トヨタ・ウィッシュX(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ウィッシュX(FF/4AT) 2003.03.07 試乗記 ……206.0万円 総合評価……★★大人気ない……
欧州市場を意識して3ナンバーサイズに成長した「イプサム」と、“ときどき3列シート”の「カローラ スパシオ」との狭間を埋めるべく誕生した5ナンバーサイズのコンパクトミニバンがこのクルマ。と紹介したいところだが、開発陣は「このクルマを“ミニバン”と呼んで欲しくない」とおっしゃる。確かに定員は7名だが、「走りは軽快で1人乗りでもサマになる、“これさえあれば大丈夫CAR”」が、ウィッシュの基本コンセプトであるそうな。
要するに、好評を博したホンダ「ストリーム」の直接的なライバルとして登場したのがウィッシュだ。ただし、大のトヨタが丸2年以上の“あと出し”をした挙句、見た目の印象をここまで似せて登場させる、大人気のなさはどうかと思うが……。
|
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ウィッシュは2003年1月20日にデビュー。中型セダン「プレミオ/アリオン」のプラットフォームに“スタイリッシュ”を謳うモノフォルムのボディを被せた、3列シート7人乗りのピープルムーバーである。
グレードは、132psと17.3kgm(4WDは125psと16.4kgm)を発する、1.8リッター直4DOHC(1ZZ-FE)を積む「1.8X」(2WD/4WD)のモノグレード。これに、収納やスピーカーなどの装備を省いた廉価版「Eパッケージ」(FFのみ)と、アルミホイールや本革巻ステアリングホイールなどを奢った豪華版、「Sパッケージ」(FF/4WD)が用意される。
(グレード概要)
1.8X、モノグレードのウィッシュ。装備は基本的に充実しており、オートエアコン、CDプレーヤー付きAM/FMラジオ+4スピーカーなどが標準で備わる。2WDと4WDが用意され、4WD車は、リアがディスクブレーキ、3列目シートにヒーターダクトが備わる(寒冷地仕様は、2WDも3列目ヒーターダクト付き)。
上級パッケージオプション「Sパッケージ」装着車との違いは、エアロバンパーやサイドマットガードが装着されず、アルミホイールがスチールホイール+キャップになるなど。インテリアは、助手席シートバックテーブルが省かれるほか、本革巻ステアリングホイールとシフトノブが本革仕様ではない。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
デザイン担当者が「パーソナル感を強調した」と主張するダッシュボードの造形。だが、実際はファミリーカー的な雰囲気が強く感じられる。センターパネル上部に設けられた2DINスペース(テスト車では、ナビのディスプレイが設置される)が、そんな感覚をもたらすのかもしれない。特徴が“ありそでなさそな”デザインだ。メーターは、スポーティな3連丸型をモチーフにするものの、位置が低めでメーターを読み取るための見下ろし角が大きいことが、ちょっと気になる。
インパネに備わるゲート式のATセレクターは、使い勝手の賛否が分かれそうだ。前進モード内での操作はしやすい一方、「P」から「R」、「R」から「D」への移動が直線的に行えない点に、抵抗ある人がいるかもしれない。
後席用エアコンは装備されないが、ダッシュセンターの中央上部に口を開いた吹き出し口が、冷気を効果的に後席に導くという。
(前席)……★★★
ドライバーズシートに腰をおろすと、確かに“ミニバン感覚”は薄いと感じられる。ヒップポイントは、ヴィッツと較べて20mmアップに過ぎないというし、ペダル類やステアリングホイールのレイアウトも含め、いわゆるミニバンよりずっと通常のセダン感覚に近い。シートの着座感はまずまず。ワインディングロードを「ちょっと飛ばす」程度では、ホールド感も十分。レバー式のリフターも嬉しい装備だ。
(2列目シート)……★★★
ライバル車のつくりを相当意識したと思われるのがこの部分。すなわち、ストリームのそれを凌ぐ居住性の実現が、ウィッシュの2列目/3列目シートでの居心地だ。2列目シートは、足元にも頭上にもそれなりに余裕ある空間が確保されている。
(3列目シート)……★★★
3列目シートは、いかにも“緊急用”のストリームに較べるとかなり真っ当である。しかし、そうした追求をするほどに、“ミニバン風味”が強まっていく印象がなきにしもあらず。「吹っ切れのよさ」ではストリームの勝ち。
(荷室)……★★★★
サードシートは、シートバック前倒し操作と共にクッションが沈み込み、ワンタッチで凹凸のない荷室フロアができ上がる仕組み。2列シートが本来の姿と考えると、つまり通常は3列目を折り畳んでおくと考えれば、荷物用のスペースは十分だ。フロアボード下のサブトランクも、使いでのあるボリューム。日本での一般的な使用法を考えると、絶対容量の大小より使い勝手のよさの方が嬉しい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
外見からは想像しにくいが、ハードウェア的には「プレミオ/アリオンがベース」というウィッシュ。パワーパックも両モデルから譲り受けたもの。すなわち、4気筒DOHC16バルブ「1ZZ-FE」+4段ATの組み合わせだ。ちなみに、デビュー当初は1.8リッターユニットのみのラインナップだが、2リッターモデルが「2003年春ごろ発売予定」とアナウンスされる。
決してスポーティに走りまわるとはいかないが、謳い文句である“軽快な走り”の印象はそれなりにある。FWD仕様の場合、(プレミオ/アリオンと較べた)重量増による加速の劣化もさほど実感できない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
率直にいうと、「悪くはないが味が無い」。これがぼくの抱いたウィッシュのフットワークの印象である。すくなくとも、ストリームがデビューした時に抱いた、3列シート車の常識を覆す感動的なまでにスポーティなテイストを、このクルマから感じ取ることはできなかった。FWDモデルのブレーキは、ペダルタッチ、効き味ともに優秀。ちなみに、重量が増す4WD仕様はリアブレーキがドラムからディスクになるが、それでも「平均レベル」に留まる。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2003年2月17日から19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:4718km
タイヤ:(前)195/65R15(後)同じ
オプション装備:SRSサイドエアバッグ(フロントシート)&SRSカーテンシールドエアバッグ(フロント・セカンドシート)+盗難防止システム(エンジンイモビライザーシステム)=9.5万円/DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション(6.5型液晶ワイドマルチディスプレイ+MD/CD一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ+6スピーカー)+ガラスアンテナ(ダイバシティ・TV用)バックガイドモニター&ブラインドコーナーモニター+ステアリングスイッチ=30.4万円/ラジオレス+4スピーカー=−2.7万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:226.2km
使用燃料:27.8リッター
参考燃費:8.1km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】
2026.10.19試乗記トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。 -
NEW
フェラーリが「日本上陸60周年」 記念祭から“ブランドの今とこれから”を読む
2026.10.19デイリーコラム「日本上陸60周年」を祝うファン感謝イベントを開催したフェラーリ。自動車界に燦然と輝くハイブランドは、いま何を目指しどこに行こうとしているのか? 経営トップの談話を交えながら推察してみよう。 -
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。






























