ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(中編)】
冷たい猛牛(中編) 2003.07.04 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルド(6MT) 2003年のジュネーブショーでデビューした“ベイビィ”ランボこと「ガヤルド」。イタリアはローマの北、バレルンガ・サーキットで同車に乗った『webCG』記者が報告する。エンジンは? ギアボックスは?
拡大
|
拡大
|
厳然たるオーナー理想像?
「ランボルギーニ・ガヤルド」の群れが、サーキット内を列をなして移動する。3つのグループに分かれて、それぞれのセクションへ。
2003年6月23日から、イタリアのバレルンガ・サーキットで開催されたプレス試乗会の2日目。前日の公道テストから、いよいよレースコースを使うプログラムに移った。“カッティングエッヂ”を謳うクールなスタイルをまとったニューモデルが、単なるパレードカーでないことを体験してもらおうということだ。
『webCG』記者が属する隊列がパイロンで示されたスタート地点に到着すると、サングラスをかけたインストラクターが、各車に積まれたウォーキートーキーの調子を確認にきた。まず「2つのカーブをひたすら往復する」という。クルマとサーキット走行に習熟、もしくは経験を呼び起こすために。
大きなコーナーの内側につくられた小規模なハンドリングコースでは、別のグループが、道の両側から吹き出す水のトンネルのなか、ウェット路面でのドライブに興じている。4WDと電制アンチスピンデバイス「ESP」の性能を実地に確認するためだろう。“スペックと姿カタチでヒトを驚かす”をもってよしとしていたイタリアン・エグゾチックカーが、ずいぶんな変わりようである。
最初にレースコースをドライブするのは、ステアリングコラムから左右に生えるパドルをもつ「e-ギア」仕様ではなく、コンベンショナルな6段フロアシフトのマシン。右脇に、ニョッキリ長いギアレバーが生える。
ニューランボはイタリアン・スーパーカーながら、顧客の体格に頓着せず広く販売の網をかけたいゆえか、ポジションの自由度が高い。シートはもちろん、ステアリングホイールも前後上下に調整できる。とはいえ、開発にあたっては厳然たる“理想的オーナー像”(身長180cm前後でスラリと足が長い!?)が設定されたとみえ、身長165cm短足タイプのリポーターには、シートクッションの前後長が長すぎる。テスト車はクラッチペダルをもつ3ペダル式なので、個人的にちょっと気になった。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
ココロ震わす
背後のパワープラントは、90度のバンク角をもつ5リッターV10。10気筒に理想的な72度でないのは、「すこしでも重心を下げたいから」と「アウディの生産施設を使いたいから」(パワープラント担当エンジニア)。
前者の目的のため、潤滑システムは深いオイルパンを必要としないドライサンプ、クラッチは直径を小さくできるツインプレートが採用された。後者の結果としては、フォーリングスの3リッターV6と同じ、82.5×92.8mmのボア×ストロークが挙げられる。爆発タイミングの問題には、わざわざ左右バンク用にクランクピンをわけ、18度のオフセットをつけることで対処した。左右のピストンが上死点に至る時期をずらし、いわば“仮想72度”のバンク角を実現したわけだ。
5リッターV10の最高出力は500ps/7800rpm。52.0kgmの最大トルク発生回転数は4500rpmだが、はるか手前、わずか1500rpmでその80%を得ることができる。実際、スロットルペダルを開け始めたときからガヤルドのV10はモリモリと力強く、スムーズな回転にともなってさらにモリモリと力が湧き出てきて、結局、最後までモリモリとトルキーなまま終わる。昨日の公道テストでご一緒させてもらった自動車専門誌『ル・ボラン』の小倉正樹編集長の言を借りると、「ストーリー性に欠けるかもしれません」。
日常性に配慮したスーパーカーは、可変吸気システムおよび吸排気側とも連続可変バルブタイミング機構を備えて全域にわたるフラットトルク化に努め、みごとに成功した、ともいえる。
ブッといトルクと噴き出すパワーにめげることなく8200rpmのレブまで回せば、4500rpmを超えるあたりから10気筒の発声が軽くなるのが観察されるが、“内燃機関の歓び”を演出するのは、むしろ排気音。スロットルペダルの踏み込み量にもよるが、タコメーターの針が3500rpmにも達すれば、すでに盛大なエグゾーストノートが車内に充満し、キャビンの空気と、乗員のココロを震わす。大いに。ときには過剰なほど。ウルサイ。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
ギアに関する不満
ストロークの長いマニュアルギアボックスには苦労した。ゲート間を動かすのはナイフで“カラの”バター入れをかきまわすように軽いのだが、肝心のギアを噛ませる際が、硬い。丁寧なシフトが要求され、本当の意味での素早いチェンジは難しい。すくなくとも、リポーターにはできなかった。だから、イベント終盤、バレルンガ・サーキットを全コース周回する段階では、迷わず「e-ギア」仕様を選んだ。
e-ギアは、ステアリングホイール奥のパドルを引くことで、ギアを変えられる。ドライバーがクラッチペダルを踏むかわりに、ギアボックスに内蔵されたロボットが見えないペダルを踏んでくれるので、運転手の足もとには、スロットルとブレーキペダルしかない。
ソフトウェアは、フェラーリのF1ギアボックスにも使われるマニェティ・マレリ製で、「ノーマル」「スポーツ」「オートマチック」「低ミュー路」と4つのモードがある。ノーマルからスポーツにすると、変速が速くなり、また、レブに当たっても自動シフトアップを許さなくなるのは、プランシングホースのそれと同じ。しかし、いうまでもなくファイティングブル専用のチューニングが施され、「ノーマル-スポーツ」間の落差が、360モデナほど激しくないように感じた。ギアチェンジは十二分に速く、シフトダウン時のなか吹かしは、さすがに人間離れした上手さである。
「オートマチック」モードは、ギアを1速に入れてから「A」ボタンを押すことでセットされる。相変わらず(?)ギアチェンジの合間で乗員は船をこぐが、たとえば「ここゾ」というタイミングでスロットルペダルに載せる右足の力を抜けばそこでシフトアップしてくれるので、すくなくともドライバーは、慣れれば所期の違和感を緩和できる。
ガヤルドのe-ギアにひとつ文句を付けると、パドルの先端が「T」ではなく「L」字型、つまり操作するレバー部分が上方にしか伸びず、しかも短いことがある。カバーする範囲が狭すぎる。生える位置からして、ステアリングホイールを、いま流行の9時15分ではなく、10時10分に握らざるをえないのも不満だ。ただ、単なるパーツ形状の問題なので、まったく無責任な予想だが、意外に早い段階で改善されるのではないだろうか。(後編へつづく)
(文=webCGアオキ/2003年7月)
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013528.html
・ ランボルギーニ・ガヤルド(6MT)【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013503.html

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。






















