日産フェアレディZバージョンS(6MT)【試乗記】
スピリットは受け継がれた 2002.12.11 試乗記 日産フェアレディZバージョンS(6MT) ……364.0万円 熱狂的歓迎を受けて登場した新型フェアレディZ。“手が届くスポーツカー”という初代の精神に立ち返った5代目はまた、ポルシェ・ボクスターをライバルとして開発されともいわれる。その実力はどうなのか? 自動車ジャーナリストの笹目二朗が解析する。ニュー「Z」の概要
2002年7月30日、「日産フェアレディZ」の5代目が登場した。世界に通用する「Z」の記号は、一時の沈黙の後、復活を果たした。量産メーカーにとってのスポーツカーは、営業収支のうえからは厳しいかもしれないが、企業イメージの高揚という面では、決してマイナスにならない。「Z」の場合は特に、熱烈なファンからの期待が高かった。よって異常なまでの、歓迎ムードのなかでの再出発となった。
ボディは1種類。外寸は、全長=4310mm、全幅=1815mm、全高=1315mm。ホイールベース=2650mm。先代にはオケージョナルな後席をもつ「2+2」のロングホイールベース版もあったが、新型は純粋な2シーターのみ。グレードは4種。ベースモデルは単に「フェアレディZ」と呼ばれ、革内装となり、オーディオなど追加装備の多い「バージョンT」、18インチタイヤを履き、より高い走行性を求めた「バージョンS」、両方をミックスした革内装のハード版「バージョンST」がラインナップする。ボディカラーは全8色が用意される。
搭載されるエンジンは、世界共通スペックの3.5リッターV6DOHCのみ。この「VQ」型エンジンは、「スカイライン」や「エルグランド」、そしてルノー「ヴェルサティス」などにも使われる。すでに定評を得たユニットであるが、新型Zに積まれるにあたって専用チューンを受け、280ps/6200rpmの最高出力と、37.0kgm/4800rpmの最大トルクを発生する。
ギアボックスは、自社製6段マニュアルとJATCO製5段ATの2種類。5ATはマニュアルモード付きで、各段は完全固定、つまりレブリミットに達しても、勝手にシフトアップすることがない。ATながら、トルコンのロックアップと相まって、ダイレクトなフィールをもつトランスミッションだ。標準車とバージョンTに用意される。
サスペンションには鍛造アルミパーツがふんだんに使用され、バネ下重量の軽減が図られた。形式は前後とも「マルチリンク」となっているが、フロントは「ダブルウィッシュボーン」と「ストラット」の合成。リアは後退角のつけられたアッパーアームを中心に、横方向を担うトランスバースアームやトーコントロールアームなど、複雑に干渉する動きを通して、キャンバーやトーの変化を巧妙に使う。
ブレーキは、バージョンSとSTには、イタリアBrembo社の対向ピストンを持つキャリパーと大径ディスクが奢られる。ちなみに両グレードのリアトレッドは、ベーシックモデルより5mm広い。
タイヤは前後異なるサイズが採用され、標準車とTは、前225/50R17、後235/50R17。バージョンSとSTは、前225/45R18、後245/45R18となる。
車両重量は1430ー1450kgの間にあり、ATはMTより10kg重い。
価格は300.0ー360.0万円と、内容のわりに安価な設定といえる。
体力をもって制する
ガシッとした強固な剛性感は、ボディだけでなく、サスペンション系にも及ぶ。ようやく欧州車並になってきたと思う。ステアリング系の剛性も日本車の標準を抜く……ということで、とりあえず走りだした第一印象は上々。
乗り心地は硬めではあるが、姿勢変化は少ない方でフラット感はまずまず。欲をいえば、もうすこししっとりとした感触が欲しい。バネ系の反発力に対してダンピングが足りない。この辺は、想定したライバル車がドイツ車ということで、そうした味付けを開発者が好みとしているからかも知れない。
たとえばフェラーリとか、アルファロメオなどの、イタリアの高性能車と比較すると、あのしっとりした接地感がない。つまりソフトなバネに伸び側を固めたダンパーの醸す、油圧で制御されたゆっくり動く独特の作動感とは違い、よくいえば活発でドライ、遠慮していっても直接的なバネの動きを感じる。フェラーリやアルファロメオでは、ダンパーの減衰力が、ロールの揺り返しなどで操縦安定性の面での安心感を与えてくれるのだが、ニューフェアレディでは、その感覚が希薄だ。
テストコース内での印象はまたすこし異なる。路面入力の大きい、波状のコーナーでの接地性に、今度のZの性格が象徴されている。
それは一般路上での印象に準じ、やはりクルマ自身が押さえつける接地感に乏しい。しかし腕力に自信のある人ならばステアリングでねじ伏せる感覚で対処できる。つまりスポーツカーといえば、手足を使って格闘するようなイメージがあり、まさに「体力をもって制する」、そんな気持ちで乗るとオモシロサを実感する。初代の「S30」はノンパワーのステアリングであり、カウンターステアも一苦労だったが、そうした操作力のレベルは各段に軽減されたものの、似通ったスポーツカー・スピリットは受け継がれた。それにしてもパワーステアリングはありがたい。
対等以上の実力
剛性感に関しては、ピラーやサイドシルなどの骨格は丈夫だが、サスペンション取り付け部など、足元やフロアの剛性は、上がったとはいえ、まだ物足りない。この辺もドイツ車的な気がする。
一般道とテストコース内では試せる速度帯が違う。エンジンは特別なヤマを感じさせる盛り上がりはないものの、最近のターボチューンのような意図的にカットされたフラットトルクとは異なり、まわしたなりの穏やかな丘がある。自然給気エンジンの即応レスポンスは、この大排気量をもってヨシとし、ライトウェイト・スポーツカーとはまた違う豪快さが味わえる。
6段MTの、2、3、4速がクロースしたトランスミッションも、実にスポーツカーらしい。速度計など無視したドライビングでは、タコメーターの針の動きに注目することになる。スロットルの開度をそれほど変えることなく、速度変化は、ブレーキとギアシフトに頼る運転こそ、スポーツカー・ドライビングの神髄である、ということを思い出させてくれる。
ここでやはり3.5リッターV6を積んだ「スカイライン350GT」との比較を頭のなかで試みると……。
スカイラインは「理想的FR挙動養成ギブス」をはめられて、ややギスギスした動きを示すものの、ダンピングに関してはZよりすこし強力で、限界付近で反発を買うようなことはなさそう。紳士的だ。それに対してZは、より奔放活発な豪傑といえる。
結論。新型Zは、量産型スポーツカーの利点である、内容に対する価格的な魅力もさることながら、より高価な外国製スポーツカーに対しても、対等以上の実力をもっていると思う。
(文=笹目二朗/写真=清水健太/2002年10月)

笹目 二朗
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