トヨタ・カローラ スパシオ 1.8 Sエアロツアラー(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・カローラ スパシオ 1.8 Sエアロツアラー(FF/4AT) 2003.08.27 試乗記 ……229.3万円 総合評価……★★ カローラベースの、3列シート7人乗り“ミニ”ミニバン「スパシオ」。マイナーチェンジで足まわりと内外装が変更された。自動車ジャーナリスト河村康彦の評価はいかに?
|
あー、あれか。
『webCG』から、「スパシオに乗っていただけませんか?」と依頼された。一瞬、その名前から姿カタチが思い浮かばなかった。次の瞬間、「無理矢理3列シートのカローラ」だ、と思い出した。
トヨタの系列会社である関東自動車工業の提案で、1997年にカローラをベースに誕生したのが初代スパシオ。その意志を受け継いで、再びコンパクトなボディに「2+3+2」のシートレイアウトを提案する。で、そのスパシオが「マイナーチェンジをやって、見た目やらなんやらがちょっと変わったんです」とのこと。そーだそーだ、スパシオがマイナーチェンジをやったという案内が、随分昔にウチにも送られてきていたおぼえがある。この種のマイナーチェンジ車の場合、フリーランスの人間には試乗会の案内が送られてこないのがトヨタのしきたり(?)。
というわけで、過去の記憶を脳裏から引っ張り出しつつ、ぼくは“新型スパシオ”と対面した。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「スパシオ」は、「カローラ」ベースのコンパクトミニバン。2人乗りの前席、3人がけの2列目シートに加え、2人が座れる格納式の3列目シートにより7人乗りを実現した。現行モデルは、2代目。2003年4月23日にマイナーチェンジが施された。1.5リッターと1.8リッターモデルの2種類があり、1.8リッターモデルはFF(前輪駆動)をメインに、4WD仕様も設定される。トランスミッションは、4段ATのみ。
マイナーチェンジの眼目は、外装の変更や環境性能の向上などで、エクステリアに、グリルとバンパーを一体化した新しいフロントマスクや、LEDのリアコンビネーションランプなどを採用。さらに、全車「超ー低排出ガス車」をパスするとともに、1.5リッターモデルは、平成22年燃費基準を達成し、グリーン税制の優遇措置を受けることができる。
(グレード概要)
スパシオは、ベーシックな「X」グレード、豪華装備の「X“Gパッケージ”」、スポーティな「Sエアロツアラー」の3グレード展開。「Sエアロツアラー」は1.8リッターエンジンのみを搭載。その名の通りエアロパーツを装着し、3本スポークのステアリングホイール、スポーツシート、15インチタイヤ&アルミホイールなどでスポーティに飾られる。イモビライザーも標準装備。車載情報端末「G-BOOK」対応DVDナビゲーションシステムと、見通しの悪い交差点などで左右を表示する「ブラインドコーナーモニター」はオプション設定。テスト車はFFだが、他に4WDもある。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
「グリルとバンパーを一体化してボディ同色の塗装を施し、スポーティ感を高めた」という外観。その“マイナーチェンジ効果”に気が付かなかったのと同様、予備知識なしにドライバーズシートに乗り込んだぼくには、このインパネまわりがどう新しくなったのかわからなかった。やむをえず資料に目を落としてみると、「ダーク木目調インパネとブルーグラデーション照明色のコンビネーションメーターを採用、3本スポークのステアリングの採用」が新しいとのこと。でも、古いカタログを見ると、エアロツアラーだけはもともと4本ではなく3本スポークのステアリングホイールを採用している。一番の違いは、オプション設定のナビゲーションシステムに、G-BOOK対応品が用意されたことだろう。何となく、「無理矢理マイナーチェンジ」の感アリ、だ。
(前席)……★★★
巨大なフロントガラスの影響で、これからの季節にはそれなりの暑さに悩まされそうだが、スパシオの3列のシートのなかで特等席は、文句なしにフロントシート。マイナーチェンジによる変更点は「表皮の質感を高めたこと」。そういわれても、これも実感しにくく、着座感は従来型と変わらずというのがぼくの評価である。エアロツアラーは一部クッションの張り出しが大きい“スポーツシート”を採用するが、乗降性への悪影響は一切ない。ドライバー側シートバック横につく小さなアームレストが、本格ミニバンに未練を残したようでちょっとわびしい。
(2列目シート)……★★
フロントシートに比べるとクッション厚、シートバック長ともに、物足りなさが残るセカンドシート。左右2席分にクッションの一部がリフトアップする、「内蔵ジュニアシート」がオプション設定されるのは従来通り。取材に同行した「エスティマ」の“サードシート”よりはちょっとマシというのが実感。スライド位置は常に“リアモースト”の位置で座りたい。
(3列目シート)……★
「イザという時には簡単に引き出せて…… 」とカタログにもあるように、どうとっても“緊急用”でしかないデザインのサードシート。大人が座れば曲芸的な“体育座り”を強いられるうえに、ニースペースはマイナス!? ピラーとの位置関係からショルダー側ベルトも上体にフィットしないし、頭がリアウインドウから限りなく近いというのもかなりキョーフ。とはいえ、全長4.2mちょっとのボディに、7人が合法的に乗れてしまうのはスゴイの一言。
(荷室)……★★★★
サードシートは格納しているのが本来の姿…… と考えれば、スパシオのラゲッジスペースはなかなかのもの。セカンドシートを最後端位置で使っても、十二分な空間が残る。セカンドシートは、シートバックを前倒しした状態でクッションごと90度前方に跳ね上がるタンブル機能を持つ。赤いロープでフロントシートのヘッドレストステーに支えられるその様はちょっと寂しいが、こうすればワゴン車もびっくりの収容力を発揮。一方、サードシート使用時の収容力はほぼゼロ。人が乗ったら荷物は載らない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
従来型の「☆」(平成12年基準排出ガス25%低減レベル)から、全車「☆☆☆」(同75%低減レベル)となった排ガスレベルは、今回のマイナーチェンジの隠れた目玉的存在かもしれない。車両重量は軽くないが、エンジン排気量は1.8リッター直4と大きめなので、想像以上によく走る。ただし今回のテスト走行は「FWD仕様にひとり乗り」という条件。仮に4WD仕様に7人乗り(!)となったら400kg以上も重くなる計算だ。ATが4段なので、変速時のステップ比が大きく、トルク感やノイズレベルはギア位置によって大きく変化する。5段ATもしくはCVTを求めるのは、スパシオには贅沢過ぎるか!?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
「フロント/リアともにショックアブソーバーを改良し、操縦性、走行安定性ならびに乗り心地を向上」というのがマイナーチェンジでの謳い文句。とはいうものの、従来のモデルから劇的に変化した印象は受けなかった。絶対的には、ファミリーカーとして「可もなく不可もなく」という感じ。ただし、サイド面が垂直近くに立ったモデルの宿命か、高速道路上ではちょっとした横風にも、意外に強い外乱反応を示す点が気になった。
ちなみに今回のテスト車の価格は、36万円を越えるオプションを加えて総額229.3万円。こと純粋に走りのポテンシャル/質感から考えると、この価格、ぼくには「ずいぶん高いジャン」と思えた。
(文=河村康彦/写真=清水健太、高橋信宏(T)/2003年6月)
テストデータ
報告者:河村康彦
テスト日:2003年6月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1158km
タイヤ:(前)195/60R15 88V/(後)同じ
オプション装備:G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション(6.5型ワイドディスプレイ+CD+MD一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ+TV+6スピーカー)+ガラスアンテナ(TV用)(25.6万円)/ブラインドコーナーモニター(2.0万円)/SRSサイドエアバッグ(3.0万円)/195/60R15 88V(15×6JJアルミホイール)(3.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(●):高速道路(●):山岳路(●)
テスト距離:249.2km
使用燃料:15.4リッター
参考燃費:16.2km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。



