ポルシェ・カイエンS/ターボ(6AT/6AT)【海外試乗記】
1級スポーツカーレベル 2003.01.21 試乗記 ポルシェ・カイエンS/ターボ(6AT/6AT) ……860.0/1250.0万円 北米で、乗用車をも凌駕する勢いを見せるSUVマーケット。アメリカ市場にメーカーとしての命運を握られるポルシェは、その動きを座視できない。同社初のSUVに、自動車ジャーナリスト、河村康彦が乗った。スペインは、へレスからの報告。生まれるべくして
このクルマの投入によって自身の生産規模を一挙にこれまでの1.5倍に引き上げる−−そんな壮大な計画のもと、まっさらの新工場を建設し(F1レースが開催できるという規格をもつテストコースまで併設!)、初めてのSUV市場に挑んだのが、ポルシェ話題のニューモデル「カイエン」だ。
スペイン南部の街ヘレスを起点に開催されたカイエンの国際プレス試乗会は、「これまでのポルシェ車を必要としているヒトなど、実はドコにもいなかった!」という刺激的なフレーズからスタートした。その意味するところは、「4ドアボディで5シーターのカイエンは、実用性に富んだ“ファーストカー”として使える初めてのポルシェ」ということである。
同社の調査では、既存のポルシェオーナーは平均で3台のクルマを所有し、特にアメリカの場合は、うち1台がSUVであること。そして彼らがレジャーや買い物に出かける際は、SUVを最もよく使うというデータをつかんだという。
というわけで、ポルシェ社が「911」「ボクスター」に次ぐ“3つめのモデルレンジ”をSUVにしたのは、当然至極ということになる。カイエンは、生まれるべくして生まれた最新のポルシェなのだ。
「0-100km/h」=5.6秒!
モーターショーの舞台から飛び出し、南スペインの暖かい日差しを浴びたカイエンは、1.9mを超える全幅、1.7mに達する全高という寸法諸元表から想像したよりコンパクトに感じられた。が、実はそんな印象が“錯覚”に過ぎないことは、試乗車にオプション装着された19インチホイールが、まるで16か17インチ程度にしか見えないということからすぐに見破れた。“かど丸”で、どことなく撫で肩デザインのエクステリアのせいで、カイエンは、実際以上に小さく見えるのである。
一方のインテリアはゴージャスそのものだ。メーターパネルやステアリングホイールのデザインに「ポルシェらしさ」が感じられはするものの、正直なところ、それ以外の雰囲気に911やボクスターとの共通項をイメージすることは、ぼくにはできなかった。本格SUVらしくアイポイントが高く、それゆえに見下ろし感の強い視界の広がりも、やはり“らしさ”を小さくしている大きな要素であろう。各部の仕上がりレベルのほどは十二分な高さ。この点では、ボクスターのデビュー当初に感じた、「質感がちょっと物足りない」といった印象はまったくない。
「S」と「ターボ」、2種類のモデルが用意されるカイエンだが、SUVといいながら、いずれもポルシェの作品に相応しいスピード性能の持ち主である。それも、特筆ものの。
新開発の4.5リッターV8DOHCは、ノンターボの340ps「S」用ユニットでも、カイエンのボディをちょっとアメリカンな豪快サウンドとともに100km/hまで7.2秒で加速させる。ツインターボチャージャーを備えた450psの「ターボ」用ともなれば、そのタイム5.6秒と、まさに世界の一級スポーツカーレベル。ちなみに、現在のところこのクルマに組み合わされるトランスミッションは「ティプトロニックS」と呼ばれる6速トルコンATのみ。ただし「S」に限っては、2003年中に、6段MTバージョンが追加される予定という。
エアサスペンションがおすすめ
19インチのオンロード用ハイグリップタイヤを履いたカイエンは、ハンドリングも豪快だった。基本的にはフロントに38%、リアに62%という不等トルク配分を行う電子制御の多板クラッチ式4WDシステムにより、重量級SUVとしてはアンダーステアが例外的に弱い。
それなりのシューズに履き換えてオフロードに踏み入れる。電子的に挙動を安定させるPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)のスイッチをカットオフしてアクセルペダルを踏み込めば、ターンインの時点からテールアウトの姿勢に持ち込んだアクティブなドライビングを楽しめることも確認した。
カイエンのサスペンションは、メカ仕様とエア仕様の2種類。乗り心地とのバランスを考えると、エアサスペンションがおすすめだ。「ターボ」には標準装備、「S」にはオプション設定される。
メカニカルバージョンは、ポルシェらしい走りの具現化を意識したためか、速度域にかかわらず全般的に突き上げ感が強め。残念ながら「どのモデルに乗っても望外の乗り心地が提供される」という“ポルシェ車の文法”からは、少々はずれるように感じられた。
(文=河村康彦/写真=小川義文/2003年1月)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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