プジョー206RC(5MT)【ブリーフテスト】
プジョー206RC(5MT) 2003.11.18 試乗記 ……294.0万円 総合評価……★★★★ プジョーの売れ筋モデル「206」に、最強モデルとなる「RC」が追加された。177psの2リッターユニットを搭載するホッテストハッチに、自動車ジャーナリスト、森口将之が試乗した。206らしくない
「106S16」「206S16」「ルーテシアRS(ルノースポール)」……。プジョー206RCに試乗している間、いろいろなフレンチホットハッチが頭の中を駆け巡った。そのうちの1台が愛車ということもあって、プジョーが最強モデルとして送り出した「206RC」のパフォーマンスがどのあたりにあるのか、個人的にも興味があった。ライバルを頭の中に総動員して評価していた。
日本では206S16の代わりとして登場した206RCだが、その性格はS16の延長線上にはない。エンジンは、同じS16でも106のそれを、2リッターに拡大したような感じ。つまりスポーツマインドがはっきりアップした。しかしハンドリングは、他の206とも106とも似ていない。あえていえば、切れ味鋭い206と安定志向のルーテシアの中間といった感じ。
最初はプジョーらしさが薄れたように思えた。しかし、サーキット走行を含む、栃木県那須で行われた最初の試乗会から1週間後、走り慣れた箱根で再会した206RCは、違う印象を与えてくれた。今までの206は、前輪に比べて後輪のグリップが心もとないという気がしたが、RCは後輪のパフォーマンスが上がって、前後のバランスがとれたように思えた。
その秘密が、リアサスペンションに追加された、横剛性をアップさせるためのダイアゴナルタイビームにあることは間違いない。たかが棒1本で、ここまで変わるとは。ホットハッチの真打ちらしい楽しさを堪能しつつ、メカニズムの奥深さを痛感した1日でもあった。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プジョーの車名の3桁数字が、百の位が車格、ゼロをはさんで一の位が世代を示すのは、知っている人も多いだろう。つまり206は、日本でもヒットした205の後継車となる。
デビューは1998年。2ボックスの3ドアと5ドアというパッケージングは205と同じだが、プジョーが長年パートナーとしてきたピニンファリーナデザインではなく、社内デザインスタジオによる躍動感あるフォルムをまとったことが特徴。
バリエーションとして、ハッチバックのほか、電動開閉式メタルルーフを持つ「CC」、スポーツワゴンの「SW」が追加された。
(グレード概要)
フランスではS16のさらに上をいくスポーツグレードとして設定されているRCだが、日本ではS16に代わるモデルとしてラインナップされる。デビューの理由のひとつが、ライバルのルノー・ルーテシアに設定された高性能モデル、RSにあることは間違いない。
「RC」の語源について、プジョーではあきらかにしていないが、2000年から3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンになっている「WRC」からとられたという見かたが自然だろう。
エンジンは、排気量はこれまでのスポーツグレードS16と同じ2リッターだが、専用チューニングを施すことで最高出力を137psから177psにアップ。5段MTのみとなるギアボックスも専用のギア比を持つ。サスペンションはもちろん固められ、リアはSWと同じ横剛性をアップさせるダイアゴナルビーム付きとなった。
ボディは3ドアのみ。ハンドル位置は、99年に限定販売された「GT」を除けば、正規輸入の206で初めての左となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
インパネはメーターフードがレザーでカバーされ、センターパネルはカーボン調になるなどの変更があるが、全体的に派手さを抑えた大人っぽい雰囲気。アルミ製シフトレバーやペダルはS16にも付いていたが、レバーの長さやペダルの形状は異なる。
(前席)……★★★★
レザー/アルカンタラ/ファブリックのコンビとなるRC専用バケットシートがおごられる。座り心地は他の206よりはっきり固めだが、そのかわり、肩のあたりまですっぽりホールドしてくれる。左ハンドルのドライビングポジションは、ペダル配置に癖がある右ハンドルと比べるとやっぱり自然だ。
(後席)……★★★
RCはリアシートも専用。3人がけではなく2人がけで、座る部分が落とし込まれているため、サポート感は他の206よりも高い。ヘッドスペースは変わらず。ひざの前の空間は、前席が大きくなったことで少し狭くなったが、大人が余裕で座れる点は同じだ。
(荷室)……★★★★
スペアタイヤが積まれないために、左脇にパンク修理材が搭載されることを除けば、他の206と同じ。トーションバースプリングとスラント配置されたダンパーのおかげで、サスペンションの出っ張りがないのはあいかわらずの魅力だ。後席が2:1の分割可倒式になっているのは、他のグレードと変わらない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
S16のエンジンは、「307」や「406」に積まれているものと、基本的に同型。軽い206との組み合わせで強力な加速を生み出していたが、パワーの盛り上がり感やレスポンス、サウンドなどが実用車的だった。
それに比べると、RCはリアルスポーツユニット。2000rpmも回せば、S16より強烈な加速が手に入り、回すほどに勢いを増していく。とくに5000rpmあたりで吹け上がりが一段鋭くなってからの「最後の2400rpm」は快感。しかもレスポンスは動物的に鋭く、澄んだサウンドは文句なく心地よい。感覚的には、106 S16のユニットに2リッタークラスの力強さを加えた感じだ。
5段MTはローギアが高くなったために、発進のときにエンストしそうになるが、代わりにセカンド以降のつながりがよくなって、心地よい加速を連続して楽しめる。シフトレバーは、作動がロッドからケーブルに変わり、しっとりした感触を手に入れたとともに、レバーの長さが詰められたおかげでストロークは短くなった。ペダル形状もS16よりヒール&トゥがしやすくなるなど、いろいろな部分が煮詰められている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地はかなりハード。薄いバケットシートや205/40ZR17という扁平タイヤも関係しているのだろう。しかし、ボディ剛性がしっかりしているのと、強力なダンパーが揺れを一発で抑えてしまうので、不快感を覚えるほどではない。
ハンドリングは、他の206ハッチバックとはちょっと違う。切った瞬間にスパッとノーズがインに切れ込むのではなく、外側が沈み込んだあと車体全体が曲がり始めるという、206以外のクルマに近いフィーリングだ。前輪の接地感の高さはあいかわらず優秀だが、コーナー中にアクセルを閉じた時の後輪のすべりは、控えめになっている。
RCはSWと同じように、リアサスペンションの横剛性を高めるビームが追加されたのだが、これが効果を発揮している。もともとハイレベルだった前輪のポテンシャルに、後輪が追いついた感じだ。
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2003年10月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:−
タイヤ:(前)205/40ZR17(後)同じ(いずれもピレリP7000)
オプション装備:無し
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):山岳路(6)
テスト距離:−
使用燃料:−
参考燃費:−

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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