ジャガーXF 2.0プレミアムラグジュアリー(FR/8AT)【試乗記】
新しい時代の新しいジャガー 2013.02.10 試乗記 ジャガーXF 2.0プレミアムラグジュアリー(FR/8AT)……793万4650円
ジャガーのスポーツサルーン「XF」にダウンサイジングの2リッター直4ターボエンジンが採用された。新しい時代の2リッタージャガーはどんな走りを見せるのか。
2リッターでも侮るなかれ
ジャガーファン卒倒の大ショック! 流麗にして豊満な高級スポーツサルーン「XJ」と「XF」が、突如とんでもなく大変身してしまったのだ。これまで5リッター級のV8や、それにスーパーチャージャーを付けてぐいぐい突っ走っていたし、小さい方でも3リッターのV6だったのに、なんと今度は2リッターの4気筒ターボが基本で、大きい方でも3リッターの6気筒にスーパーチャージャー付きという組み合わせ(従来からのV8も、「R」の付く特別な高性能モデルには残っているが) 。
サルーンユーザーには、どちらかといえば保守的な傾向があるから、これまでは気筒数や排気量でクルマの価値を判断してきたかもしれない。だとすると、なんだか格が下がったように見えるだろう。
でもテストしてみた結論から報告すると、この2リッターエンジン、決して侮れないどころか、とても気持ちの良い切れ味を発揮して、ジャガーらしいスポーツ風味を一段も二段も濃くしている。
最高出力240psは控えめに見えるが、わずか2000rpm以下で34.6mkgの最大トルクをひねりだし、そのまま6600rpmのリミット近くまで頭打ちにならないのがすごい。反応も敏感で、どこから踏んでも、アクセル操作に瞬間的に応答する。4気筒らしくメリハリに富んだフィーリングともども、必要もないのに踏んだり放したりしたくなる。もちろん5リッターV8ほどドスは利かないが、公道上を元気に駆け回る範囲では、こちらの方が潜在性能を余さず引き出せた実感を抱けて楽しい。
ZF製8段ATのレシオ配分も的確。わざわざシフトパドルでマニュアル操作するより、Dレンジに任せた方が、瞬間ごとのドラマ感を満喫しやすい。コンソール上のダイヤルを「D」から「S」に回すと、それまでの8速クルージングから一気に5〜6速へのシフトダウンが起き、むちが入ったように音色も一変する。
キレのある走り
こんな4気筒へのダウンサイズは、コーナーでの身のこなしにも大きく貢献している。これは前輪荷重がV8はもちろんV6より比較にならないほど軽いのが最大の要因。しかもエンジンが短いということは、そのぶんフロントミッドシップ的になっているので、スッと切り込むと間髪をいれずノーズが素直にイン側を捉える。これでこそ、まるでドライバーを軸として方向転換するような、ジャガー独特のコーナリング感覚も生きる。
対する3リッターV6スーパーチャージャー仕様はというと、さすがに出力340ps、トルク45.9mkgだけに、地の底から湧き出るような底力は否定できない。さくさく軽快な2リッター4気筒ターボより、低回転からグ〜ッと持ち上げる過程には、いかにも高級サルーンらしいゆとりが漂う。しかし、だからといって3リッターの方が優秀と決めつけるのは間違い。
互いに根本的な性格が異なり、いわば「キレの2リッター」対「コクの3リッター」という感じなのだ。落ち着いたフォーマル感覚を求めるなら3リッター、積極的にクルマと語り合う喜びに浸りたければ2リッターという選択になるだろうか。わかりやすく言えば、馬力などの数字が小さい2リッターの方が上級者向き。これに乗って大排気量とすれ違う時、「ふん、俺の方がワカッテルもんなあ〜」的な優越感に包まれるのは、不思議だが本当だ。
こんな仕上がりだけに、今回ここに出演してもらったXFのような特別なコスチュームも似合う。「XF 2.0 Premium Luxury」(694万円)をベースとして、トランクリッドの控えめなスポイラーなどエアロダイナミックパック(22万4000円)や20インチのBlack Kalimnos軽合金ホイール(34万8000円)をはじめ、予算が合計793万4650円まで膨らんでも、「自分だけのエンスー城」を築きあげたような達成感、納得感はある。新しい時代の新しいジャガーオーナーに、ぜひとも薦めたい一台なのは間違いない。
常に革新を志す
ところで、こんなに好印象をもたらした2リッター4気筒エンジンだが、実績を振り返れば当然かもしれない。その正体はフォードの力作「エコブースト」で、すでに「フォード・エクスプローラー」「フォード・フュージョン(欧州名:モンデオ)」「ランドローバー・レンジローバー イヴォーク」「ボルボV70」などにも応用され、軒並み好評を博している。重量2トンを超えるエクスプローラーを軽々と走らせるのだから、もっと軽く空気抵抗も小さいジャガーXJやXFなど朝飯前。
ジャガー、ランドローバー、ボルボなどとフォードとの資本提携関係は終わったが、技術面の協力関係は続いている。フォードとしては、このエンジンを年間150万基は製造したいと言っているから、こういう展開も想定の範囲内だろう。
それと聞いて「ええ〜っ、フォード?」などと顔をしかめるのは、ジャガーの本質を知らない証拠。並外れた商才に恵まれ、社会の空気を読む眼力で知られた創始者サー・ウィリアム・ライオンズが今もし健在だったら、迷わずダウンサイジングの風潮を受け入れたに違いない。伝統とは、常に革新を志すことによって、初めて守られ育まれるものだからだ。
(文=熊倉重春/写真=高橋信宏)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

熊倉 重春
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。































