トヨタ・オーリスRS“Sパッケージ”/150X/150X“Sパッケージ”【試乗記】
本場の反応が見てみたい 2012.09.23 試乗記 トヨタ・オーリスRS“Sパッケージ”(FF/6MT)/150X(FF/CVT)/150X“Sパッケージ”(FF/CVT)……255万3083円/206万7883円/252万4583円
トヨタのハッチバック車「オーリス」がフルモデルチェンジ。“スポーツハッチバック”をうたう2代目の走りを、1.5リッターと1.8リッターの各モデルで試した。
走りのためのイメージチェンジ
ハッチバックの本場、ヨーロッパで鍛えられた「トヨタ・オーリス」が新しくなった。「スポーツハッチバックの新基準」をうたう2代目は、グッと低く構えたカタチになり、“キーンルック”とトヨタが呼ぶ、つり目の顔つきがよく似合う。
日本では軽自動車とミニバンに挟まれて、いまひとつパッとしないカテゴリーだが、ヨーロッパでは、「オーリス」が属するCセグメントはメインストリーム中のメインストリーム。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を筆頭に、自動車メーカー各社がしのぎを削る。
先代オーリスは、ユーティリティーに優れたハッチバックとして、欧州でも2007年の発売当初は順当に売れたが、ライバル社が新車を投入するたび、影を薄くしていったという。かの地の、経済的なクルマを情け容赦なく使うという市場環境から、自然、どのモデルも走りがよくなる。「走ってナンボ」のなか、全高高めの先代モデルはなかなか苦戦したようだ。
そこでニューオーリスは、全高を55mmも低くした。重心高を下げ、走りのポテンシャルを上げるのが狙い。天井が低くなったので、シートの着座位置も40mm下げた。ドライビングポジションからして、スポーティーになったわけだ。ルーフラインがなだらかに落ちる形状なので、後席の出入りは少ししづらくなったが、リアのスペース自体は実用的。前席の背もたれ裏を削って膝前の空間を稼いだ。
太いCピラーの堅牢(けんろう)感より、6ライトの軽快感を重視したのだろう。リアドア後ろにはめ殺しの窓を追加して、閉塞(へいそく)感をなくしている。跳ね上がった後端が、元気な感じ。サイドのウィンドウグラフィックがなんとなく「マツダ・アクセラ」に似ているのは、言わない約束だ。
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単なる“カローラ・ハッチバック”ではない
オーリスは、つまり「カローラ」のハッチバック版だが、日本で売られているカローラのお尻を切り落とすとオーリスになる、わけではない。先代カローラから、国内・国外でプラットフォームが分けられたからだ。海外向けプラットフォームを用いた“足のいいやつ”が、オーリスである(余談ながら、1970年代に“足のいいやつ”をキャッチコピーにした初代「カリーナ」は、3ボックスの車型ながら、最新オーリスの中にすっぽり入ってしまう!)。
ただ、一度開発されたプラットフォームは2世代にわたって使われるのが普通なので、ガラリと姿を変えた新型オーリスも、腰下の基本構造は先代のそれを踏襲する。ホイールベースは2600mmのまま。動力系も同様で、1.5、1.8リッター直列4気筒にCVTを組み合わせるのも、先代と変わらない。
前回はモデルライフの途中から投入された1.8リッター+6MTモデル「RS」が、最新オーリスではイメージリーダーとなる。2代目オーリスの駆動方式はもちろんFF(前輪駆動)だが、1.5リッターには4WDも用意される。
欧州風味の強いオーリスだが、国内で造られるクルマが“まんまヨーロッパ”というわけではない。欧州産オーリスのパワーパックは、国内版とはまったく異なる。エンジンは、1.3と1.6リッター、ディーゼル、それにプリウスのハイブリッドシステムを使ったハイブリッドモデルがラインナップされる。3ペダルの5段MTも用意され、日本のオーリスより、ずっと実用車寄りの構成を取る。ヨーロッパの普通が、日本では相対的にスポーティーということになるのかもしれない。
わが国での価格は、1.5リッター「150X」が171万〜216万9000円、1.8リッター「180G」が206万〜221万円、同じく1.8リッターのRSが202万〜225万円。量販グレードの1.5リッターモデルが「スバル・インプレッサスポーツ」やアクセラより高め、1.8リッターは、両者の2リッターモデルに重なる値付けとなっている。
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1.8リッターは別モノ
プレス向け試乗会で、何種類かのオーリスに乗ることができた。まずは最もベーシックな150X。ルックスから来る期待感が高すぎたためか、108ps、13.9kgmを発生する1.5リッターをCVTと組み合わせたスポーツハッチは、「もうちょっと走ってもいいのにな」という感じ。アクセルペダルを踏んだ量、エンジン音の高まり、実際の速度。三者がてんでバラバラに振る舞うCVT車の悪癖はよく抑えられているが、どうも全体にもどかしい。
ところが、装着タイヤが「195/65R15」から「205/55R16」にグレードアップされる“Sパッケージ”になると、路面とのダイレクト感が増して、気持ちシャキッとする。ようやくスポーティーの香りが漂い始める。両者の価格差は19万円だから、純正アルミホイールの意匠が気にくわないということがないなら、“Sパッケージ”を選んだ方が、先々幸せな気がする。
1.8リッターモデルは、これは別物である。試乗できたのは、「180G“Sパッケージ”」。143psと17.6kgmを発生する1.8リッターユニットを得て力強く走る。余裕あるアウトプットの恩恵で、エンジンと統合制御する新しい変速プログラムが生きてくる。実際の加減速やシフトタイミングと、運転者の感覚とのズレが少ない。エンジンをフルスケール回すと、ローで65km/h、セカンドで85km/hくらいまでをカバー。1.5のそれがだいたい60km/hと80km/hだから、3割増しのアウトプットがそのまま加速に上乗せされる印象だ。
さらにステアリングのギア比は速められ、足まわりはリアがスイングビームからダブルウィッシュボーンになる。ササッとノーズの向きを変え、コーナリング中の路面が荒れていても、しなやかにいなして涼しい顔。1.8リッターモデルは、「オーリス・スポーツ」とでも名付けた方がよくはないか?
3ペダルの6段MTが与えられた「RS」は、ダイレクトな走りが楽しい趣味性の高いクルマだ。もっとも、144ps、18.4kgmの1.8リッターはプレミアムガソリンを要求するから、久々にきねづかを握ろうかという余裕ある年配者向け、か。あまり回りたがらないエンジンがやや感興を削(そ)ぐものの、多少ずぼらな運転にも不平を漏らさない気楽さがある。演出は乏しいが、速い。オーリスRSこそ、ハッチバックの本場に出して日本車の名を高めてほしいところだが……。円高がうらめしい。
(文=青木禎之/写真=峰昌宏)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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