フォルクスワーゲン・ゴルフR32(6MT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフR32(6MT) 2003.05.02 試乗記 ……395.0万円 総合評価……★★★★
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本物のスポーティ
じつに元気なゴルフである。ノーズに排気量の大きなエンジンを詰め込んだと聞いて「ストレート命」のクルマかと想像していたが、実際に走らせてみるとそんなことはない。ワインディングロードでのフットワークは、期待を大きく上まわるレベルにあり、ドライバーに“いい感じ”の刺激を与えてくれる。
ご存知のとおり「ゴルフGTI」は時の流れとともにスポーツ度が薄れ、ラクシュリー傾向を強めてきただけに、硬派にとってR32は本物のスポーティゴルフとして歓迎されるに違いない。安全性を向上させるためにボディが大きく重くなりがちな今の時代、活発に走らせるには241psのV6エンジンが不可欠だったのだろう。まさに現代のホットハッチにふさわしい走りっぷり。感覚的には、1976年に登場した初代ゴルフGTIの再来と言ってよい。
残念ながらR32はとりあえず完売してしまったようだが、新たに右ハンドル、4ドア仕様も入ってくる予定だから、気になるかたはもう少しの辛抱だ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ゴルフR32」は、ラクシャリー傾向の強まった「GTI」とは異なる、本格的なスポーティモデル。フォルクスワーゲンは今後、各モデルに「Rライン」と呼ばれるスポーティグレードを追加する予定で、ゴルフR32はその第1弾である。ワールドプレミアは2002年5月のマドリードショー、同年8月からドイツで販売が開始された。日本へは、2003年1月11日から3ドアハッチバックが300台限定で販売され、すでに完売。5月6日から、5ドアハッチバックモデルが発売される。価格は、3ドア(左ハンドル)が395.0万円、5ドア(右ハンドル)は405.0万円。
(グレード概要)
ゴルフR32の3ドアモデルは、左ハンドルのみの設定。スポーティスペシャルの専用装備として、エクステリアに前後の大型エアロバンパー、サイドスカート、リアスポイラーを装着。足元を、OZ製アルミホイールと、225/40ZR18インチのファットなタイヤでキメる。インテリアは、「R32」ロゴ付きのケーニッヒ製本革スポーツシート、アルミ製ペダル、グリップの太い本革巻きステアリングホイールを装備。加えて、サイドエアバッグ&カーテンエアバッグや、ベルトフォースリミッターなどの安全装備や、オートエアコン、クルーズコントロール、熱線吸収ガラスなど快適装備も備え、ゴルフのトップモデルに恥じないラグジュアリー性をも付与した。
エンジンは、フラッグシップ「フェートン」のベーシックグレードと同じ、狭角バンクの3.2リッターV6SOHC24バルブを搭載。最高出力241ps/6250rpm、最大トルク32.6kgm/2800-3200rpmを発生する。トランスミッションは6段MT、駆動方式はハルデックカプリングを用いた4WD「4MOTION」を採用。0-100km/hを6.6秒で駆け抜け、最高速度は247km/hにも達する。足まわりは、20mmローダウンのスポーツサスペンションを採用。加えて、リアサスペンションをオリジナルのトーションビームからマルチリンクに変更するなど、スペシャルモデルと呼ぶに相応しいモディファイが施された。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ゴルフのグレードのひとつなのだから、当然インストルメントパネルのデザインと上質な仕上げはフツーのゴルフと大きな違いはない。けれど全体的に嫌味のないスポーティな味付けが施されているし、握りの太いステアリングホイール等々、それなりにホッテストモデルらしい雰囲気に包まれている。シートを含む内装には本革があしらわれ、このあたりからもR32がホットハッチといえども、若者よりも大人をターゲットとしていることがわかる。オートエアコンを初めとして装備は充実、スポーツ志向でありながら、日常使用の際に「必要不可欠」あるいは「あれば便利」の仕掛けとアクセサリーはおおむね揃っている。
(前席)……★★★★
ノーマルのゴルフと大きく異なるのは専用シートが奢られた点だ。ケーニッヒ製スポーツシートは、大腿部とショルダー部を中心としたサポート性に優れ、それでいて窮屈なところがない。ただし乗降性とはトレードオフの関係にある。クッションの高さ調整はシート脇のレバーで行なえるものの、座面の先端がやや前上がりなのがやや気なるところだ。
(後席)……★★
2ドアゆえに、後席へのアクセスはあまりよくない。ドライバーには歓迎されるサポートのよいフロントシートも、ヘッドレストと一体型のシートバックが大きく長く、中途半端にしか前に倒れないのが不便なのだ。しかも、窓ははめごろしなので、後席に押し込められた人間にとってはあまり気分はよくない。もっとも、足元スペースと頭と天井のクリアランスに不満はない。
(荷室)……★★★
なにしろゴルフ、トランクスペースにも問題はない。開口部87cm、奥行き76cm、トノカバーまでの高さは40cm。夜逃げに使うのでもないかぎり充分以上の広さと深さがあり、家族4人を乗せても、必要なだけの荷物を放り込めそうだ。もちろん、リアシートを畳むこともでき、最大奥行きは139cmになる。ユーティリティーは十分に高い。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
ある意味、このクルマのハイライトがパワーユニットだ。3.2リッターのV6エンジンは、低回転域から太いトルクを発し、車重1460kgのボディをじつに力強く走らせる。全開加速を試してみるまでもなく、パートスロットルの領域ですらダッシュ力は凄まじい。しかも、このエンジン、これがVW製? と勘ぐってしまうほど淀みなくスムーズに吹け上がるのが嬉しい。アルファV6のような官能的な世界とは異なるのだが、いかにも「ドイツのメーカーがつくりました」という緻密に組まれたできのよい機械の素晴らしさが、ドライバーに素直に伝わってくる。パワーとトルクはなんと241ps/32.6mkgもあるが、そこは4モーションと呼ばれる4WDシステムのおかげで、4つの太い18インチ・タイヤ(ミシュラン・パイロットスポーツ)は確実に路面を捉えてくれる。
マニュアル・トランスミションは6段もあるが、トルクたっぷりのエンジンだから、たとえずぼらなシフト操作をしたとしてもフレキシブルに応えてくれ、5段でも十分なのではないかと思う。シフトレバーの感触はまずまずで、やや渋さは残るが、確実な動きを示し、入りにくいことは一度もなかった。ホットモデルとしてはクラッチがとても軽いこともありがたい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
乗り心地は意外にもよい。サスペンションはガチガチに固められているわけではなく、適度なしなやかさをもっていて好ましい。段差や突起を通過する際の路面からの突上げはうまく抑え込まれている。ただし、そうした段差や路面のうねりが連続するときは、状況が異なってくる。ピッチングがひどいのだ。それは速度に関係なく、低速でも高速でも変わらないのが辛い。ドライバーは上下に揺すられ、かなり不快感を伴う。このピッチングさえなければ、この項目に4つ星を与えてもいい。
操縦性はホットハッチに恥じないレベルに達している。コーナリング特性は弱いアンダーステアに終始するが、挙動はマイルドで安定している。人によっては面白さに欠けると感じるかもしれないが、大人にはむしろこのくらいがいい。ホットハッチだからといって、必ずしも神経をピリピリさせる必要はないはずだからだ。ブレーキの絶対的な性能にも満足できるが、タッチが素晴らしいわけではなく、微妙なコントロールはどちらかといえば不得意な部類に入るだろう。
(写真=峰 昌宏)
【テストデータ】
報告者:阪和明(CG編集局長)
テスト日:2003年3月18日から20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:14761km
タイヤ:(前)225/40ZR18(後)同じ(いずれもミシュラン パイロットスポーツ)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:414.5km
使用燃料:58.7リッター
参考燃費:7.1km/リッター

阪 和明
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