トヨタ・プリウスG(CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・プリウスG(CVT) 2002.10.02 試乗記 ……242.7万円 総合評価……★★★★★ニッポンの誇り(2002年9月現在)
世界に先駆けてハイブリッドカーを実用化し、市販を果たした「トヨタ・プリウス」。「中途半端」「市街地以外でのメリットに乏しい」「売れれば売れるほど赤字」といった批判もなんのその、地道に改良を重ね、次世代パワープラントが明確になるまでの“つなぎの本格派”(?)の地位を確立。黒字化も果たしたとウワサされる。内外から高まる評価ほどには販売が延びないのが、もっかの悩みか。
2000年のマイナーチェンジで、荷室の奥に搭載されるニッケル水素電池を小型化、ラゲッジスペースの拡大とトランクスルーを実現した。今回、ハイブリッドシステムをさらにブラッシュアップ、制動時のエネルギー回収率を高めて、カタログ値(10・15モード)では従来比+2kmの31.0km/リッターを達成! リッパだ。
新採用の疑似スウェード地のシートに座って走り始めれば、ソッとスロットルペダルを踏むと、しばらく未来感覚爆発の、「ヒーン……」というモーター音だけの走行が楽しめる。加速時に加わる1.5リッターの内燃機関は、点火スムーズ、違和感なし。赤信号で停まれば、かなりの頻度でアイドリングストップが働く。車内静寂。
一方、手が加えられた減速時は、速度が落ちる過程で一時的に制動力が高まったり、“カックン”ブレーキになったりで、少々不自然。「このヒト、運転、ヘタ」と思われがち。まあ、21世紀初頭人には、「20世紀に間に合ったハイブリッドカー」を意識するちょうどいい違和感かもしれない。
プリウスもデビューしてはや5年。日本の風景に溶け込んだニッポンの誇り。今後、バッテリーの廃棄、リサイクルの問題も表面化しよう。パートナーたる「パナソニックEVエナジー」との、ジャパンオリジナルなシステムづくりに注目したい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1997年12月に登場した世界初の量産ハイブリッド乗用車。1.5リッター直4とモーターを組み合わせ、発進、低速時など、エンジンの効率が悪いときには、モーターで走行、もしくはエンジンを補助する。通常走行時はエンジン、加速時にはモーターが加わり、減速時にはモーターを発電機として活用、エネルギーを回収する。もちろん、アイドリングストップ機構も搭載する。2000年5月30日にマイナーチェンジを受け、排ガスのクリーン化と、モーターのみでの走行範囲拡大(45から65km/hへ)を果たした。バッテリーが小型化されたのもこのとき。
2002年8月6日に再びマイチェン。ブレーキをかけた際のエネルギー回収率を向上、カタログ燃費2.0km/リッターアップの31.0km/リッターを実現した。リアドア、リアガラスにVUカット機能付きソフトプライバシーガラスを採用したのも新しい。
(グレード概要)
プリウスには、ベーシックな「S」と上級版「G」がある。ハイブリッドシステム、タイヤサイズほか、機関面での違いはない。ステアリングホイール、シフトノブが本革巻きとなり、オーディオ類に6枚を収納できるCDチェンジャーが装備されるのが、Sとの相違点。マイチェンにともない、Gのシート生地がスウェード調になった。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
デビュー当初より、あっさりした見かけの樹脂材が使われるようになったインストゥルメントパネル。視点を動かしたときに焦点を合わせやすい、上面奥中央に配されたデジタルメーターや、手前上部に置かれたディスプレイが、“先端”っぽい。日本語表示も採り入れられたボタン類は、割り当てられた機能がよく考えられており、わかりやすい。プリウスのインパネまわりでケチをつけるとすれば、ATシフターによってオーディオ関係のボタンが隠れてしまうこと。オーナーになって慣れてしまえば問題ないのかもしれないが、シフターを短くする、もしくはボタンにしてしまう選択肢もあるはずだ。
プリウスの上級グレードたる「G」は、ステアリングホイール、シフトノブが本革巻になり、クルーズコントロールが備わる。オーディオは、「S」グレードの「カセット一体型ラジオ」に、「CDオートチェンジャー」が加わる。
(前席)……★★★
高めの着座位置、ソフトな座り心地、小ぶりだが実用車として適度にホールドするシート。ステアリングホイールは、レバーによって上下に調整できる。一番上にしても、上体に対して相対的に低め。ちょっとフランス車のようなドライビングポジションだ。運転席側にのみ、シート全体の角度を調整するダイヤルが備わる。上級グレード「G」は、シート地がスウェード調になる。タオルケットのように触感が優しくて、個人的には好き。
(後席)……★★★★
前席以上に柔らかい座り心地のリアシート。座面高、背もたれの角度とも、ごく自然。膝前、頭上ともじゅうぶんなスペースが確保される。センターシートにも3点式シートベルトが用意されるが、ヘッドレストが省略されるので、ヒト用としては薦められない。たっぷりクッションが入ったアームレスト用と割り切るべき。バックレストは分割可倒式。
(荷室)……★★★
“カイゼン”を得意とするトヨタの底力を感じさせるラゲッジルーム。以前はリアバルクヘッドを覆うように設置された駆動用バッテリーを、小型化して床面に設置、トランクスルーを可能とした。「ゴルフバッグなら4個、スーツケースなら2個以上が収納可能」と謳われる。容量は392リッター(VDA法)。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
可変バルブタイミング機構「VVT-i」を備えた1.5リッター直4エンジン(72ps)と、交流モーター(33kw)を組み合わせたパワーソース。単純計算での合計トルクは47.4kgmもあるから、プリウス、4.5リッター車なみのアウトプットを誇る? 実際には、走り始めを「0-400rpm」で最大トルクを発生するモーターが、つづいて4800rpmと、高めのエンジン回転数で最大トルクを得る発動機が駆動力を引き継ぐため、爆発的な加速はない。よくもわるくもバランスが取れた動力性能だ。
「エンジン+モーター」から動力を受け取り、「発電機(モーター)+熱」にエネルギーを返す、巧妙なトランスミッションをもつプリウス。電子制御無段階変速機として、スムーズな加減速を提供する。シフトポジションには、通常の「D」に加え、エンジンブレーキを活用できる「B」ポジションがある。「D-B」間は、シフター頂部のボタンを押すことなく行き来できるので、長い下り坂のほか、速度によっては、通常のオートマのギアを落とす感覚で「B」に入れることもできる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
通常の内燃機関を積むカローラの1.5リッターモデルと比較すると、約1.5トンと、500kgほど重いハイブリッドプリウス。全体に、落ち着いた乗り味をもつ。ただ、足もとの「165/65R15」のタイヤ(Dunlop SP10)は燃費を重視したタイプのため、路面とのあたりが硬い。また、プリウスは普通に走っているかぎり静かなクルマなので、ロードノイズが耳に付く場面もある。車速感応型の電動パワステは、違和感なく自然なフィール。アシスト量も軽すぎず重すぎず、いい案配に設定される。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年9月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:909km
タイヤ:(前)165/65R15 81S(後)同じ(いずれもDunlop SP10)
オプション装備:DVDボイスナビゲーションシステム(13.0万円)/MD一体型ラジオ+CDオートチェンジャー(1.7万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):高速道路(2)
テスト距離:412.6
使用燃料:30.0リッター
参考燃費:13.7km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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