ポルシェ・カイエンS/カイエンターボ(6AT/6AT)【短評(後編)】
日常のポルシェ(後編) 2003.06.22 試乗記 ポルシェ・カイエンS/カイエンターボ(6AT/6AT) ……955.0/1360.5万円万円 まったくあたらしいポルシェとして、世界的な注目を集める「カイエン」。モータージャーナリストの生方 聡が、“S”と“ターボ”、2台を乗り較べる。スーパーSUVの隠れた実力とは? そして、どちらがオススメか!?スポーティな身のこなし
エンジンの印象もさることながら、カイエンの身のこなしがスポーティな部分にも注目したい。以前、海外で乗った「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」に比べると、明らかに軽快な印象なのだ。サスペンションやフルタイム4WDシステムは基本的に共通だが、カイエンのほうが車高が低い。また、通常時の前後トルク配分はトゥアレグの「前:後=50:50」に対して、カイエンは「前:後=38:62」とややリア寄りの設定にするなど、メカニカルな面でも細かい差別化が図られた。その甲斐あって、カイエンはステアリングに対する反応がよりシャープで、コーナリング時のロールもよく抑え込まれている。とくにカイエンSはノーズの軽さも手伝って、とても軽快。「SUVらしさが感じられない」といえば、わかってもらえるだろうか?
ところでカイエンのサスペンションは、カイエンSがオーソドクスなコイルスプリング式を採用するのに対して、ターボは車高および減衰力が調節できるエアサスペンションを装着している。エアサスペンションを採用するメリットは、サスペンションストロークを必要とするオフロード走行と、姿勢変化を少なくしたいオンロード走行とを、高い次元でバランスさせられること。ターボは6種類の車高切り替えができるほか、減衰力のアクティブなコントロールが可能だ。
「PASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)」と呼ばれるダンパーコントロール機構は、「Normal」ほか、「Sport」「Comfort」モードをもつ。今回はオフロードを走行するチャンスはなかったが、車高を下げて減衰力の高い「Sport」モードを選べば、ワインディングロードでも安定した走りが楽しめるし、荒れた道で「Comfort」にセットすれば、路面からのショックを遮断することができる。通常は「Normal」のままでいい。
一方、カイエンSのコイルスプリング式サスペンションもオンロードを走るかぎりはバランスよく快適で、一般道から高速道路まで十分カバーするから、無理にエアサスペンションを選ばなくてもよいだろう。
ワゴンとしての使い勝手は上々
スポーティなだけでなく、実用性の高さもウリのひとつであるカイエン。実際、ワゴンとしての実力も高い。まず、ポルシェとしては初の3人がけリアシートは、全長も全高も大きいおかげで、膝、足元、頭上ともスペースは十分である。座ったときに自然な姿勢が取れるので、これなら長時間のドライブでも苦にならないだろう。シートバックは6:4の分割可倒式で、クッションを個別に起こすことも可能だ(前編を参照してください)。
ラゲッジスペースも広大。幅115cm、奥行きはリアシートを起こした状態で95cm、倒せば165cmまで広がる。天井までの高さが十分あり、またSUVとしては低いフロアのおかげで、これなら大きな荷物でもたやすく飲み込むだろう。また、ガラスハッチのみの開閉も可能だから、テールゲートを開けるスペースがなくても、荷物にアクセスできるのは便利だ。
初めてのカテゴリーにもかかわらず、ポルシェのテイストを色濃く残しながらつくりあげることに成功したカイエン。「S」と「ターボ」を乗り較べると、たしかにターボの圧倒的なパワーとエアサスペンションによる自由度の高さは魅力だが、自然吸気エンジン搭載のSでも十分このクルマの楽しさは堪能できる。カイエンを選ぶ人にとって、Sの車両本体価格860.0万円とターボの1250.0万円、その価格差は気にならないかもしれないが、私ならSを選びたい。
(文=生方 聡/写真=峰 昌宏/2003年6月)
・ ポルシェ・カイエンS/カイエンターボ(6AT/6AT)【短評(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013448.html
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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