日産GT-R Pure edition(4WD/6AT)【試乗記】
速さの進化は止まらない 2013.03.18 試乗記 日産GT-R Pure edition(4WD/6AT)……1186万9200円
さらにトガッた「日産GT-R」。エンジンのキレが増した2013年モデルは、ニュルの周回タイムをさらに縮めたという。では、ロードカーとして肝心な日常性能はどうか。ショートツーリングに出た。
真の実力は7分18秒6!?
「日産GT-R」2013年モデルがたたき出したニュルブルクリンクのラップタイムは、7分19秒1。2007年の初挑戦では7分38秒54だったから、その6年間の進化たるや、恐るべし! そういえば、翌08年は7分29秒3の市販車最速タイムを記録して、シュトゥットガルトの自動車メーカー(ポルシェのことです)を本気にさせたっけ。「ホントに市販車と同じ仕様なのか? タイムアタックスペシャル(!?)なんじゃないか?」。そんなクレームが付いたと記憶している。
「タイヤも、サスペンションも、すべて標準。つまり、あなたのGT-Rと同じ仕様で走る。」
そんな小見出しが躍るGT-Rの最新カタログを読んでいて、笑ってしまった。「2013年モデルは7分19秒1を記録した」のフレーズに続いて、「前走車による0.5秒のタイムロスがあったため、真の実力は7分18秒6と言える」と書かれていたからだ。
反射的に、「予選に失敗したドライバーの言い訳みたいだ」と思った。草レースに没頭していたころの自分の体験と重ね合わせて。
「なんとまあ、失礼な感想を……」と自分にあきれながら、でも、なんだかうれしくなった。世界でも指折りの自動車メーカーの開発陣、そのテストチームが、本気で「チクショー!」と残念がっているのが伝わってくるではないか。一流のレーシングチーム、レーシングドライバーは、冷静に課題に対処しながらも、メンタルの根っこでは、「オレ(たち)が一番速い」「アイツには絶対負けない!」という原初の意気を保持しているという。デビュー以来、しつこくニュルに挑み続けているGT-R。まだまだ速くなりそうだ。
公道では「少々硬い」と感じるぐらい
既報の通り、GT-R 2013年モデル進化の眼目は、エンジン高回転域での加速強化である。サーキットからのフィードバックが囁(ささや)かれる、燃料噴射の精度アップと過給圧低下を防ぐターボユニットの改良が施された。オイルパンにバッフルプレートを加えて、油圧の揺れを抑える工夫も(手法が古典的だが)新しい。3.8リッターV6ターボのカタログ上のスペック(最高出力550ps/6400rpm、最大トルク64.5kgm/3200-5800rpm)は、2012年モデルと変わらない。
一方、「一基のエンジンを一人の匠(たくみ)が組み上げる」といううたい文句通り、エンジンブロックにそのユニットを組んだ職人の名前が入ったアルミプレートが貼られるようになった。かつて、「フォード・マスタング」のスペシャルバージョン「コブラ」にも同様の手法が採られていて、「おもしろいことをするなぁ」と感心したものだが、GT-Rのプレートは、コブラのそれよりずっと立派だ。この日お借りした「Pure edition For TRACK PACK」のエンジンは、「Handbuilt by Izumi Shioya」だった。シオヤさん、すばらしいエンジンでした。
For TRACK PACKは、かつての「SpecV」に相当する硬派なカスタマイズオプション。専用サスペンション、20インチの鍛造アルミホイールがおごられ、シート地はモケットと本革のコンビネーションとなる。リアシートは省かれ、車重はノーマルPure editionより10kg軽い1720kg。乗車定員は、言うまでもなく2人だ。
GT-R 2013年モデルの、フロントの食いつきの良さ、回頭性の向上は、すでに報告されている。フロントの動的なロールセンターを下げたのが効いているらしい。
よりスペシャルなTRACK PACK用サスペンションでは? 交通法規を順守して公道を行くかぎり、「乗り心地が少々硬い」と感じるのがせいぜいだ。そこで、トランスミッションを「SAVE」、ショックアブソーバーを「COMF(ort)」、VCRはノーマルのまま、試乗してみた。
どんどん速くなり、グングン優しくなる
GT-Rの「COMF」モードは、“安楽”ではなく、“日常”の意味である。つい勢いで(?)TRACK PACKを買ってしまったオーナーでも、後悔することのない日常性を提供する。
トランスミッションの「SAVE」モードは、シフトプログラムを燃費寄りにするほか、エンジンの出力も抑え気味となる。アクセル操作に対するエンジンの反応も、穏やかに。といっても、スーパースポーツからスポーツになったレベルで、普通に運転していても十二分に速い。瞬間燃費計を観察していると、100km/h巡航だと、楽に10km/リッターを超す。ノーマル状態ならシフトダウンするようなアクセルの踏み増しをしても、ギアをキープしたまま、しかしアッと言う間に速度を上げていく。「GT-Rの本籍はサーキット」ということを、逆説的に理解させるSAVEモードである。
GT-Rの取扱説明書をひもとくと、ホイール、ブレーキ、トランスミッションそれにLSDからのノイズ、アイドリングの揺らぎやマフラーの変色についてなど、多岐にわたって「これらの現象は異常ではありません」と説明されている。GT-Rだからといって、すべてのオーナーが「わかって」購入しているわけではないのだろう。
「SNOW」変じて「SAVE」モードとなったのは、2011年モデルだった。2014年モデルには、さらにおとなしい「ECO」モードが新設されるかもしれない!? いや、それは次の世代で? どんどん速くなり、グングン優しくなるGT-R。どちらのGT-Rも、応援していきたい!
(文=青木禎之/写真=荒川正幸)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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