは、けだし名言だ。
ソリッドで硬派なクーペと、やさしくて軟派なロードスター、フェアレディZのふたつのバリエーションは、うまくすみ分けが図られている。個人的には、この7AT仕様のロードスターがフェアレディZのイチオシ仕様だ。
屋根を閉めると、幌の内張にきっちり加工が施され、骨組みが見えなくなっていることに気付く。細かいところまで配慮が行き届いていて、楠みちはるさんの漫画『シャコタン★ブギ』でアキラが乗っていたS30型のZ(Yanky Mate!のステッカー付き)とは大違い。
先代Z(Z33)によって、かつてこのクルマが持っていた “族車”や“ヤン車”といったイメージはかなり薄められた。そしてこの上品な新型「フェアレディZロードスター」の登場で、そういった土着カルチャーとの関係は完全に消えた。正直、ちょっと寂しい気もしますが。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。































