三菱コルト 1.3/1.5リッター(CVT/CVT)【試乗記】
チャームはドコに? 2002.11.16 試乗記 三菱コルト 1.3/1.5リッター(CVT/CVT) 2002年11月11日に発表された三菱のニューコンパクト“まじめまじめまじめ”コルト。スリーダイヤモンド入魂の最新モデルを、webCG記者が北海道は十勝で試乗した。
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小顔系
北海道は帯広空港からクルマで約30分、三菱自動車の十勝研究所は、1020ヘクタールもの面積をもつ施設である。10kmの高速周回路をはじめ、3kmのハンドリングコース、1.5kmの高速ブレーキ路といった幾多の試験路が設置される。秋空が晴れわたった北の地で、2002年11月11日の発表に先立ち、三菱の最新モデル「コルト」に乗る機会を得た。
企業としての存続がかかる、とささやかれるスリーダイヤモンドのコンパクトカーは、1962年の「コルト600」以来、70年代の「コルトギャランGTO」まで使われた懐かしい名前を引っ張り出しての登場となった。件の不祥事によって失墜した企業イメージとユーザー間の信頼を、過去の遺産を活用して何とか回復したいからだろう。キャッチフレーズは、“まじめまじめまじめコルト”。まじめの3乗である。
失敗が許されないニューコンパクトは、スタイル面でも手堅くまとめられた。ダイムラークライスラーから来たデザイナー、オリビエ・ブーレイが監修したそれは、「ワンモーションフォルム」と呼ばれるシンプルな造形をとる。サイドから見て、ボンネット、Aピラー、ルーフへと破綻なく続くラインが最大のウリだ。フロントに関しては、ヘッドランプを左右に張り出した顔を与えてボディを大きく見せたがる日本車のなかにあって、Aピラーからのラインがランプ外側を縁取りする小顔系(?)が珍しい。
三菱コルトは、国内では2002年11月16日に発売される。2年後の2004年からは、プラットフォームを共用するスマートとのオランダでの生産が立ち上がり、欧州での販売が開始されはずだ。
エンジニアリングより生活要件
コルトのボディサイズは、全長×全幅×全高=3870(+40)×1680(+5)×1550(+25)mm(カッコ内は、ホンダ・フィットとの比較)。ブランニューのプラットフォームは、2500(+50)mmという長いホイールベースをもつ。コンパクトカーで大きなキャビンを得るための常道である。フロアに、フロントバンパーからリアエンドまで、フロア左右を縦断する骨組み「ストレートフレーム」をもつのが特徴で、いうまでもなく、衝突安全性の向上を目的とする。衝突エネルギー吸収の面で特に重要なエンジンルーム内のメンバー(骨格)は、前方が「8角」断面、後方が「8の字」断面という凝ったモノだ。
搭載されるエンジンは、1.3リッター(90ps、12.3rpm)と1.5リッター(98ps、13.5rpm)の2種類。いずれも連続可変バルブタイミング機構を備えた直列4気筒DOHC16バルブの「MIVEC」エンジンである。トランスミッションには、どちらのパワーソースにも、基本コンポーネンツを「ランサーセディア」と共用する無段変速機「INVECS-III CVT」が使われる。従来はエンジンと別個にコントロールされていたが、スロットルバルブの電制化にあたり、動力系が統合制御できるようになったのがジマンだ。駆動方式は、デビュー時はFF(前輪駆動)のみだが、4WDモデルのラインナップ追加が予定される。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアはコンベンショナルなトーションビーム式となった。三菱版ハイトワゴンたる「ミラージュディンゴ」では、後ろ脚にマルチリンクの左右独立式を採っていたが、新型ではエンジニアリングより荷室拡大の生活要件が優先されたのだろう。コイルとダンパーは別体となり、ラゲッジルームへの侵入が最小限に抑えられた。
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意を払った室内
“日独まじめなコンパクト”コルトが投入される市場は、「トヨタ・ヴィッツ」「ホンダ・フィット」「日産マーチ」「マツダ・デミオ」……と、底なしの不況にあえぐ平成ニッポンにおいて、最も競争が厳しいカテゴリーである。最後発の三菱自動車は、CFC(Customer Free Choice)と呼ばれる、ユーザーサイドに立った受注システムで顧客の獲得を試みる。
“素のコルト”から、内外装、エンジン、ホイール、シート、オーディオ類……と、お客様に必要な装備を自由に選んでいただく、というのがコンセプト。しかしそれではあまりに煩雑に過ぎる、と思われる方のために、推奨パッケージとして「エレガント」「カジュアル」「スポーツX」の3種類が用意され、それぞれさらにオプションを追加したり、逆に要らない装備を省くことができる。クルマのハードウェアのみならず、売り方といったソフト面からも差別化を狙ったわけだ。
内装にはブルー基調の「クール」とブラウンをベースにした「ウォーム」が用意される。個人的には、「ウォーム仕様は出色のデキ」と感じた。マットな(艶消し)木目調パネルが上品で、全体に明るくあか抜けたもの。色調、質感に意を払ったのがよく伝わる室内である。
シートは前後席とも「ベンチ風」か「セパレート」を選べる。前席は、どちらのタイプもクッションがしっかりしていて、座り心地はいい。シートアレンジは、昨今の日本車の例に漏れず豊富だ。セパレート式のリアシートを選んだ場合、左右別々のスライドはもちろん、フロントシートの背もたれ後ろに跳ね上げて、荷室を拡大することもできる。
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ウソはない
高速周回路とハンドリングコースで各グレードに乗ってみたところ、1.3、1.5リッターと動力性能に不満はなかった。せっかちなリポーターの悪癖で、スロットルを開け気味に走ると、CVTと組み合わされたエンジンのノイズが少々高まるが、街なかで穏やかに乗る分には問題ないだろう。ポジションには、ノーマルの「D」と、より高めの回転域を使うスポーツモードたる「Ds」が備わる。
足まわりは安定方向に設定されており、路面の荒れたタイトコーナーをハードに走って後輪が浮くようなことがあっても、「ドコ行っちゃうの?」といった不安な挙動を示すことはなかった。試験場という特殊な試乗会場だったので断定はできないが、おおむね穏やかな乗り心地だ。「フィットよりモーターの容量が大きい」と担当エンジニアが胸を張る電動パワステは、なるほど自然でフィールがいい。
“まじめまじめまじめコルト”のステアリングホイールを握って、「敏」か「鈍」か?と問われたら「鈍」である。パーツごとに個別にチェックすると、たしかに都度「まじめまじめまじめ」と思うのだけれど、リポーターの個人的嗜好を前面に押し出すなら、“コンパクトカーの愛嬌”といったファクターが希薄なのが寂しい。運転しながら、ずっと「コルトのチャームポイントは?」と探し続けたが、ついに納得できる答を見つけられなかった。小型車は、各部のデキがよくなるとツマらなくなるのかしらん?
結論。キャッチフレーズにウソはない。このクルマをアピールしようとすると、たしかに「まじめまじめまじめ」というフレーズしか思い浮かばない。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2002年10月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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