第288回:大矢アキオのつれづれなるままにジュネーブショー(後編)−プジョーの「赤ちょうちん」に誘われて
2013.03.22 マッキナ あらモーダ!第288回:大矢アキオのつれづれなるままにジュネーブショー(後編)−プジョーの「赤ちょうちん」に誘われて
ショーで気になったVIP
「ジュネーブショー2013」が3月17日、幕を閉じた。「周辺国の経済状況が悪化しているなか……」と前置きしながら、プレスリリースに記されている主催者の発表によると、一般公開日11日間の総入場者数は約69万人で、前年比マイナス2%だった。それでも、約40%が周辺各国からの来場者で占められたのは、さすがジュネーブである。
そのジュネーブショー2013では、今回も自動車界で働くさまざまな人を身近に見ることができた。最もフラッシュを浴びていたのは、フェラーリ初の市販ハイブリッドモデルを発表した同社会長のルカ・ディ・モンテゼーモロであった。
新型車の名前が「ラ・フェラーリ」であることを彼が発表した瞬間、そのあまりにベタなネーミングに思わずボクはドリフターズにおけるギャグの“ずっこけポース”をしてしまいそうになった。
それはともかく、モンテゼーモロは、65歳にもかかわらず、一緒にフォトセッションに参加したフィアットのジョン・エルカーン会長や、同社のマルキオンネCEOの影を薄くしてしまうほどの人気ぶりだった。イタリアのテレビには、彼の物まねをする芸人まで登場する。イタリア自動車業界にとって、このような強烈なキャラクターをもった人物は、これからしばらく現れないであろう。
いっぽう、意外なところで見かけた気になるVIPといえば、ラタン・タタだ。ご存じのとおりインド産業界を代表する人物であり、ジャガーやランドローバーをも傘下に収めるタタグループの総帥だったが、2012年末をもって自ら第一線を引退し名誉会長となった。
ラタン・タタは、中国・上海の新ブランド「クオロス」の初出展ブースを、とりわけ熱心に見学していた。
クオロスは中国・奇瑞汽車(きすいきしゃ)とイスラエル系投資会社との折半出資で設立されたブランドである。世界の自動車産業の軸が移動していることを感じさせる光景だった。
いっぽうで、限られた顧客を相手にカスタムカーを造り続けるスイスのスバッロは、今年ジュネーブ連続出展40周年を祝った。記念作は、あるスイス在住米国人のために、「ジャガーXKRコンバーチブル」をベースにデザインした「Jaclyn(ジャクリーン)」だ。ちなみに“Jaclyn”とは発注したオーナーの令嬢の名前である。
主宰のフランコ・スバッロは今年74歳になる。それでも自らの作品制作と、約20年前に立ち上げたカーデザイン学校の校長という、ふたつの顔で働き続けている。「今年度の学生はどうですか?」とボクが質問すると、「とても優秀ですよ」と眼鏡の奥の目を細め、うれしそうにほほ笑んだ。
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大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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