スバル・レガシィツーリングワゴン&レガシィB4【試乗記(後編)】
独自のカテゴリー(後編) 2003.06.05 試乗記 スバル・レガシィツーリングワゴン&レガシィB4 富士重工の社運をかけて投入された新型「レガシィ」。『webCG』記者が、富士スピードウェイで乗る。同社エンジニアの方から聞いた“レガシィ病”とは……!? 拡大 |
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そうとう“通”向け
「FISCO」こと富士スピードウェイで、ニューレガシィのプレス試乗会が開催された。ズラリと並ぶツーリングワゴン、そしてB4。際立った“新しさ”はないけれど、どちらも、いかにもスバルらしくオーソドクスにまとめられた。特にセダンは、端正でカッコいい。
エンジンは3種類。すべて2リッター水平対向4気筒で、ターボ(MT/AT=280ps/260ps)、DOHC16バルブ(190ps/180ps)、SOHC16バルブ(140ps)がラインナップされる。
組み合わされるトランスミッションは、ターボが5MT/5AT、ツインカムが5MT/4AT、シングルカムは4ATのみとなる。個人的には、アウトプットの小さいNAモデルにこそ5段ATを奢った方がいいと思うが、「(部品メーカーが)つくってくれないんです」というのが、スバルのエンジニア氏の弁。なにしろ国内でボクサーユニットを使うメーカーはスバルだけなので、自社で開発せざるを得ない。高コストの5ATは、商品への付加価値という見地からも、ターボモデルへの搭載とあいなった。
「スバル・レガシィB4」のNA(自然吸気)モデル「2.0R」に乗る。
以前、自動車専門誌『NAVI』で、レガシィB4のターボモデルを長期リポート車として担当していたころ、比較試乗のためノンターボ車(5MT)を富士重工から借りようとしたら、「広報車がありません」と言われたことがある。あまり宣伝に力を入れていなかったのだろう。実際、レガシィの“走り”の看板はターボモデルが背負っていて、自然吸気モデルはいまひとつ影が薄かった。「お客さまのなかにも『本当はターボが欲しいんですが……』という方が多くって」と、開発者のひとりは苦笑する。
今回、NAモデルがグッとよくなった。新しい2リッター水平対向エンジンは、なんというか涼やかなエンジンで、清涼感をともなってスムーズに回転を上げる。試乗コースがサーキットなので、一般性の面で問題はあるが、手動変速で運転するのが楽しい。
もちろん圧倒的少数派ではあるが、スバルは比較的マニュアル車の割合が多いメーカーである。新しいB4は、スッキリしたスタイルになりながら依然として匿名性の高い謙虚なデザインを保っているから、さりげなくNAの5MTモデルに乗っていると、そうとうな“通”に見られることでしょう。個人的に、オススメ。
技術的課題の克服
さて、スバル自慢のフラット4は、92.0×75.0mmのボア×ストロークこそ先代と同じだが、「パーツの8割(以上)が新しい」。
すべてのエンジンに、スバルエンジニア念願の「等長等爆エグゾーストシステム」が採用された。これまではオイルパンを避けるため、左2本/右2本の排気管をそれぞれ結ばざるをえず、そのため爆発順序の関係で排気干渉がおこって「ドコドコドコ……」という、いわゆる“ボクサーサウンド”が響いていた。今回、補機類ほかエンジン全体が大きく見直されたことで、左右前側、左右後側の排気管をまとめ、順序よく排ガスを送れるようになった。いままでとは逆に、今度はオイルパンがエグゾーストパイプを避けるカタチに成形される。ただ、効率がよくなった反面、独特のサウンドはすっかり影を潜め、ちょっと寂しい。ミもフタもない言い方をすると、従来“個性”と捉えられていたモノが、実は“技術的な課題”に過ぎなかった例のひとつである。ついに電制スロットルが採用されたこともニュースだ。
NAツインカムユニットは、圧縮比が10.8から11.5に引き上げられ、等長等爆はじめ、吸排気系が手直しされた。スバルらしいと感じたのは、吸気システムを可変化するのではなく、インテークマニフォルドの形状を工夫、プラグの点火順に反時計回りの渦を生じさせて高回転域での吸気効率を上げる手法をとったこと。旧型比35psアップ(!)の最高出力190psは、700rpm高い7100rpmで発生する(AT車は180ps/6800rpm)。一方、トルクは吸気側可変バルブタイミング機構によってフラット化、最大トルク20.0kgmは4400rpmで得る。
ボクサーターボの最高出力は280ps/6400rpm(AT車は260ps/6000rm)、最大トルク35.0kgm/2400rpm。2、3代目は大小2つのタービンを使う「2ステージツインターボ」を特徴としていたが、4代目はチタン製タービンを用いたシングルターボとなった。
激変したのは、アウトプットの絶対値ではなく、出力特性。特にトルク特性は、これまで5000rpm付近に向かって山なりになっていたのだが、ニューターボではみごとに急激に立ち上がり、その後台地状の、穏やかな右肩下がりに変わった。「デュアルAVCS」こと吸排気バルブの可変機構搭載が、メカニズム面でのキモである。また、タービンへの排気導入が、弟分「インプレッサ」同様ツインスクロール化された。つまり、等爆化によって、リズムよく排ガスがタービンに吹き付けられ、エネルギー効率向上が可能とされた。
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荒削りでも……
つまるところ、新しいターボモデルでは、あまりエンジンを回さない“街なかドライブ”でも、じゅうぶん、厚いトルクの恩恵にあずかれることになったわけだが、レースコースを前に逆上しているリポーターにそれを確認する余裕はない。ツーリングワゴン「2.0GT spec.B」(5AT)にムチうって、第1コーナーへ飛び込んだ。
変化自在のハンドリングを見せるインプレッサと比較すると、当たり前だが、レガシィはずっと落ち着いている。ちょっと“鈍”と感じられるほどに。ドライバーのウデの問題もあるが、安易にリアを振り出したりはしない。サスペンションは、「前:マクファーソンストラット」「後:マルチリンク」と形式こそ変わらないが、トレッドは前後とも広げられ(30/25mm)、フロントのみならず、リアのアーム&リンク類もアルミ化された。サーキットゆえ、乗り心地の評価はできないが、「4WD」あらため「AWD」の4輪駆動システムのもたらす安定感が印象的だった。ブレーキには、フロントに30mm厚17インチのベンチレーテッドディスク+2ポットキャリパーが奢られる。
興奮さめやらぬまま、レガシィの“走り”を統括したスバル技術本部車両研究実験統括部の日月(たちもり)丈志部長にお話をうかがうと、「荒削りでも変わったね、と言われたい」と笑う。「荒削りってことはないんじゃないですかね……」と思っていると、「新しい“レガシィらしさ”を出したい」との言葉が続いた。そのため、開発中は、過去の成功体験に拘泥することを、“レガシィ病”とさえ呼んで避けたという。
新型のボディ拡大を「レガシィとして最適な大きさ」と胸をはった増田主査(前編参照)のコメントと共通するのは、「2リッター級ワゴン/セダン」というよりは、いわば「レガシィ」という独自のカテゴリーを開拓している感があること。いうまでもなく、4代目もまごうことなきレガシィだ。初代が登場した1989年以来、いつのまにかライバルがいなくなったわけである。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2003年6月)
関連リンク:スバル・レガシィツーリングワゴン&レガシィB4【短評(前編)】(http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013350.html)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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