ホンダ・インスパイア アバンツァーレ(5AT)【試乗記】
グローブボックスいっぱいの先進技術 2003.07.19 試乗記 ホンダ・インスパイア アバンツァーレ(5AT) ……402.0万円 見かけはオートドクスなセダンながら、「自動運転(ほか)」に向けての先進技術を満載したホンダの新しい「インスパイア」。横浜で開催されたプレス試乗会に、『webCG』記者が参加した。
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驚異のエンジン
デキるビジネスマン風に述べると、ホンダの新型セダン「インスパイア」のポイントは3つある。片バンク休止、つまり6気筒エンジンが3気筒になる「可変シリンダーシステム」、ホンダ知的運転者支援機構「HiDS/Honda intelligent Driver Support System」、そして「ホンダ・プリクラッシュ・セーフティ・テクノロジー」である。
2003年7月初旬、神奈川県横浜でプレス試乗会が開かれた。会場となったホテルのクルマ寄せには、インスパイアがたくさん。さっそく最上級グレード「アバンツァーレ」で街に出た。
走行中、新開発3リッターV型6気筒「i-VTEC」ユニットが1.5リッター直列3気筒になると、すぐわかる。なぜなら、メーターナセル内のディスプレイに「ECO」マークが点灯するから(厳密には、ECOマークは燃費に対して反応する)。
一方、体感的にはまるでわからない。
とはいえ、感覚的に鋭敏とはいえないリポーターであるから、助手席に座る峰カメラマンの協力を仰いだ。
「6気筒から3気筒になったら、手を挙げてください」
高速道路にのるまで何度もECOマークが点灯したが、ついに峰カメラマンの手は挙がらなかった。驚異のエンジン技術である。
さらに驚いたのは、高速道路をまったく当然のこととして法定速度内で走っているかぎり、ECOマークが点きっぱなしだったことだ。2.5リッター並の燃費を謳う3リッターエンジン。「そもそも排気量は3リッターもいらんのではないか」「1.5リッター直3モデルもラインナップした方がいいのではないか」と思わないでもないが、あれもこれもと欲張る消費者に応えるのが資本主義社会におけるエンジニアの仕事であるから、薄給エディターが清貧のココロを説いても詮ないことである。
愚痴をこぼしついでにもうひとつ褒めると、振動が出がちな3気筒ユニットに対して、ホンダは「アクティブコントロールエンジンマウント」と名づけた土台を開発して対処した。エンジンの揺れに従ってマウント内のアクチュエーターが、いわばサスペンションのように伸び縮みすることでV6のロールをいなし、ボディへ揺れが伝わるのを防ぐ仕組みだ。インスパイアほかで量産効果を挙げ、ぜひ軽自動車にまで至る下方展開をしていただきたい。
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硬い乗り心地
4代目となったインスパイアは、国内生産ながら、つまりは北米アコードである。桁違いのセダン市場をもつアメリカからシャシーを拝借して開発コストを抑え、日本人向けに押しだしの利くフロントマスクと、国民的嗜好に合わせて先進技術の付加価値を与えた。先代は、ほぼ“まんまアキュラTL”だったから、縮小激しいわが国の3ボックスカーマーケットにおいて、精一杯ガンバッたといえよう。ただし、姉妹車セイバーはバッサリ切り捨てられた。セイバー(サーベル)だけに。
新型インスパイア、街なかでの乗り心地は、最近のホンダ車の例に倣って、硬い。そのくせ(?)ハードなコーナリングにトライするとガックリ肩を落とすところがあり、まったく個人的な嗜好を述べさせてもらうと、あまり感心せなんだ。大柄なセダンにして、余計な予備知識ゆえに、アメリカンな鷹揚さを期待しすぎていたのかもしれない。
さて、インスパイアのステアリングホイールには、オーディオ、クルーズコントロール関係のボタンがたくさん設けられる。そのなかに「HiDS」と書かれたものがあり、これが「ホンダ知的運転者支援機構」である……ということは、グローブボックスいっぱいに詰め込まれた9冊にも及ぶマニュアル群のなかの最も厚い本を必死に繰ることで判明した。運転を知的に支援していただくのも大変である。
HiDSは、先行したアコードではオプション扱いだったが、インスパイアの最上級グレードには標準装備。高速道路で使う通常のクルーズコントロール(定速走行)はもちろん、グリル裏にあるミリ派レーダーで前方のクルマを補足、スロットルとブレーキを自動で制御して、つかず離れず追走することができる。
さらに知的な点として、バックビューミラーの上に設置された小型カメラが白線から車線を認識、ESP(電動パワーステアリング)と連動して、カーブではジンワリとステアリングを切ってくれる。とはいえ、完全にHiDS中の「LKAS(レーンキープ・アシストシステム)に任せきると、最後にはクルマは車線をはずれてしまう。そのため、アヴァンツァーレが「危ない」と判断すると警報音が発され、ドライバーに注意を喚起する。居眠りは許さない。
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ありがたいテクノロジー
ちょっと「ヤダなァ」と感じたのは、LKASをオンにしたまま車線変更しようとすると、「車線を外れる」と判断されるためか、ごく微力ながら、ドライバーの操作に対してステアリングが抗うことである。実際、右側車線を荷台をはみ出す建築部材を積んだトレーラーが迫ってきたときに、無意識のうちにすこし左に寄ろうとしたらステアリングがかすかに反発して、小さくドキッとした。
「完全自動運転」に向けてユーザーとして積極的に関与していく、という進取の気象に乏しいリポーターには、結局、LKASの“ありがたみ”はよくわからなかった。まぁ、イヤならLKASをオフにすればいいわけだし、そもそも「ハンドルくらい、自分で回すわい」という輩は、アヴァンツァーレ以外のグレードを買えばいい。
3つめのポイント「ホンダ・プリクラッシュ・セーフティ・テクノロジー」は、スイッチがインパネ右側のステアリングホイールで隠れる位置にあって発見しにくいうえ、そもそも「CMS」と書かれていたって、誰が「Collision Mitigation brake System(追突軽減ブレーキシステム)」だってわかるんだあぁぁぁぁぁぁ……国内モデルのくせに! という“ちょい乗り”リポーター特有の問題はあったにせよ、基本的にありがたいテクノロジーである。HiDSのミリ波レーダーを活用し、前方のクルマにブツかりそうになると……、
(1)警報ブザーが鳴り、メーターナセル内ディスプレイに「BRAKE」と表示され、
(2)さらに近づくと、軽いブレーキングとシートベルトを弱く引き込むことでドライバーに体感的な警告を送り、
(3)追突が困難と判断されると、より強いブレーキをかけ、シートベルトを強く引き込んで乗員を拘束する。最終的なブレーキは運転手が踏まなければならないが、信号前でよそ見をしていたり、深夜にふと眠りに落ちたときなど、「CMS」に助けられる場面が容易に思い浮かぶ。
すっかり感心して、担当エンジニアの方に、「インスパイアのオーナーにはいないと思いますが、でも、たとえば前のクルマを猛烈にアオっているアヴァンツァーレは、自動的に減速させられるんでしょうか?」とうかがったら、「その場合は速度差がないので反応しないでしょう」とのこと。それは残念。
(文=webCGアオキ/写真=峰 昌宏/2003年7月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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