スズキ・ワゴンR RR-SWT(4AT)【試乗記】
スポーティ派より…… 2002.12.18 試乗記 スズキ・ワゴンR RR-SWT(4AT) ……146.6万円 64psエンジンを積む、スズキ「ワゴンR」のスポーティモデル「ワゴンR RR-SWT」。後席スライドなどが加わったマイナーチェンジ版に、webCG記者が試乗した。 拡大 |
拡大 |
脅かされる牙城
「軽NO.1のスズキ」を代表する「ワゴンR」。現行モデルの2代目は、1998年のフルモデルチェンジから4年経ち、今ではモデル末期といわれる。それでも平成大不況のなか、2002年9月は1万1304台、10月は1万2355台と、依然1万台超の販売実績をほこる。
しかし、近頃は後発のライバルが、ワゴンRの牙城を脅かしつつある。
9月の販売台数ランキングで、実はワゴンRは3位。2位は追加された上級モデル「eKスポーツ」の後押しを受けた三菱「eKワゴン」(1万8022台)、1位は8月にマイナーチェンジしたホンダ「ライフ」(1万8483台)だった。10月はトップに返り咲いたものの、ライバル中のライバルであるダイハツ「ムーヴ」が、10月15日にプラットフォームを一新するフルモデルチェンジを行い、1万8468台を売り上げて11月のトップ。ワゴンRは2位にランクインするも1万2626台と、約6000台の差をつけられた。
ワゴンR単体での販売は、他社のニューモデルに王座を譲り渡したが、メーカー全体では僅差になったとはいえ、スズキがトップを守る。ワゴンRベースの「MRワゴン」は、日産「MOCO」のOEM供給と合わせ、1万台/月以上を販売。MRワゴンベースの「アルト ラパン」も、5000台/月以上を売り上げる。軽NO.1のスズキを支えるのは、やはりワゴンRなのだ。
そのワゴンRに、シリーズで4回目となるマイナーチェンジが2002年9月に施された。細部の使い勝手を煮詰め、商品性を向上させることが目的で、不景気で上級車種から軽への乗り換えユーザーが増加したことや、車両本体価格が拮抗するコンパクトカー人気の高まりに対応する。
目玉はスライドシート
マイナーチェンジの目玉は、リアシートが105mmスライドするようになったこと。「MRワゴン」に採用された、リアサスペンションのダンパーを斜め後方に向かって取り付ける手法を採用し、スライドスペースを稼いだ。後席を一番後ろへもっていけば、ニースペースは従来より90mm拡大される。
さらに、ヘッドレストを抜かないでも、バックレスト上部のレバーを引いて前に倒すだけでヘッドレストがおじぎするように折れ、座面が連動して下がり、荷室をフラットに拡大できる機構が備わった。運転席に、ダイヤル式のシートリフターが備わったことも新しい。そのほか、インパネデザインを変更し、オーディオを上部に移動して操作性を向上したり、メーターパネルのデザインを変更するとともに燃料残量警告灯を備えるなど、細かい使い勝手の向上が図られた。
テスト車は、0.66リッター直3DOHCターボ(64ps/6500rpm、10.8kgm/3500rpm)を搭載し、スプリングを切りつめて10mmローダウンしたスポーティバージョン、「ワゴンR RR-SWT」。ノーマルワゴンRのターボモデルは最高出力60psだが、RRシリーズは軽最高の64ps。ブラインドのような大きなグリルと、黒い縁取りのヘッドライトが厳めしい。SWTは、ディスチャージヘッドランプや、インテリアにDSP付きMD/CDプレーヤー、本革巻ステアリングホイールなどを奢った豪華版だ。
ちなみに「SWT」とは、2002年12月16日に、独立会社としての設立が発表された、エアロパーツなどのカスタム用品や、「フォーミュラースズキ」シリーズなどレース車両の販売を行う専門店「SUZUKI WORKS TECHNO」のこと。SWTの存在はあまり知られていないので、知名度を高める目的で車名に名前がつけられたという。
ドッカンターボ
角度によって青や紫に変化する、新色「マジョーラミディアムシルバー」のRR-SWTに乗る。エクステリアにメッキで縁取られたグリルが採用された。
インテリアはボディ形状を反映して四角く、バックドア内側上部のつり下げ式スピーカーが、部屋のような雰囲気をかもしだす。トップグレードらしく、デジタルサラウンドプロセッサー付きのMD/CDオーディオやフルオートエアコンなど、快適装備が満載だ。
前後シートはベンチシートで、あたりが柔らかく座り心地はいい。スライド機構によって膝前に90mm余裕のできた後席は、前席よりヒップポイントは高く設定され、たっぷりのヘッドクリアランスと相まって窮屈な思いはしない。スライドで左右を少しズラせば、大人が並んで座っても肩がぶつかることもないし、前にもっていけば荷室が広くなる。スライド機構はなにかと便利だ。
マイナーチェンジでは、ノーマル(?)ワゴンRに、中低速トルクを重視したマイルドな「Mターボ」エンジンを積む「N-1」グレードが追加された。一方、RRのエンジンは3500rpmを超えると本領を発揮する、昔ながら(?)のドッカンターボ。最大トルク10.8kgm、最高出力64psだから、軽自動車として動力性能も高いが、それよりも、ターボが利いてからの“速さ感”が楽しい。
ただし、同じスポーツモデルでも、レカロ製と共同開発したバケットシートやLSDを装備する、「Keiワークス」の本気っぷりとは一線を画す。そもそもベンチシートでは、本気でコーナリングした際に体を保持できない。実用車のワゴンRに64psエンジンを積み、モータースポーツとカスタマイズの専門店「SWT」の名を冠したRR-SWTは、スポーツの記号性を与えられた実用車。スポーティ派よりもむしろ、カスタム&ドレスアップユーザーにアピールするクルマなのかもしれない。
(文=webCGオオサワ/写真=難波ケンジ/2002年10月)

大澤 俊博
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】 2025.11.25 インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――ロータス・エメヤR編
2025.12.3webCG Movies往年のピュアスポーツカーとはまるでイメージの異なる、新生ロータスの意欲作「エメヤR」。電動化時代のハイパフォーマンスモデルを、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんはどう見るのか、動画でリポートします。 -
NEW
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.3デイリーコラムトヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。 -
NEW
第94回:ジャパンモビリティショー大総括!(その3) ―刮目せよ! これが日本のカーデザインの最前線だ―
2025.12.3カーデザイン曼荼羅100万人以上の来場者を集め、晴れやかに終幕した「ジャパンモビリティショー2025」。しかし、ショーの本質である“展示”そのものを観察すると、これは本当に成功だったのか? カーデザインの識者とともに、モビリティーの祭典を(3回目にしてホントに)総括する! -
NEW
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】
2025.12.3試乗記「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。 -
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】
2025.12.2試乗記「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。 -
4WDという駆動方式は、雪道以外でも意味がある?
2025.12.2あの多田哲哉のクルマQ&A新車では、高性能車を中心に4WDの比率が高まっているようだが、実際のところ、雪道をはじめとする低μ路以外での4WDのメリットとは何か? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。









































