【スペック】ライフFタイプ(FF):全長×全幅×全高=3395×1475×1575mm/ホイールベース=2420mm/車重860kg/0.66リッター直3SOHC6バルブ(52ps/6700rpm、6.2kgm/3800rpm)/車両本体価格=105.0万円

ホンダ・ライフFタイプ(FF/4AT)&ライフターボDタイプ(FF/4AT)【試乗記】

ライバルはフィット? 2003.10.09 試乗記 大澤 俊博 ホンダ・ライフFタイプ(FF/4AT)&ライフターボDタイプ(FF/4AT) ……105.0万円/128.0万円 5年ぶりにフルモデルチェンジした、ホンダの軽自動車「ライフ」。プラットフォームをはじめ、15年ぶりにパワートレインを一新した新型は、デザインと安全性をウリに登場した。お台場で開かれたプレス向け試乗会で、『webCG』記者が乗った。


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Fタイプに装備される「助手席チップアップスライド機構」。後ろへスライドさせれば、サイドウォークスルーできる。

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デザインと安全性

2003年9月4日、ホンダの軽自動車「ライフ」が5年ぶりのフルモデルチェンジを受け、3代目となった。新型は、プラットフォームを一新。パワートレインは15年ぶり(!)に新開発され、伝統の(?)3段ATが4段ATに改められた。もちろん、サスペンションも新しいニュー・ライフは、「ホンダの最新技術を導入してつくった軽スモール」が謳われる。注力したのは、ハイトワゴンに決別したデザインと、衝突安全性を高めつつ、相手へのダメージを軽減する「コンパチビリティ対応ボディ」である。

軽自動車市場は、スズキ・ワゴンRが先鞭をつけたハイトワゴンの人気が高い。メジャーモデルはいずれもスペース効率のよい箱形フォルムを採り、広い室内やスペースユーティリティの高さを売りにする。先代のライフ、昨2002年にデビューしたダイハツ・ムーヴ、03年9月30日に発表された新型ワゴンRもボクシーだ。
しかし、新型ライフは箱形路線と距離をおき、ユーザーの約8割を占める女性にフォーカスしたデザインで、他社との差別化を図った。ボリューム感あるボンネットまわりに先代の面影が見られるものの、全体のフォルムは曲線が利いた優しいルックスである。

ボディサイズは、全長×全幅×全高=3395×1475×1575mm(Fタイプ、FF)と、全高が旧型より30mm低い。しかし、フロアを低くすることにより、室内高はむしろ30mm拡大された。
ホイールベースは60mm長い2420mm。新開発のエンジンは全長が60mm短い(NA、ターボは130mm)ことに加え、前に傾けていたエンジンを直立させてマウントし、機関部を短縮、居住スペースを広く取った。室内長は、95mm長い。



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フロントフェンダーが張り出した「タイヤはみ出しフォルム」は、ロアメンバーの形状を見せることで、見える安心感をつくりだしたという。

フロントフェンダーが張り出した「タイヤはみ出しフォルム」は、ロアメンバーの形状を見せることで、見える安心感をつくりだしたという。 拡大

細かい気配り

軽自動車の開発において、「デザインや室内の広さ、装備品の充実といった要素を押さえるのは当然」(開発スタッフ)。新型ライフはこれらに加え、安全性でさらなる差別化を図った。
ホンダ「インスパイア」とのオフセット衝突(50km/h、50%オフセット)にトライした新型ライフ。フロントにメンバーを配してエンジンルームを鳥かごのような構造とし、衝突時のエネルギーを効果的に吸収(=つぶれる)。キャビンを守りながら相手車両のダメージをも軽減するという。衝撃吸収ボンネットなどにより、対歩行者安全にも配慮した。

新型ライフのラインナップは、ベーシックな「Cタイプ」、「Fタイプ」、「Dタイプ」の3種類。Fタイプは、前後左右のウォークスルーを可能にした「助手席チップアップスライド機構」を備え、利便性を求める若いママさん向け。Dタイプは前席ベンチシートで、若い人のパーソナルユースを想定したという。それぞれにNAとターボ、FFと4WDを設定。価格は95.0万円から128.0万円までだ。

まず、FタイプのNAモデルに乗った。空間デザイナーやファッションデザイナーなど、異業種のクリエイターとつくりあげたボディ色「バニラクレム」がシャレている。明るいベージュ内装と合わせて、柔らかい雰囲気は女性が好みそうだ。
新機軸「助手席チップアップスライド機構」は、座面前端のチップアップ&スライドレバーで簡単にアレンジ可能。たとえば、運転席に座ったまま、後席に座る子供の世話ができる。ほかにも、アウタードアハンドル形状を、爪を傷つけない丸形にするなど、細かい気配りが施される。

新型ライフは、新開発のリアサスペンションにより、荷室地上高が40mm低められた。容量は200リッター(FF、VDA方式)。Fタイプのチップアップスライド機構を使うと、160cm以上の奥行きが得られる。(写真をクリックすると、シートアレンジが見られます)

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【スペック】
ライフ・ターボDタイプ(FF):全長×全幅×全高=3395×1475×1575mm/ホイールベース=2420mm/車重860kg/0.66リッター直3SOHC6バルブターボ・インタークーラー付き(64ps/6000rpm、9.5kgm/4000rpm)/車両本体価格=128.0万円

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フィットを凌ぐ

乗ってみて、軽自動車を感じさせない重厚感に驚いた。しっとり落ち着いた乗り心地は、コンパクトカー「フィット」をはるかに凌ぐ、とさえ感じた。制御系を見直した電動パワステのしっかり感、ブレーキペダルのカチっとした踏み応えなど、“軽”を感じさせるショボさがない。
15年ぶりに一新されたパワートレインは、NA、ターボとも高出力と低燃費を両立した「i-DSI」。ユニットの全長を抑えて室内寸法拡大を可能にしたほか、フリクションを低減して静粛性を向上。4段ATは燃費に配慮し、2速以上は12km/hからロックアップを行うという。といった機構はさておき、52psと6.2kgmのアウトプットは“軽自動車並”だから、“普通車並”に走ろうとすると、ついついアクセルペダルを踏み込んでしまうが、ノイズはそれほど気にならなかった。

Dタイプのターボに乗り換えると、パワーに余裕があるぶん高級な(!?)印象が増す。2000rpmあたりからターボがかかるので中低速トルクに厚みがあり、交通の流れに乗るのもラクチンだ。i-DSIはターボとのマッチングがよく、量産ターボで初の「超−低排出ガス」をパスした環境性能を有する。

短い試乗だったが、新しいライフに「軽自動車らしい欠点」は、とりあえずみあたらなかった。車両価格だけみれば、軽自動車とコンパクトカーの差が縮まっている。フィットのベーシックモデル「Yタイプ」は、ライフのCタイプターボと同価格なのだ。ホンダの方をはじめ、様々なメーカーの方から「軽自動車と普通車を較べるお客様は少ない」というお話をうかがったが、新型ライフとフィットがお客の取り合いになっても、おかしくないと思う。

(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2003年10月)

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