ダイハツ・ミラアヴィL 2WDV/ミラV(4AT/5MT)【試乗記】
背の低いムーヴになったわけ 2002.12.26 試乗記 ダイハツ・ミラアヴィL 2WDV/ミラV(4AT/5MT) ……94.0/92.0万円 「軽とは思えない!」「小型車を超えた!!」といった声が試乗会場に溢れたダイハツの新型ムーヴ。そのプラットフォームを使って、かつてのトップセラー「ミラ」がモデルチェンジを果たした。ミラとミラアヴィに、『webCG』記者が乗った。ユーザ年齢の引き下げ
1995年に「ダイハツ・ミラ」の派生車種として初代「ムーヴ」が登場したとき、7年後に新型ミラの試乗報告を書くにあたって、“背の低いムーヴ”と説明することになろうとは露ほども思わなんだ。いまや両者の販売台数は、ムーヴ:ミラ=6:4と主客逆転しているのである。
2002年12月20日に発表された6代目ミラは、2ヶ月ほど先行して市場にリリースされたムーヴと共通の、まったく新しいプラットフォームを使う。先代より30mm延長された2390mのホイールベースに、「ミラのDNAである広々空間&小粋なスタイル」(プレス資料)な「セミトールボディ」を載せる。「お洒落で活動的なミセス」向けのミラに、「知的でアクティブな若い女性」をターゲットとしたミラAVY(アヴィ)をラインナップに加えての登場である。
ミラと顔つきを変えたニューモデル「アヴィ」は、高齢化したユーザー年齢を引き下げるための戦略モデル。3代目までは30代だったミラオーナーは、クルマといっしょに齢を重ね、5代目には40代前半に上昇していたという。“Stylish Dynamism”をデザインテーマにしたAVYこと「Attractive&Vivid mini for Ypurself」は、大きな縦型ヘッドランプをもつ個性的なフェイスと、左右のリアコンビランプをルーフエンドごしにつなぐハイマウントストップランプで、ヤングなレディにアピールしようというのだ。
余談だが、キリリとピラーが立った四角いキャビンをもつ旧型ミラは、個人的には“現代のMINI”と評したいほど真っ当なコンパクトカーとして大変好ましく思っていたのだが、世間の評価は「保守的にすぎる」ということだったらしい。もっとも、そのおかげで「ミラジーノ」といういわゆる“レトロカー”が無理なく生み出され、モデル末期には、ノーマルミラに匹敵する登録台数を誇った。人気の高さをうけ、新型デビュー後もミラジーノは販売を継続し、当面、ミラ全体のなかで2割を占める、とダイハツは予想する。
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オドロキの割り切り
ミラアヴィのベーシックグレード「L」に乗る。アヴィには0.66リッター直3ツインカムのNA(自然吸気:58ps、6.5kgm)と同ターボ(64ps、10.5kgm)が用意され、Lに搭載されるのは前者。ボンネットのハイトが高いボリューム感豊かなフロント部は、なるほど、若い女性向けだ。なかに乗るヒトを、よりほっそり見せるに違いない。
車内の質感の高さには、ムーヴ試乗会のときに驚いてココロの準備ができていたが、ミラAVYのそれも、小型車に優るとも劣らない。ステアリングホイールこそムーヴと同意匠だが、インストゥルメントパネルの造形はミラ専用。
「DVVT」と呼ばれる可変バルブタイミング機構をもつ3シリンダーユニットは、平成12年基準排出ガス75%低減レベルを達成した、いわゆる3ツ星エンジンである。快活な性格で、動力性能は“必要十分”以上。4段ATとのマッチングもいい。
アヴィは車重770kgとムーヴより軽いため、乗り心地にコンパクトカーのネガが出やすいはずだが、千葉は木更津近辺の道を行くかぎり、むしろ重心が低いゆえの自然な挙動に好感。長くなったホイールベースの恩恵もあってか、ヒョコヒョコすることなく、しっかり走る。不満はない。
短い試乗時間の帰りにリアシートに座ってみて、たまげる。広い。膝前が30cm以上ある! 絶対的なサイズは軽自動車枠に縛られるから、後席の居住性はトランクスペースを浸食することで高められるわけだが、「この割り切りはリッパだ」と思った。
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目玉はショボい
続いてニューミラの目玉グレード「V」を試乗する。マダム用……、じゃなくて、ミセス向けのミラに用意されるのは、おとなしいNAユニットのみ。「SOHC6バルブ(48ps、5.7kgm)」「DOHC12バルブ(58ps、6.5kgm)」ほか、試乗車の「V」には、「ガソリン車世界最高の低燃費を誇るトパーズDIエンジン」と謳われる新開発直噴ユニット(60ps、6.6kgm) が積まれる。これまた排ガス3ツ星エンジンで、アイドリングストップ機構とあわせ、カタログの燃費欄(10・15モード)には、なんと「30.5km/リッター」と記載される。
ところが、テスト車を見て「オヤオヤ……」と思った。92.0万円と、ミラのなかで最も高いグレードながら、3ドアボディに12インチの鉄チンホイール。無塗装のドアハンドルとドアミラー。サイドウィンドウの開閉は手動式で、トランスミッションは5段MTのみ。これでは売れまい。学術的興味(?)を満たすために、ステアリングホイールを握った。
ショボい内外装はともかく、フロアの低い位置から生える長いギアレバーを繰って走るのは楽しい。ミラVのパワーソースは、燃費指向エンジンながら、最高出力60ps/7600rpm、最大トルク6.6kgm/4000rpmと、発生回転数を上げることなく、通常のNAユニットより大きなアウトプットを発生する。高回転域まで回すと、なかなか勇ましい音を発して元気にボディをひっぱる。
赤信号でギアをニュートラルに入れ、クラッチペダルから足を離すと、一転、車内に静寂が訪れる。アイドリングが止まったのだ。信号が変わってクラッチを踏むと、「ブルン!」とエンジンが再始動。基本的に、「トヨタ・ヴィッツ」のエコパッケージ車と同じシステムである。
パーソナルユース用
新型ミラ/ミラアヴィの開発をとりまとめた製品企画部主査の福塚政弘次長にお話をうかがうことができた。福塚さんは、出足快調のムーヴも手がけられた。
さて、新型ミラを企画するにあたり、ユーザーの高齢化に危機感をおぼえた主査は、若い女性を対象にマーケット調査を行った結果……、
「オモシロイことがわかりました。女性にとっては、ナンバー(プレート)は黄色でも白でも関係ないんです」
−−「軽」かどうかは意識しない、と。
「軽自動車と普通乗用車の境がない、と申しましょうか。日産マーチが軽だと思っている方が6割、一方、ムーヴが軽じゃないと考えているヒトが3割もいらっしゃる」
−−法制上のくくりは関係なく、コンパクトカーはコンパクトカーということですね。女性は本質を見極めますから。
「その通りです」
そのため、新型ミラは「軽」ではなく、国産、輸入車の小型車をベンチマークに開発を進めたという。高まる要求を応えながら価格を抑えるため、ムーヴ/ミラあわせて年30万台というスケールメリットを最大限に活かし、また、パーツのモジュール化によって、生産工程の効率化を押し進めることでコストの圧縮を図った。
後席空間に犠牲にされたトランクスペースに関しては、「ミラユーザーはほとんど荷室は使わない。日常での買い物袋や手荷物は、助手席や後席に置くから」だそうです。リアシートにスライド機構が付かないのも「必要ないから」。まことに明快だ。荷物を積みたい消費者はムーヴを購入していただき、「ミラはよりパーソナルユースのクルマです」と、主査は説明してくださった。ありがとうございます。
わが国のコンパクトカーユーザーにおいては、個人用として使うより、荷物を積みたいヒトの方が多いわけである。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2002年12月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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