ランドローバー・フリーランダー2(4WD/6AT)【試乗記】
ダウンサイジングの恩恵 2013.03.19 試乗記 ランドローバー・フリーランダー2(4WD/6AT)……512万3000円
2リッター直4ターボへとダウンサイジングされたエンジンを搭載し、軽快さを手に入れた「フリーランダー2」。その魅力を味わった。
明らかに洗練された
一見して、すぐにそれと分かるほど大きくイメージを違えているわけではない。けれど、明らかに洗練された感じを漂わせている。それが2013年モデルとなった「フリーランダー2」の第一印象である。
実際、エクステリアの変更はヘッドランプユニットがLEDの“シグネチャーライト”を内蔵した新しいものとなり、フロントグリル周辺がグロスブラックとシルバーの組み合わせとされたこと、テールランプにもやはりLEDが使われたこと程度にすぎない。けれども、それだけでしっかりアップトゥデートな印象を醸し出しているのだから、アイメイクの効果はやはり大きい。もちろん、それももともとの優れたデザインあってこその話なのだが。
インテリアも同様に、基本的なレイアウトは変わってはいないが、スイッチ類が整理されて従来よりもスッキリとまとめられ、洗練の度合いを高めている。機能的な観点からすれば、7インチのナビシステムの画面などは、最近のトレンドからすると、もっと拡大しても良かったのではと思わないではない。しかしながら意匠としてはまったく、無理して変える必要などなかったというわけだ。
クルマがひと回り小さくなったよう
変える必要があったのは、その中身である。実は、こちらこそが今回のマイナーチェンジの目玉。エンジンが従来の直列6気筒3.2リッターから、「レンジローバー イヴォーク」にも使われている直列4気筒2リッター直噴ターボへと刷新されているのである。
最高出力240ps、最大トルク34.7kgmというスペックは、従来より8ps、2.4kgmの向上。一方で燃費はJC08モードで8.0km/リッターから9.0km/リッターへと向上している。まさに最新のダウンサイジングユニットらしい恩恵をもたらしているわけだ。
その走りっぷりは、まさにリフレッシュされたかのような軽やかさ。エンジンレスポンスは小気味よく、アクセル操作に遅れなくトルクが湧き出て車体を軽やかに前に進めてくれる。厳密に言えば、排気量が小さくなった分か、タイヤが転がり出してからブーストがかかるまでのほんの一瞬のラグが気になる瞬間もなくはないのだが、それも強いて言えばの話。そういうものだと思って、ジェントルに乗ってやればいいだけのことである。
そんな動力性能以上に軽快感を醸し出しているのが、そのフットワークだ。今回は市街地や高速道路でしか走らせていないが、従来に比べると特に鼻先の軽さは歴然としていて、それこそ交差点ひとつ曲がるだけでも、まるで分厚いコートを脱ぎ捨てたかのような感覚を味わえる。その素直な旋回感はクルマがひと回り小さくなったようにも感じさせる。実際にスペックを見ると、車両重量は80kgも軽減されているのだから、この感覚にも納得だ。
輪郭がより明確に
そして、もしかするとこの2013年モデルの一番のトピックと言えるかもしれないのが価格の改定だ。新型フリーランダー2はシングルグレード設定で、価格は399万円。従来はベース車で434万円、上級の「HSE」では584万円という価格を掲げていたのだから、随分思い切ったものだ。イヴォークとのすみ分けも考慮されたのだろうが、いずれにせようれしいニュースであることは確かである。現ユーザーとしては複雑かもしれないけれど……。
個人的にはイヴォークのデビュー以来、そのスタイリッシュな魅力にやられっぱなしだったのだが、あらためてフリーランダー2を見て、実は気持ちが急速にこちらに吸い寄せられている。あくまで都会の匂いがする、ちょっと気負って乗りたいイヴォークに対して、こちらの方が、それこそ郊外の農園と都心を「レンジローバー」で行き来するイギリスのカントリージェントルマン的な優雅さを醸し出せて面白いんじゃないか? なんて、想像が膨らむのだ。
従来モデルの、いかにもストレート6らしい滑らかな吹け上がりも、ぜいたくで捨て難いものだったのは事実。けれども、よい意味での道具感覚をもったフリーランダー2というクルマのキャラクターには、新エンジンの方がよりマッチしているように思う。あるいは、このエンジンを得てフリーランダー2の輪郭が、より明確になったという言い方もできるかもしれない。
フリーランダー2とレンジローバー イヴォーク。ランドローバーの販売店では、ほぼ同じようなセグメントに、2種類のモデルが並ぶわけだが、いやはやこれは案外悩ましい、面白い選択となりそうである。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎)
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島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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