ランドローバー・フリーランダー2 HSE(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
ランドローバー・フリーランダー2 HSE(4WD/6AT) 2007.08.20 試乗記 ……価格=530.0万円総合評価……★★★★
ランドローバーのエントリーモデル「フリーランダー2」。フルモデルチェンジしてふたまわり大きくなった新型のオンロードにおける実用性を検証した。
大人になった末っ子
現行のレンジローバーから始まった新しいデザインが、「ディスカバリー3」「レンジローバースポーツ」を経て、この「フリーランダー2」に到達した。“幾何学的”と表現される直線的なフォルムには、シンプルでありながらオフローダーが持つ無骨さがなく、かわりにモダーンな雰囲気が漂い、加えて寝かされたフロントウィンドウや、サイドビューにアクセントを与えるショルダーラインなどが、乗用車ライクな雰囲気を打ち出している。旧型フリーランダーが兄たちとは別の個性を強く放っていたのと較べると、あまりに真っ当すぎるようにも思えるが、やはりひと目でランドローバーファミリーの一員とわかるデザインのほうが何かと好都合なのだろう。
実際、フリーランダー2を目の前にすると、レンジローバーの全長より40cm以上も短いのに、長男譲りのゴージャスで堂々とした空気が伝わってくる。走らせてみても、その上質さを実感できる仕上がりのよさに、期待は裏切られない。いままでよりも手軽に高級SUVブランド・ランドローバーに触れたいという人には格好の一台になるはずだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
初代「フリーランダー」は、ランドローバーのエントリーモデルとして1997年にデビュー。2006年7月のロンドンショーにて、フルモデルチェンジを受けた新型「フリーランダー2」が発表された。
ボディは全長×全幅×全高=4515×1910×1765mmと、先代からふたまわりほど大きくなり、ホイールベースも110mm延長され、2660mmとなった。
エンジンは3.2リッター直6(232ps、32.3kgm)を横置きで搭載。トランスミッションは、4.148とローギアードの1速を持つ、マニュアルシフト付き6段オートマチックが組み合わされる。ラインナップは主に快適装備の違いで、「S」「SE」「HSE」の3種が用意される。
(グレード概要)
最上級グレードであるHSEは、AFS(アダプティブ・フロントライティング・システム)や電動パノラミックサンルーフなどが標準装備。ホイールもその他グレードの17インチから18インチへとアップされ、タイヤは235/60R18を履く。また、本革巻きステアリングホイール&シート、電動調整式フロントシート、プレミアム・オーディオシステムが標準装備される唯一のグレードである。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
液晶モニターの下の部分に段がついたセンターパネルは、ディスカバリー3やレンジローバースポーツから受け継ぐデザイン。この2モデルほどワイドではなく、どちらかといえばこじんまりしているのがフリーランダー2の特徴だ。カジュアルな雰囲気を持ちながら高い質感を誇るのはいかにもランドローバーらしい。
このHSEのダッシュボードは、シートカラーにあわせて、ブラック一色、または、ブラックとベージュの2トーンになる。試乗車はツートーンのほうで、明るいウッド調パネルが組み合わされるが、わざわざこのクルマを選ぶ人のことを考えると、本物のウッドがほしいところ。
(前席)……★★★★
運転席に陣取ると、アイポイントが高く見晴らしがいいのは予想どおりで、一方、ボンネットやダッシュボードを上から眺め降ろす感覚がとても新鮮である。これがいわゆる“コマンド・ドライビング・ポジション”というもので、クルマのサイズが掴みやすいのと、高い開放感が、ストレスの少ない運転につながりそうだ。
運転席は、スライド、リクライン、リフト、そしてランバーサポートの調節が電動で、メモリー機能が付く本革シートが標準で装着される。肩まですっぽりと隠れるたっぷりしたサイズで、レザーの張り具合も適度である。
気になったのは、細い熱線が細かな間隔で挟み込まれたフロントウインドー。光の加減によっては熱線が目立つことがあった。
(後席)……★★★★
フロントよりも少しだけ高い位置にクッションがあるリヤシートは、アップライトに座らせられるにもかかわらず、頭上には十分余裕があり、HSEに標準のパノラミックサンルーフのおかげで開放感も優れている。足元も広く、乗り心地も快適なので、ここで長時間過ごすのは苦にならない。欠点は、前席に比べてロードノイズがすこし大きいことくらいか。
(荷室)……★★★
同サイズのセダンやステーションワゴンに比べると奥行きが短いのは、リヤオーバーハングをあまり大きくできないSUVの悩みである。それでも通常の状態で約90cmの奥行きは、ダブルフォールド機能を使ってリヤシートを倒せば約160cmに拡大することができて、十分納得のいく広さが確保される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ノーズに収まるのは3.2リッターの直列6気筒。しかも、横置きとくれば、そう、ボルボS80のエンジンに他ならない。組み合わされるトランスミッションがアイシンAWの6段オートマチックで、4WDにハルデックスカップリングを用いるのもS80(AWD)と同じである。
そのS80 AWDより130kgも重量のかさむフリーランダー2だが、多少低められたファイナルのおかげもあり、1000rpmを超えたあたりから豊かなトルクが感じられ、街なかであれば2000rpm以下だけで事が足りてしまうほど、低回転域では余裕がある。2000rpmを過ぎるとすこしトルクの出方が鈍るような感覚があるが、明確にアクセルペダルを踏み込めば、十分な加速が手に入る。上まで回すとエンジンからのノイズが多少耳障りに思えるが、実用的には不満のない仕上がりである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
あいにく(!?)今回の試乗はドライのオンロードだけだったので、自慢の“テレイン・レスポンス”は“オンロード”に入れっぱなしで、実力の一部しか試せなかった。あくまでオンロードがこのクルマのメインステージということで話を進めるとしよう。
4輪独立のストラットサスペンションは、一般道ではマイルドな乗り心地を示す。場合によってはゆるやかなピッチングが見られ、235/60R18の大きなタイヤが目地段差のショックを遮断しきれないこともあるが、どちらも不快というほどではない。高速でもこの乗り味に変わりはなく、広い範囲で快適なのはとても魅力的だ。
山道を走る機会もあったが、コーナーでのロールはSUVとしてはちいさいほうで、乗用車的な味付けだ。こう見えてハンドリングは素直なFF車という感じだから、運転中にボディの大きさが煩わしくないのも、このクルマの魅力といえる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年7月20日から23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1279km
タイヤ:(前)235/60R18(後)同じ(いずれも、グッドイヤー WRANGLER HP)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(8)
テスト距離:583.8km
使用燃料:79.65リッター
参考燃費:7.3km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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