トヨタ・ヴォルツの「ライバル車はこれ」【ライバル車はコレ】
2BOXまたは“ちょっと”ワイルド対決 2003.04.18 試乗記 トヨタ・ヴォルツの「ライバル車はコレ」トヨタ・ヴォルツ(1.8リッター=178.8-205.2万円)
1995年から2000年にかけて販売された「トヨタ(シボレー)キャバリエ」に続き、アメリカはGM社とのコラボレーションによって生まれたのが「ヴォルツ」。キャバリエの場合との違いは、キャバリエがGMからのOEM供給を受けてトヨタ・ブランドで売られたクルマであったのに対し、ヴォルツはGMとの共同開発の末に誕生したモデルであること。
とはいえ、デザインはトヨタのカリフォルニア・スタジオ「CALTY」からのアイディアをまとめたものだし、ハードウェアの開発もトヨタが担当したという。GMのネタにトヨタが手を加えた「ほとんどアメ車」だったキャバリエに比べると、ヴォルツの“血中日本車度”は、だからはるかに高いわけである。
そもそもはGMが「ポンティアック・ブランドで若者向けのベーシックモデルを発売したい」とトヨタに持ちかけたのが、このプロジェクトの発端。トヨタとしても「日本で何とか若者にアピールできるモデルを持ちたい」と、両者はたちまち“意気投合”した。そんなわけで、共にGMの工場で生産される「ポンティアック・ヴァイブ」と「トヨタ・ヴォルツ」とは瓜二つの双子車。日本のみで販売されるヴォルツとは別に、トヨタでは、北米での販売用に一部パネルのデザインを変えた「マトリックス」をカナダの自社工場で生産している。
【ライバル車 その1】トヨタ・カローラランクス/アレックス(1.8リッター=164.8-200.8万円)
星の数ほどあり何でも揃う――ように思える日本車ラインナップのなかでも、「1.8リッター級の大きめ2BOX」というヴォルツのライバルとおぼしきモデルは見当たらない。で、何かないかな……と考えていると、実は“灯台もと”にこんなクルマを見つけた。「カローラランクス」「アレックス」だ。
ランクスとアレックスの1.8リッターモデルは、ヴォルツとエンジンラインナップを共にするクルマたちだ。というより、エンジンに限らず、シャシー部分まで両者は基本的に共通。そう、海の向こうの工場で生産されるヴォルツも、元をただせば“カローラ一族の一員”。そんなわけで、ヴォルツかランクスかはたまたアレックスかと迷った場合には、「どうぞどれでもお好きなものを!」というのがぼくのコメントだ。
もっとも、“走り”はランクス/アレックスの方が軽快だ。アメリカの環境に合わせて肥満化(!?)したヴォルツは、両者より100kg以上重いからである。
“GMの流儀”に配慮をしたためか、ヴォルツには日本車では常識であることが一部通用しなかったりもする。たとえば、ATのシフトポジション・インジケーターがメーターパネル内になかったり、ドライバー席のパワーウインドウのオートモードが「開」の側にしかつかなかったりする(アメリカ流の安全理論ゆえ)。ナビを装着すると純正品にもかかわらずGPSアンテナがダッシュ上に無造作に置かれるのも今の日本車では考えられないこと。そんなこんなでヴォルツの日常の使い勝手には、ちょっとアメリカンに大ざっぱなところが散見される。
【ライバル車 その2】スバル・フォレスター(2.0リッター=178.5-198.5万円)
ヴォルツのスタイリングは、オーバーフェンダー風のサイド処理に前後バンパー下部のアンダーガードを彷彿とさせるデザインなど、ちょっとばかりワイルドなSUVテイストがある。というわけで、なかば強引に(?)選んだライバル車その2が、「スバル・フォレスター」。
ヴォルツの場合、4WDモデルになると、組み合わされるエンジンは“ローパワー仕様(132ps)”に限られる。MTも選べるハイパワー190psエンジンで乗りたいとなると、そこでチョイスができるシャシーはFWD(前輪駆動)のみだ。
今回のライバル対決、“走りのポテンシャルで選ぶ”というのであれば、オススメは迷わずフォレスターだ。ヴォルツの走りは全般に鈍重。車両重量は大差ないのにそんな風に感じるのは、エンジン排気量の違いによるものかも知れない。たとえ同じ自然吸気エンジン搭載モデルでも、フォレスターの加速の方が軽く感じるのは“プラス200ccの余裕”ということになるのだろう。
コーナリングやばね下の動きの軽快感でもフォレスターに分がある。ただし高速道路でのフラット感はヴォルツの勝ちだ。カローラセダンに端を発したトヨタの“NCV(ニューコンセプトヴィークル)”兄弟たちも、時が経つほどに熟成が進んでいることを、こんなところに感じる。
(文=河村康彦/2003年4月)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。