トヨタRAV4 L ワイドスポーツ5ドア(4WD/4AT)【フリーフテスト】
トヨタRAV4 L ワイドスポーツ5ドア(4WD/4AT) 2003.09.19 試乗記 ……290.1万円 総合評価……★★ 北米市場に軸足を置いたモデルチェンジを果たした2代目RAV4。大きくなったボディを、オバフェン、60タイヤ、ルーフレールでスポーティに装った「ワイドスポーツ」に、ジャーナリストの河村康彦が乗った。
|
全車☆☆☆
「カローラレビン」や「スプリンタートレノ」などの“若者向けクーペ”に見向きもしなくなったヤングユーザーを何とか取り込もうと、トヨタが旺盛な開拓心をもって世に送り出したのが、初代「RAV4」。1994年にデビューした小型SUVは、“キムタク”による宣伝効果と比較的リーズナブルな価格、そして当時の「RVブーム」などが相まって、期待以上の販売成績を記録した。
そんな日本市場をターゲットにした先代と比較して、現行2代目は欧米マーケットを見据えた“国際派”に変身。初代モデルのイメージは残しているものの、ボディサイズは大きく拡大された。
2003年8月に行われたマイナーチェンジでは、「スポーティ感および質感を高めた外観・内装に意匠変更するとともに、環境性能の向上と安全装備を充実させている」(プレスリリース)。マイチェン後のRAV4は、全車「超−低排出ガス車(☆☆☆)」となった。直噴エンジンを搭載する2リッター車は、さらに「平成22年燃費基準」を達成、グリーン税制による減税措置対象車に認定された。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1994年に生まれた小さな4駆トヨタ。カローラ店用の「RAV4 L」とネッツトヨタ店用「RAV4 J」の2種があり、3/5ドアボディはともに4WDのみでなく、FFモデルも用意される。
3ドアと主力の5ドアの性格は、意図的に分けられている。オリジナルのスピリットを受け継いだ前者は、主に都会用レジャーカーといった狙いになっている。それに対し、後者はユーティリティをかなり重視したワゴンである。従ってボディはかなり異なり、3ドアと5ドアでは、ホイールベースが210mmも異なる
今回のマイナーチェンジを機会に、3/5ドアともどもフロントグリルやバンパーがやや変わり、ヘッドランプやリアランプの形状に変更を受けたが、むしろエンジンの改変の方が大きい。FF用の1.8と4WD用2.0の4気筒エンジンが用意され、両エンジンとも「超-低排出ガス規制」を達成、直噴ガソリンの2リッター版は「平成22年燃費基準」を先行してパスしている。
さらにフロントのサイドエアバッグや前後のカーテンシールドエアバッグが装備され、モデルによってはVSCやTRCが標準、さらにディスチャージ・ヘッドランプも一部モデルに与えられるなど、安全性の向上が図られた。
(グレード概要)
RAV4には、3/5ドアとも3つのグレードが設定される。ベーシックな「X」、アルミホイール、オートエアコン、本革巻きステアリングホイール、クルーズコントロールなど、装備を奢った「X Gパッケージ」、そしてオーバーフェンダー、ルーフレール、235/60R16タイヤでスポーティに装う「ワイドスポーツ」である。ヘッドランプは、ディスチャージが標準となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
マイナーチェンジを受けたRAV4だが、実際にドライバーズシートに腰を降ろすと、どこが変化したのかわからない。資料をひもといてみると、「ステアリングホイールのマークのメッキ化」や「インパネ上面のソフトフィール加工」「センターパネルの加飾パネル意匠変更」などとのこと。従来型のオーナーでも気が付かないかも知れない。
これまでのモデルでは、「Gショック」のようなデザインのセンターパネルが売りものだったはずだが、マイチェンにともなって縦長化されたせいで、個性が薄れた印象を受けた。ダッシュボードまわり全体の品質感も、どことなく物足りない。同じ“プラスチッキー”なダッシュボードでも、四角いラジカセ(死語!?)をポンと置いたような初代モデルのユニークさが懐かしい……。
(前席)……★★
今度のRAV4のインテリアは、個人的な感想を述べると、ジジ臭い。「どこがどうして……」と考えていたら、それがダークグレーで統一された室内色に起因していることに気がついた。今回のテスト車は、インテリアカラーで随分損をしていたのだ。
……と思ってカタログを調べてみると、最新のRAV4には、何とこの暗いグレー以外にインテリアカラーがない! デビュー当初の2代目モデルには、ブルーやブラックも設定をされていたのに……。
RAV4というクルマにダークグレーのインテリア色のみ−−信じられない。ぼくだったら、もうそれだけで購入リスト落ちだ。このあたりこそ、日本車のツマラナイところだと思った。
(後席)……★★★
高い室内高のなかに比較的アップライトな姿勢で座ることになる。居住スペースは十分。高めのヒップポイントで見晴らしも良好。長時間の着座も苦にならない。
……が、こうして座ってみるとシートもドアトリムも、質感が物足りない。何となく長年使いこまれたタクシーの後席に居るように感じた。
(荷室)……★★★★
サイド開きのテールゲートは、初代から受け継いだ形式だ。5ドアモデルの場合、リアシート後方にもそれなりのスペースが残るし、簡単操作でリアシートのスライドと折り畳みが可能なので、使い勝手は極めて良好。リアシートバックを前倒ししたうえでクッションをタンブルさせれば、フロントシート後方すべてが平らで広大なラゲッジスペースになる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
全車「超−低排出ガス車(☆☆☆)」はサスガだが、ドライバビリティの方はいまひとつ。2リッター直噴エンジンは、低回転域でのトルク感が細めなうえ、組み合わされるATが4段であるため、各ギアの守備範囲が広くなりがち。1.4トンと、決して軽いとはいえない重量には、ちょっと物足りない。コンパクトなボディに2リッターエンジンを載せ、意外なほどに元気に走った初代RAV4の3ドアモデルが懐かしい……。
これでトランスミッションが、5段ATもしくはCVTに変われば、フィーリングはグンと好転しそう。「いまのままならマニュアルで乗った方が……」と個人的には思うが、いまではそれも叶わない。日本でのラインナップは、4ATのみとなる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
RAV4の走りは、少々安っぽい。路面の凹凸は意外に神経質に拾うし、エンジン透過音も想像したよりダイレクトにキャビンに侵入する。その一方で、ハンドリングは何ともおっとりしていて、ダイレクト感に欠ける。この点は、ホイールベースが210mmも短い3ドアモデルになれば、かなり変わってくると思うが……。
本来“豊かなキャラクター”が売り物であるはずのRAV4の走りが、何とも個性に欠けるものであったことは、残念。どこに大きな不満があるというわけではないが。「不満がないのをよしとする」をクルマ選びの選択条件にしたとしても、わざわざRAV4を選ぶまでもない、と思う。
(写真=清水健太)
|
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2003年8月26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:822km
タイヤ:(前)235/60 R16(後)同じ
オプション装備:VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)&TRC(トラクション・コントロール)(7.0万円)/SRSサイドエアバッグ(フロントシート)&SRSカーテンシールドエアバッグ(フロント・リヤシート)&盗難防止システム(エンジンイモビライザーシステム)(7.5万円)/オーディオDVDボイスナビゲーション付ワイドマルチAVステーションII(27.6万円)/チルト&スライド電動ムーンルーフ(9.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(3):山岳路(1)
テスト距離:266.3km
使用燃料:31.6リッター
参考燃費:8.4km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】 2025.11.25 インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
-
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。 -
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ロータス・エメヤR編
2025.12.3webCG Movies往年のピュアスポーツカーとはまるでイメージの異なる、新生ロータスの意欲作「エメヤR」。電動化時代のハイパフォーマンスモデルを、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんはどう見るのか、動画でリポートします。 -
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.3デイリーコラムトヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。








































