ボルボXC90 2.5T AWD/T6 AWD(4AT/4AT)【海外試乗記】
SUVにみるボルボらしさ 2002.11.01 試乗記 ボルボXC90 2.5T AWD/T6 AWD(5AT/4AT) 2002年のデトロイトショーでアメリカに、同年のジュネーブショーでヨーロッパに紹介されたボルボ初の本格SUV「XC90」。自動車ジャーナリストの河村康彦が、カリフォルニアはサンフランシスコから試乗報告!!
拡大
|
拡大
|
ちょっと不安な点
ボルボ最大のサルーン「S80」のプラットフォームをベースに誕生した、同社初の本格SUVが「XC90」。S80より69mm長い2859mmのホイールベースに載せられるボディは、全長×全幅×全高=4798×1898×1784mm。メインマーケットである北米にあわせて、車体の大きさも“アメリカン”だ。ボルボがライバルと見立てるBMWの「X5」と較べると、全長は130mmほど長く、全幅は同等で、全高は80mmばかり高い。XC90の場合、「フロントガラスをほとんどのSUVより前方に配置する“コクピット・フォワード”デザインを採用することで、3列シートの7人乗りを実現させた」というのが大きなウリ。ボルボ全車に共通するエンジン横置きレイアウトが、「厳しい独自の安全基準を犠牲にすることなく、より自由度の高い設計を可能にした」と、アピールは続く。
フロントマスクやリアビューに、最新のボルボ車らしい強い記号性をもたせ、そのうえで本格SUVならではの“ワイルド性”をも主張をするという、なかなか好ましい外観の持ち主。そんなXC90に乗り込んでみる。けっして楽々というわけにはいかないが、この種の“アメリカンSUV”としては、乗降性は優れている方だろう。
一方で「やっぱりな……」と思ってしまったのは、直近死角の大きさだ。小さなスラント角のまま高い位置に置かれたエンジンフードは、その前端部分にかなりの死角を作り出す。車線も広ければ駐車スペースもたっぷりとられ、コマゴマした運転操作など必要のないアメリカでなら問題ないかもしれないが、日本の使用条件に照らし合わせてみると、これは不便で不安な点になりそうだ。
ほかのボルボ車同様、“スカンジナビアン・テイスト”を強調するデザインの室内は、もちろん大人4人までは余裕の大きさ。しかし、いかな7人乗りとはいえ、売り物である3列目のシートでくつろごうというのはさすがに無理だ。それでも、大人が何とか実用的に座れる空間をキープしているのと、シートの格納作業がほとんどワンタッチで行えるのが優秀なポイント。2列目、3列目シートとも、バックレスを前に倒して、ラゲッジルームのフロアとほぼフラットにすることができるのだ。
拡大
|
拡大
|
基本的に“乗用車系”
XC90に搭載されるのは、S80から譲り受けた2.9リッター直6ツインターボ(268ps)と、「V70」「S60」用の2.4リッター直列5気筒をベースに「プラス100cc」のカンフル剤を加えた2.5リッター“ライトプレッシャー”ターボ(208ps)の2種類。実際にドライブしてみると、2トン級の車両重量には、やはり前者が相応な印象を受けた。2.5リッターではターボチャージャーへの依存度が高く、過給器が有効な効果を発しない領域では、少々“重ったるい”印象を否めなかったからだ。
一方2.9リッターは、加速力全般に余裕が生まれるのでトルクに不満はない。しかし、ATが4段なのがちょっと惜しい。2.5Tは5段ATなのだが……
フットワークテイストは、SUVゆえの大柄なシューズを履くこともあって、ばね下の動きに重さが伴う以外は、基本的に“乗用車系”といえる。ただ、再びBMW X5あたりと較べると、ステアリングの「シャープさ」「正確度」がやや劣る感じは,、これまた否めない。
安全フェチ
XC90で「ボルボならでは」と思えるのが、運動性能の面で独自の「転倒防止プログラム」を組み込んだところ。これは、ジャイロセンサーを用いて車両の動きから横転リスクを計算し、それが高いと判断されると「DSTC」に信号を送って故意にアンダーステア挙動を発生させるというもの。「DSTC」は横滑り防止システムで、そもそもクルマの挙動がオーバーステアやアンダーステアに陥った際に、4輪それぞれのブレーキを個別にコントロールして、それらをキャンセルさせる働きを担う。ボルボはそのメカニズムを利用して、転倒の危機が近づいた際には敢えてコーナリング能力を低下させ(つまりアンダーステアを発生させ)、ロールを減少させることを目論んだのだ。
さらにサードシート分までを含めたすべてのシートベルトに、衝突時にベルトを引っぱるプリテンショナー機構を装備するほか、頭部保護用のインフレータブルカーテンも3列目までをカバーする。ボルボの“安全フェチ”ぶりは、かくしてXC90でも見事に証明されたことになる。
(文=河村康彦/写真=ボルボカーズジャパン/2002年10月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。































