ジャガーXF SE R-DYNAMIC P300(4WD/8AT)
出自は隠せない 2021.07.05 試乗記 優雅さとスポーティーな走りを併せ持つジャガーのEセグメントモデル「XF」が、操作系の刷新を含む改良を受けて、2021年モデルへと進化。パワフルなガソリンターボエンジンと4WDを組み合わせた「XF SE R-DYNAMIC P300」に試乗し、その出来栄えを確かめた。程よくモダンで適度に機能的
登場から6年がたったXFに、これで幾度目かの改良が加えられた。2021年モデルはフェイスリフトを受けているというが、エクステリアについては前後バンパーとフロントグリルが変わった程度で、従来モデルとの差はわずか。その一方でインテリアは大幅にモダナイズされた。
センターコンソールからステアリング、シフトレバーがいずれも一新されており、「ランドローバー・ディフェンダー」から採用された新世代インフォテインメントシステム「Pivo Pro」が標準装備された。それをつかさどるセンターのタッチスクリーンは11.4インチの湾曲したタブレット風のもので、現代的なインターフェイスとなっている。初見でも直感的な操作が可能で、反応速度も速い。これなら戸惑うことなく使いこなせそうだ。一方で、エアコンのコントローラーまでタッチ式にはせず、物理的なダイヤルスイッチとしたのは賢明だろう。
エンジンはすべて自社開発のモジュールユニット「INGENIUM(インジニウム)」で、2リッター直列4気筒ガソリンターボが「P250」と「P300」の2種類。新たにマイルドハイブリッド(MHEV)が組み合わされた2リッター直列4気筒ディーゼルターボ「D200」と合わせ、3種類の構成となった。ランドローバーのモデルにある直列6気筒の搭載を期待していたが、残念ながらラインナップには見当たらず、エンジンは2リッター直列4気筒にしぼられたようだ。
とはいえ、今回の試乗車であるXF SE R-DYNAMIC P300が搭載する高出力版のガソリンターボなら、2リッター直4でも十分にパワフルでスポーティーだ。400N・mという最大トルクを1500rpmという回転数から発生するので、1830kgという車両重量に対しても不足は感じられず、一般的な走行ならば2000rpm前後まで回せばおおむねこと足りる。アクセルを踏み込むと3000rpmあたりから回転上昇の勢いが増し、6300rpmまでシャープに吹け上がっていく。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
サスペンションにみるこだわり
トランスミッションは定評のあるZF製8段ATで、あいかわらずシフトスケジュールは見事。おとなしく走っているときはトルクの充実した回転域で頻繁に変速しているが、スムーズなのでビジー感はなく、またアクセルを踏み込むと素早くシフトダウンして、ドライバーが望んだ通りのトルクと加速感を引き出してくれる。一方、モードセレクトで「ダイナミック」を選択して強く加速させると、変速のスピードが速くなり、「スポーティーなシフト感」とも形容できる軽いショックが表れ、ドライビングの喜びが高まる。
XFといえば軽量・高剛性なアルミニウムを多用しているのが自慢。ドア、ボンネット、テールゲートを除いたボディー構造の75%がアルミニウムだという。ただし、ライバルと車両重量を比較してみると、それほど目立って軽いわけではない。ホワイトボディーで軽くなったぶん、サスペンションまわりに“質量”をかけているからだ。
リアサスペンションは、あらゆる方向からの力をしっかりと受け止めて操縦安定性を高めると同時に、スムーズなストロークが確保できるインテグラルリンク式。プレミアムカーでは一般的なマルチリンク式をさらに高度化したものだ。その効果は絶大で、街なかや高速道路での移動は至って快適。大きな凹凸があっても突き上げ感が少なく、スルリと見事な足さばきでいなしてしまう。それでいてドシッと構えた安定感もあり、速度域が高くなってもフラットライドが保たれる。また静粛性も高く、特にロードノイズが低く抑えられているので洗練された雰囲気もある。
圧巻なのはワインディングロードでのハンドリングだ。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくとスーッとロールが始まるが、ストロークしていくごとにショックアブソーバーの減衰力が高まっていき、粘っこくタイヤが路面を捉え続ける。コーナー内の路面がでこぼこしていても、サスペンションが正確なストロークでタイヤをピタッと接地させ続け、ボディーは無駄に上下動することなく奇麗にラインをトレースしていく。サスペンション自体も優れているが、その周辺部の剛性が高いことも実感させられる。ここに物量を注いでいるからこそだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
秀逸な4WDならではの一体感
ショックアブソーバーは可変式で、減衰力の制御には「コンフォート」と「ダイナミック」がある。もちろんダイナミックのほうが走りが引き締まるのだが、乗り心地の悪化はほとんどない。これもまたサスペンションおよびシャシーの基本能力が高いからだろう。それでいてコーナーへターンインしていくときの応答性はシャープになり、キビキビとしてくる。コンフォートでもダイナミックでも基本的な動きは同様だが、反応のいい後者はリズミカルにハンドリングを楽しめるのだ。
XFのステアリングは、操舵力が軽いのに確実なインフォメーションがある、個人的にも好みのもので、いわゆる猫足的なサスペンションの動きにもマッチしている。もう少し重めのほうがスポーティーで好きという人もいるだろうが、ダイナミックモードを選択すればステアリングの手応えも変わるので試してみるといい。
XF SE R-DYNAMIC P300は4WDであり、FRと比べて操縦安定性が高いのはもちろんのこと、ライントレース性がより正確である。特に登りのコーナーではリアからプッシュしていってアンダーステア気味になることがないのがうれしい。11.4インチのタッチスクリーンに前後駆動配分を表示して観察していると、基本は後輪駆動で、コーナーの立ち上がりなどでアクセルを踏み込んでいくとフロントが適度に駆動しているのがわかる。イメージ的にはFRのほうが楽しそうではあるものの、よくできた4WDの一体感の高さは見事で、楽しさでも勝っているといえる。「ASPC(オール・サーフェイス・プログレス・コントロール)」も搭載されており、冬道やラフロードなどでは4WDの能力を最大限に、しかもイージーに引き出すことが可能となっているので、降雪地帯のユーザーなどにもおすすめできる。
XFには2種類のガソリンとディーゼル、FRと4WDがあるが、エンジンにパンチがあり、ノーズの軽さと正確なライントレース性を併せ持つXF SE R-DYNAMIC P300は、スポーツカーからクルマづくりをスタートさせたジャガーらしさが濃厚なモデルなのだ。
(文=石井昌道/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ジャガーXF SE R-DYNAMIC P300
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×1880×1455mm
ホイールベース:2960mm
車重:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-2000rpm
タイヤ:(前)255/35R20 97Y/(後)255/35R20 97Y(ピレリPゼロPZ4)
燃費:11.6km/リッター(WLTCモード)
価格:838万円/テスト車=1129万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ユーロンホワイト>(9万3000円)/シエナタンパーフォレイテッドウィンザーレザースポーツシート<シエナタン/エボニーインテリア>(21万7000円)/コンビニエンスパック(21万5000円)/プレミアムアップグレードインテリアパック(44万6000円)/4ゾーンクライメートコントロール(9万9000円)/空気イオン化テクノロジー<PM2.5フィルター付き>(2万1000円)/MERIDIANサラウンドサウンドシステム(19万3000円)/ワイヤレスデバイスチャージング(1万4000円)/ClearSightインテリアリアビューミラー(10万2000円)/20インチ“スタイル5107”5スプリットスポーク<サテンブラック、グロスブラックインサート付き>(20万1000円)/ステアリングホイール<ヒーター付き>(3万9000円)/ブラックエクステリアパック(16万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(10万1000円)/ウインドスクリーン<ヒーター付き>(5万3000円)/スライディングパノラミックルーフ(23万円)/プライバシーガラス(7万2000円)/ピクセルLEDヘッドライト<シグネチャーデイタイムランニングライト付き>(21万2000円)/JaguarDriveコントロール<アダプティブサーフェイスレスポンス付き>(0円)/ダイナミックハンドリングパック(22万5000円)/パワージェスチャールーフブラインド(2万2000円)/40:20:40分割可倒式リアシート<ヒーター、センターアームレスト付き>(13万7000円)/16ウェイ電動フロントシート<ヒーター、運転席&助手席メモリー、マッサージ機能、2ウェイマニュアルヘッドレスト付き>(5万7000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1607km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:327.5km
使用燃料:38.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.4km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)

石井 昌道
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。 -
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.6.1デイリーコラム具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】
2026.6.1試乗記「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。

















































