メルセデス・ベンツSL500【試乗記】
究極のオヤジ殺し 2003.01.05 試乗記 メルセデス・ベンツSL500 「Roadster and coupe in one thanks to vario-roof」と謳われるブランニューSL。5リッターV8を積む2座オープンSL500に、イタリアのフィレンツェで清水和夫が乗った。 会員コンテンツ「Contributions」より再録。開閉16秒のバリオルーフ
BMW7シリーズの試乗会を終えると、一路イタリアのフィレンツェに向かった。メルセデスベンツ新SLシリーズをテストするためである。
シエナの街に近いトスカーナ地方のワインディングは狭く荒れている。SLのテストドライブでは久しぶりに徳大寺有恒さんとペアを組んだ。徳さんからはこの伝統的なSLに関して色々な話が聞けた。さらに贅沢なことに、プレス向け試乗会場には1954年の300SLクーペ(ガルウイング)、300SLロードスターが用意され自由に試乗できたのだ。
新型SLのボディサイズは、全長×全幅×全高=4535×1815×1298mm、ホイールベース2560mm。先代のSLと比較して全長35mm、全幅5mm、全高が3mm(ハードトップと比較)大きくなり、ホイールベースは45mm長くなった。スリップ時に各ホイールのブレーキをコントロールするESP(エレクトリックスタビリティプログラム)や、ブレーキマネージメントをコンピューターが行うSBC(センソトロニックブレーキコントロール)などを搭載する。2001年9月のフランクフルトモーターショーで国際的にお披露目された、12年ぶりのニューモデルである。
新型SLのハイライトの一つは、バリオルーフと呼ばれる電動ハードトップだ。わずか16秒で開閉されるから、初代バリオルーフのSLK(25秒)よりも、トヨタのソアラ(25秒)よりも速い。
試乗会のスタート場所はフィレンツェの市街の中心であったので、はじめから荒れた石畳の路面に出くわした。「メルセデスは相当自信を持っているのですね」と徳さんに話しかける。しっかりしたボディが印象的だった。
エンジンのスタートボタンはシフトレバーの頭に付いているのだ。インテリアは、ナビもオーディオも最高級品が揃う。シートはどんな体型のドライバーにもフィットするフルサポートが備わり、さらに電動マッサージまでついた豪華なものだ。この装備は究極のオヤジ殺しだとおもった。
路面の凹凸が消えた
5リッターV8(306ps/5600rpm、46.9kgm/2700から4200rpm)は、メルセデスにしては驚くほどエンジンのサウンドがスポーティである。アクセルを踏む込むと低めのエキゾーストサウンドが聞こえてくる。メルセデスが独自開発した5ATとの組み合わせは、いつもながらまったくすばらしいものだ。変速ショックもなく、スムースにギアがつながる。シフトのタッチもステアリングの手応えも軽く、新型SLのエレガントな走りにマッチしている。
「ABC(アクティブボディコントロール)」と呼ばれるアクティブサスペンションシステムは、すでにCLやSクラスに採用されているが、SLではさらに進化した。「コンフォート」モードも用意されるが、平均的な路面では「スポーツモード」で快適で、引き締まったサスペンションという印象だ。乗り心地はすべての道がビロードの絨毯がひかれたようにスムーズ。これはBMWの7シリーズと同じような印象であった。いままでそこにあった、路面の凹凸が消えているのだ。
もう少しスパイスを
いよいよ本格的なワインディングにさしかかる。二人は延々と100キロも続くロングワインディングコースをなぜか選んでしまった。途中で雨が降ってくる。路面は落ち葉で滑りやすい。「徳さん、本当にみんなこのコースを走っているのですかね?」と不安になるが、返事はない。コーナーを少し攻め込む。ロールはほとんどない。さらにコーナーを激しく攻めると……。
一度だけコーナーの深さを読み間違え、オーバースピードで入ってしまった。「徳さんごめん……!」
この危機を救ったのは新開発のセンソトロニックSBC(ブレーキバイワイヤー)と、ESPであった。これはブレーキペダルの踏力ほか、車輪速度、ステアリング角度、エンジンやトランスミッションの情報などを、それぞれのセンサーから得てブレーキの"きき"をコントロールするもの。それも車輪ごとに、である。
試乗を終えるとみんなでSL談義となった。最高の乗り心地とハンドリングであることに異論はない。でも、個人的にはもう少しスパイスを効かせて欲しかった。この意見には小林彰太郎さんも賛同した。
メルセデスは、「清水さん、次はAMG SL55にのって見てください。ポルシェのGT2と勝負できますよ」と自信ありげであった。
(文=清水和夫/写真=ダイムラー・クライスラー/2001年10月29日)

清水 和夫
-
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.9.2 BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
北米産の800万円級SUV「トヨタ・ハイランダー」「日産ムラーノ」「ホンダ・パスポート」で一番“買い”なのはどれか?
2026.9.4デイリーコラム特例により国内導入されることになった北米生産のジャパニーズSUVは、3車種ともにサイズと価格帯が接近している。では、そのなかで最も“買い”なのは? それぞれの仕様を見比べてみた。 -
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。































