フォルクスワーゲン・ゴルフワゴンGT プレミアムパッケージ(5AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフワゴンGT プレミアムパッケージ(5AT) 2003.12.13 試乗記 ……333.0万円 総合評価……★★★★ “働き者”のゴルフワゴンに、ターボモデルが加わった。GTIで使われる1.8リッターターボを積んだ「ゴルフワゴンGT」がそれ。自動車ジャーナリスト、生方聡による報告。 |
余裕あるワゴン
2003年9月、輸入コンパクトワゴンの人気モデル「ゴルフワゴン」に、待望のハイパワーバージョン「ゴルフワゴンGT」が追加された。これまでのゴルフワゴンには、1.6リッターエンジン搭載の「E」と、2リッターを積む「GLi」があり、最高出力102ps、116psというエンジンは、カタログスペックから想像される以上に活発な印象だった。今回追加されたゴルフワゴンGTには、「ゴルフGTI」でおなじみの1.8リッターターボエンジンが搭載され、ゴルフワゴンE/GLiに輪をかけた力強さが自慢である。
以前、私は「ゴルフワゴンGLi」を所有していたが、当時の2リッターエンジンは、必要十分なトルクはあるものの、エンジンのノイズやスムーズさの点で多少不満があった。しかし、現在の2リッターエンジンはバランサーシャフトを得て、これらの不満を解消。高い完成度を誇る。たしかに、ゴルフワゴンGTの1.8リッターターボには余裕があるが、個人的には2リッターNAのGLiで十分、というのが正直な意見である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヨーロッパでは「ゴルフヴァリアント」の名で親しまれているゴルフワゴン。3代目ゴルフの時代に追加されて以来、日本でもハッチバックに匹敵するほどの人気を博している。現行モデルは、ゴルフIVがベースのワゴン第2世代で、日本では2000年2月から販売が開始された。
わが国におけるラインナップは、1.6リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載する「ゴルフワゴンE」と、2リッターの「ゴルフワゴンGLi」の2グレード。2003年10月3日に、「ゴルフGTI」のパワートレインを積むハイパフォーマンス版「ゴルフワゴンGT」の販売が開始された。(発表は9月29日)
(グレード概要)
ゴルフワゴンのトップグレード「GT」の特徴は、1.8リッター直4DOHC20バルブターボエンジンと、5段ティプトロニックのパワートレイン。150psの最高出力に加え、21.4kgmの最大トルクを、1750rpmの低回転から4600rpmまで発生する。足まわりは、専用チューンのスポーティサスペンションや、205/55R16サイズのタイヤ+アルミホイールが奢られる。インテリアには、本革巻きステアリングホイール、シフトノブ、ハンドブレーキレバーを採用し、スポーティに演出した。
テスト車に装着された、オプションの「プレミアムパッケージ」(23.0万円)は、フルレザー仕様のパッケージオプション。HIDヘッドランプやヒーター付きレザーシート(前席)、フルオートエアコンなどのセットだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
右に大型アナログの速度計、左に回転計というシンプルなメーターパネルは、他のゴルフと同じデザイン。見やすく飽きがこないのがいかにもフォルクスワーゲンらしい。ドイツ本国では新型「ゴルフV」が発売されたが、先代ゴルフIVをペースにしたワゴンGTでも、ダッシュボードのつくりや質感はいまだにライバルをリードしている。
試乗車はオプションの「プレミアムパッケージ」(23.0万円)を装着しているので、レザーシートに加えて、フルオートエアコンやHIDヘッドランプ、オーディオを手元でコントロールできる「マルチファンクションステアリング」が奢られる。
(前席)……★★★★
プレミアムパッケージによりレザー仕様となるフロントシート。調節こそ手動だが、前後スライドやダイヤル式のリクラインはもちろん、シートの上下調整やステアリングホイールのチルト&テレスコピック調整機能により、好みのシートポジションを採れるのがうれしい。おかげで快適なドライブが楽しめる。ランバーサポートやシートヒーターも装着される。
(後席)……★★★
ハッチバックモデル同様、ヘッドルーム、レッグルームともに大人でも十分なスペースが確保されるリアシート。シートバックはリクライニングができないタイプで、個人的にはもうすこし角度が起きている方がいいと思った。フルレザーのシートは、左右の席が3点式シートベルトとヘッドレストを採用するのに対し、中央席は2点式シートベルトで、ヘッドレストがないのが残念。なお、左右の席には、ISOFIX対応チャイルドシート固定装置が標準で装着される。
(荷室)……★★★★
リアシートを起こした状態で1m、リアシートを畳めば1.6mの奥行きとなるフルフラットなラゲッジスペース。全長4.4mのコンパクトワゴンとして常識的なサイズといえる。リアシートの収納は、まずシートクッションを起こし、そのあとシートバックを倒すダブルフォールディング式だ。ワンタッチで操作できない反面、起こしたシートクッションが、ラゲッジスペースから前席に荷物が入り込むのを防ぐ役割を果たすため、個人的にはこのタイプのほうが好ましいと思う。リアシート収納時に、ヘッドレストを取り外さなければならないのは面倒だが。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.8リッター直列4気筒DOHC5バルブターボと、ティプトロニック付5段オートマチックのパワートレインは、現行ゴルフGTI(5AT)と同じ組み合わせ。ターボラグが小さく、低中速域で豊かなトルクを発生するエンジンとスムーズなオートマチックは、街なかからハイウェイまで、実に使い勝手がよい。一方、高回転域では5500rpmあたりから伸び悩む印象で、スポーティというよりは実用重視のエンジンである。2リッター自然吸気エンジンに、パワー不足を抱くユーザーにはうれしい選択肢だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
205/55ZR16タイヤと、6.5J×16のアルミホイールが標準装着されるゴルフワゴンGT。ホイールのインチアップとエンジンのハイパワー化にあわせて、2リッター自然吸気モデルに比べて多少強化された足まわりを採用するが、乗り心地への悪影響は最小限に抑えられている。ただ、2リッターモデル同様、“あたり”は硬めなのに、高速などではややダンピングが不足気味で、もうすこしフラットさがほしいところだ。高速でのスタビリティは文句のないレベルで、横風に対する安定性も、ゴルフのハッチバックよりむしろ優れている印象である。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2885km
タイヤ:(前) 205/55ZR16 91W(後)同じ(いずれもミシュラン Pilot HX)
オプション装備:プレミアムパッケージ(クルーズコントロール+フルオート エアコン+レザースポーツシート(シートヒータ付)+ガスディスチャージヘッドランプ+オートマチックヘッドランプ+マルチファンクションステアリングホイール+ヘッドランプウォッシャー+エアバック付革巻き4本スポーク/23.0万円)/チルト機構付電動ガラススライディングルーフ(11.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:137.5km
使用燃料:14リッター
参考燃費:9.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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