日産フェアレディZ バージョンST/フェアレディZロードスター バージョンST【試乗記】
4年モノの味わい 2012.09.05 試乗記 日産フェアレディZ バージョンST(FR/6MT)/フェアレディZロードスター バージョンST(FR/7AT)……490万1400円/568万8900円
日産のFRスポーツ「フェアレディZ」がマイナーチェンジを受け、よりスポーティーな装いになった。クーペのMTとロードスターのATを駆ってその走りを試した。
待望のマイナーチェンジ(?)
クーペのデビューからもうすぐ4年というタイミングで、「フェアレディZ」のクーペ、そしてロードスターのマイナーチェンジが行われた。
クーペ登場翌年のロードスターの発表に合わせて、ナビゲーションシステムの改良やボディーカラーの追加などの小変更が加えられて以来だから、スポットライトを浴びるのは随分久しぶりである。
思えば先代「Z33型」は、ほぼ毎年のようにアップデートを繰り返すことで常に進化し続けたスポーツカーだった。これはモデルライフの後半、ほぼ放置に近い状況になってしまった先々代「Z32型」に対する反省を込めてのことだったという。
毎年のように新しくなるということは、ユーザーにとっては自分のクルマが毎年のように旧型になっていくことでもある。しかし、それがZ33型のオーナーをガッカリさせたかといえば答えは否。むしろ逆である。一度世に出したらあとはほったらかしというのではなく、メーカーがずっとそのクルマを気にかけてくれる。それはユーザーにとってはうれしい話だったのだ。
仮に自分のクルマが前の世代になったとしても、自分がその歴史の一部になることは誇りとなる。そんなメーカーとユーザーの良い関係が、Z33ではできていたといっていいはずだ。
それだけにZのファンからしてみれば、今回のマイナーチェンジは待望のものだったに違いない。では、気になるその変更点は?
数字じゃなく感覚が大切
すぐに新型と判別できるのがフロントマスクだ。LEDハイパーデイライトと呼ばれる、縦型にLEDを並べたデイタイムライトが採用され、開口部の造形はシンプルに。全体に従来のZ33型にも近い雰囲気に仕立て直されている。ライトの配置のおかげでワイド感が増しているし、何より新しいクルマに見えるのが良い。レイズ製19インチホイールも、やはりデザインが刷新された。
全8色が用意されるボディーカラーは、そのうち2色が新色に。そして細かなところだが、ブレーキキャリパーが赤色に塗装された。インテリアも、メーターパネル内の車両情報ディスプレイのベース部分が、従来のシルバーからダークメタリックグレーに変更されている。隣にある回転計、そして速度計のダイヤルがブラックだから、この方がコントラストが落ち着いて視認性は良さそうだ。
メカニズムの面では、新たにユーロチューンドサスペンションが採用された。新開発の摩擦材を使ったブレーキパッドとともに、バージョンST/バージョンSに装着されている。
変更されたのはダンパーのみで、北米仕様との対比だと伸び側減衰力がフロントが15%、リアが50%ほど上げられているという。それだけ? と思うのだが、実際に走らせれば違いは明白で、市街地でも高速道路でも姿勢のフラット感が高まっているのを実感できる。しかも、締め上げているにもかかわらず乗り心地までよく感じられるのだから面白い。このあたりはスペック先行ではなく、実際の走り込みを通じて職人技でセットアップしていったからこそ得られた味わいといえるだろう。
少しの安心と新たな期待
クーペとロードスターを比較すると、当然ながらクーペの方がパリッとした印象。反面、路面の継ぎ目を越えた時などの入力はやや大きめだが、そもそも剛性感が高い「Z」のボディーだけに、不快とまでは至らない。
ロードスターは全体にしなやかさが増す印象で、ショックのカドも丸い。どちらもうまくまとめられているから、あとは好みの問題といえそうだ。
もう一点、Z34のウイークポイントのひとつであったエンジン、あるいは下回りから室内へ入る騒音のレベルも若干下がった印象である。聞くと、特に発表はしていないが、フロアトンネル付近から車体後部にかけて遮音材、そしてホイールハウスインナー、ラゲッジマット裏などには吸音材が追加されたという。
率直に言えば、まだ物足りない。あるいは音量ではなく音質の問題という気もするが、ともあれ快適性のレベルが確実に上がったのは確かだ。今回は確認できなかったが、雨天時や砂利道を走る時などのホイールハウス内側から響く安っぽい打音が消えているとすれば、車格感は随分高まっているに違いない。
改良点はこれだけである。しかし誰もが想像できる通り、現在フェアレディZを取り巻く状況は芳しいものではない。そんな事情も分かってはいたが、それでも、「GT-R」が毎年進化しているのを見るにつけ、日産はもはやZを見捨ててしまったのかな……と思い始めていたところだっただけに、まずは手を入れてくれただけで、そして確かな熟成ぶりを感じられただけで今回は良しとするべきなのだろう。
熱いファンが居るクルマである。新興国のメーカーに日本のメーカーが誇れるのは、そういう文化を持っていることだ。この美しい名をもつスポーツカーを支えていくことは、日産にとって今後、販売台数以上の大きな恩恵となっていくと信じたい。そう遠くない将来、また少しでも進化したZに会えることを楽しみにしている。気の早い話だが、今回リファインされたZに触れ、少しの安心とともに新たな期待が湧き上がってきたのである。
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(文=島下泰久/写真=高橋信宏)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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