ランドローバー・フリーランダー2(4WD/6AT)【海外試乗記】
リーズナブルな変身 2013.01.13 試乗記 ランドローバー・フリーランダー2(4WD/6AT)……399万円
マイナーチェンジで新エンジンが与えられた「ランドローバー・フリーランダー2」。その走りを、カナダ・モントリオールでの試乗会から報告する。
ブランドあげての燃費向上
生粋のオフローダーを手がけるブランドとして知られる、ランドローバー。その最新モデルの“時代を見据えたアップデート”ぶりには、目を見張るものがある。
例えば、世界中で大ヒットを飛ばした「レンジローバー イヴォーク」がスタイリッシュであることは誰もが認めるところだろうが、あのデザインとて、単にルックスのよさを追及しただけではないという。背の低さは空気抵抗や重量の低減に直結し、それはそのまま燃費の向上にも大きな効果をもたらすとうたわれる。すなわち、このモデルの流麗なデザインは、時代の要請にも配慮した結果生まれたものでもあるわけだ。
先般フルモデルチェンジされ、日本名もスッキリ「レンジローバー」へと改められたフラッグシップモデルの場合は、その最大のトピックは「SUVで世界初、オールアルミボディーの採用」である。
当然ながらその目的は大幅な軽量化で、新旧モデルを比較するとボディーシェルのみでも180kgの減量。その他、シャシーやドライブトレインも含めれば、同じV型8気筒のガソリンエンジンを搭載するモデルで、最大350kgも軽く仕上げられている。これにより燃費性能が大きく引き上げられたのはもちろん、加速性能や走り全般の軽快感が大幅アップしたことは、すでにテストドライブでも確認済みだ。
ひと昔前までは世界の自動車ブランドの中にあって、最もそうした事柄には縁遠い(?)と思われてきたランドローバーというメーカーの“作品”。しかし、ことほどさように、本気の環境対策があらゆる車種で行われているのだ。
そして、そんな思いをさらに確固たるものにしてくれるのが、今回の「フリーランダー2」という存在だ。先般リファインが実施された最新モデルでは、エンジン換装という大鉈(なた)が振るわれた。従来型に搭載された3.2リッターの直列6気筒ユニットに代わって積まれたのは、ターボ付きの2リッター直噴4気筒ユニットだ。
サイズよし、作りよし
“心臓部”をフルモデルチェンジするという大胆な手法がとられる一方で、外観上は、LEDテクノロジーを用いたフロント/リアのコンビランプやグロスブラック仕上げのフロントグリルベゼルの新採用程度と、そのリファインの規模は最小限にとどめられる。プレミアムコンパクトSUVをうたうこのモデルが、ランドローバーの作品の中で最も日本の身の丈に合う存在であるという点は、今度の最新型になっても変わらない。
1.9m超の全幅に対して「コンパクト」という表現を用いるのは、どうにも抵抗感がぬぐいきれないが、4.5mプラスの全長や5.5mという最小回転半径については、昨今のSUVというカテゴリーの中にあって、フレンドリーな印象を受けるというのも確か。
一方で、インテリア各部の作り込みなどから、明確にプレミアム感が伝わってくる。率直に言って、それは豪華絢爛(けんらん)という印象ではないし、レンジローバーブランドの各モデルと比べてしまえば、各部の質感についてもやや見劣りする部分がないとは言えない。けれども、どこを見回してもチープさが漂う部分など存在しないし、シンプルでありながら機能性に富んだ各部のデザインは、こうしたモデルにふさわしいものと感じられる。
そして、ドライバーズシートに腰をおろせば、「コマンドポジション」と呼ばれる高めのアイポイントからの見下ろし感覚が、軽い非日常性を演じてもくれるわけだ。
毎日の相棒として付き合うにあたって、何らかの身構えが必要になるほどの特別感はないものの、単なる道具としての乗用車とは明らかに一線を画す――数あるSUVの中にあって、フリーランダー2の特徴は、ちょうどそんなバランス感覚が味わえるところにあると言えるだろう。
出足に重さは感じるが……
新エンジンを得て注目される、最新フリーランダー2の走り。それはある面で予想通りであり、またある面では予想を超える実力を見せてくれた。
予想通りの方はまず、新エンジンのパフォーマンスが、ターボブーストが効く領域では十分活発な走りを提供してくれるということ、そしてスタートの際、1.8トンを超える重量を2リッターエンジンで賄うために重さを感じさせられるシーンもあるということだ。
フォードのスペイン工場製というこのダウンサイズエンジンが、ごく低回転域から太いトルクをしっかり発してくれるのは、同じエンジンを積むイヴォークなどでもすでに経験済み。しかし、そのイヴォークよりもさらに60〜90kg重い車両重量の影響は、やはり皆無とは言えないわけだ。
もっとも、そんな「ちょっと動きが重いナ」という走りだしの印象も、後に速度が乗ってくれば、すっかり気にならなくなってしまう。ひとたび走り始めたなら、十分活発な加速感がいつでも味わえる。クルージング中からアクセルを踏み込んだ際、6段ATが不必要に変速を繰り返すような“ビジー感”に見舞われることはないし、ノイズやバイブレーションの面でも、6気筒から4気筒に替わったことでハンディキャップを意識させられる場面は事実上ないと言っていい。
ハンドリングに変化あり
一方で、ハンドリングの軽快感は、予想した以上に高まっていた。そこでは従来の6気筒ユニットよりも、エンジン重量が40kg減になったという事柄が大きな効果を生んでいるに違いない。かくも前輪の負担が軽減されたことが、より軽やかでさらに正確な舵(だ)の効きにつながっているというわけだ。
ただ、ハンドリングが好ましくなったフリーランダー2ではあるが、路面の継ぎ目などで時に強めのハーシュネスを感じさせられるその乗り味に関しては、「そろそろ、古いかな……」という印象を受けることもある。現行フリーランダー2の誕生は、2006年。このモデルの乗り味が長足の進化を遂げるのは、やはり次のフルモデルチェンジで、と考えるのが自然なのだろう。
FFのレイアウトをベースとする骨格を持ちながら、ランドローバーの一員らしく卓越したオフロード走破性の持ち主であることは、ドライの舗装路からヘビーウエット路面、さらには雪道・凍結路面やひどく荒れた泥濘(でいねい)地……等々、さまざまな路面を走破した今回のカナダ・モントリオールでの国際試乗会でも、あらためて強く教えられた。
もちろん、そうした変化に富んだ路面に対して、その操作部が従来のダイヤル式からプッシュスイッチ式へと改められた「テレイン・レスポンス」が的確に対応するのは言うまでもない。
昨2012年末に発表されたフリーランダー2の日本市場での新価格は、400万円を切るものだった。カタログを片手に実際の内容と照らし合わせてみれば、そのコストパフォーマンスの高さに興味津々という人も、きっと少なくないはずだ。
(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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