ジャガーXJシリーズ【海外試乗記】
「素晴らしい!」の一語 2003.03.15 試乗記 ジャガーXJシリーズフルモデルチェンジして7代目となった、ジャガーの高級4ドアサルーン「XJシリーズ」。外観はXJのスタイルを踏襲する伝統的なものだが、エンジニアリングは革新的に変貌し、新しい方式を用いたアルミ合金のモノコックボディが採用された。自動車ジャーナリストの笹目二朗による新型XJアルミボディの解説と、スペインでドライブした印象を報告。
アルミの心配
ジャガー「XJサルーン」が、7代目を襲名した。外観はこれまで通りXJの正流にあり、一目でそれとわかるデザインである。ところが、内容はこれまでにない革新的な変貌を遂げた。
ハイライトは、アルミ合金のモノコックボディを採用したことだ。従来型と較べて、ボディ重量が40%減、剛性は60%アップ、というのがうたい文句である。大雑把に言うと、重量が約200kg軽くなったわけだが、その効果ははかり知れないものがある。
アルミボディそのものは、そう珍しいものではない。わが国では「ホンダNSX」が先鞭をつけ、ドイツは「アウディA8」があり、イタリアには「フェラーリ360モデナ」がある。運動性能や燃費の向上など、軽量ゆえの利点は先刻承知。しかし、クラッシュした時の安全性であるとか、ボディを直せるにしても、完全復旧可能なのか? プロダクトの工作精度はいかに? ……などの心配事を考えると、どこか受け入れがたい部分があったことも事実だ。
XJのアルミボディが他メーカーと違うのは、生産方式にある。これまではスチールを使う時と同じように、アルミ材を溶接する方式を採ってきた。ご存知のように、溶接時には熱が発生するため、素材は熱膨脹と収縮をともなう。だから溶接する際は、キチンと治具に固定する必要があるが、冷めて収縮し、寸法が狂うことは避けられない。まして、膨張率が異なる鋳造品と押し出し材を直接溶接してしまうとなると……、クオリティに不安が生じる。
100%受け入れられる
上記の不安を解決すべく、ジャガーは航空機技術を応用した「リベット接着」という名案を用いた。つまり、これまで通り鉄板をスポット溶接していた要領で、プレスされた個々のアルミ板をモノコック構造に組み立て、スポット溶接に代えてロボットがリベットを打ち込むのだ。熱が発生しないから膨張と収縮の問題もなく、高い工作精度を確保でき、鋳造品と押し出し材の結合も問題ない。要所には、エポキシ系の接着剤も用いられる。修理に関しては、壊れた部分を切り取り、新しいパーツをリベット止めすれば復旧するのである。
キャッスル・ブロムウィッチのジャガー工場見学を終え、これまで抱いていた不安は解消。胸のつかえがとれた気がした。このアルミボディなら、100%受け入れられると思った。
試乗した結果は「素晴らしい!」の一語に尽きる。軽い車重により、加減速が有利なことはもちろん、コーナーでの身軽さ、燃費向上、安全性(衝突エネルギーも小さく、吸収しなければならないエネルギーを抑えられる)等々、すべての性能を飛躍的に向上させた。ニューXJのようにボディのすべてではなくとも、これからアルミ材の使用率は高まる一方だろうから、ジャガー方式を真似る例は増えるに違いない。テストドライブを終えて、そう思うに十分な成果を確認した。
XJ6が高バランス
これで、新型XJの印象は大半を伝え終えたと思われるが、エンジンラインナップなどの紹介もしておこう。もっとも排気量が小さいのは、3リッターV6(240ps、30.6kgm)。これを搭載する廉価グレードには、「XJ6」という懐かしい名前が復活した。5mを超える大きなボディと3リッターV6のコンビネーションは、軽さゆえに実現できたことである。
シリーズの中核となるV8エンジンは、3.5リッター(262ps、35.2kgm)、4.2リッター(300ps、42.8kgm)、そして4.2リッター+スーパーチャージャー(400ps、56.4kgm)の3本立て。ギアボックスは、先頃マイナーチェンジ受けた「Sタイプ」に採用した、ZF製6段ATが組み合わされる。デビュー当初は、V12エンジンやロングホイールベース版は用意されない。
サスペンションは、前後ともダブルウィッシュボーン。従来のコイルスプリングに替わり、全車にエアサスペンションが採用された。タイヤは、225/55ZR17が標準サイズ。4.2リッターは235/50ZR18、スーパーチャージャー付き4.2リッターを積むスポーティ版「XJR」は、255/40ZR19を履く。
再々述べるように、軽さゆえ3リッターモデルでも十分に速い。価格的なことまで考えなくとも、効率やバランスの点で、XJ6が一番魅力的な仕様に思われた。日本での価格発表は、2003年4月が予定される。
(文=笹目二朗/写真=ジャガージャパン/2003年3月)

笹目 二朗
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。