クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4970×1880×1420mm/ホイールベース=2875mm/車重=2030kg/駆動方式=4WD/4.7リッターV8DOHC32バルブターボ(408ps/5000-5750rpm、61.2kgm/1600-4750rpm)/燃費=9.4km/リッター(JC08モード)/価格=1240万円(テスト車=1285万円/エクスクルーシブパッケージ<セミアニリンレザーシート、フルレザー仕様、DINAMICAルーフライナー>=45万円)

メルセデス・ベンツCLS550 4マチック ブルーエフィシェンシー シューティングブレーク【試乗記】

挑戦的とはメルセデスのこと 2013.01.10 試乗記 高平 高輝 メルセデス・ベンツCLS550 4マチック ブルーエフィシェンシー シューティングブレーク(4WD/7AT)
……1285万円

名門が名門たりえるのは、変化をおそれぬ勇気と柔軟性があるからこそ。メルセデス・ベンツは「CLSシューティングブレーク」で、再びワゴンの既成概念に立ち向かう。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

横綱の多彩な攻め

常に正々堂々と押し相撲で攻める横綱が、意表を突く技を繰り出してきた時の驚きは大きいものだ。相撲通に言わせれば横綱らしくないのかもしれないが、勝負事である限り、攻め方はいつも変わらないと考えるほうが甘いと言われても仕方がない。
2004年にメルセデスが初代「CLS」を発表した時の驚きは、そんな種類だったように思う。世の中の勝手な思い込みを見透かしたかのような鮮やかな一撃。正論と書いてベンツと読む、と言いたいぐらいに常に正攻法で、時として傲慢(ごうまん)なほど自動車とはこういうものだ、とそれぞれの時代のスタンダードを定義してきたあのメルセデス・ベンツが、こんな攻撃オプションも持っているのか、と感心し、また不意を突かれたことをなぜか悔しく思ったものだ。そのメルセデスが今度は新型CLSのステーションワゴン版をして「シューティングブレーク」と銘打ってきた。

シューティングブレークとは、随分と時代がかった呼び名を持ち出したものだが、またしてもメルセデスにやられた感がある。これは古き良き時代への憧れを呼び覚ます、セレブな響きを持つ名称である。
メルセデスの発表資料にも「シューティングブレークとは、1960年代の英国貴族がクーペスタイルの乗用車に余暇を楽しむための道具を収納する広いラゲッジスペースを設定した車両」とその由来が説明されている。確かに貴族的という点についてはその通りだろうが、それ以外の部分についてはちょっと異議がある。
というのも、かつてのシューティングブレークとは、本当に狩猟のために役立つ車というよりは、実用性は二の次三の次で、おしゃれや伊達(だて)さ、遊び心を仲間内で競うような車と言ったほうが正しい。実際に、テールゲートを開けるとそこには銃を2丁納めるための作り付けのケースがはめ込まれただけというものもあった。
そもそもアストンやジャガー、あるいはフェラーリなどの高性能GTやスポーツクーペをベースにしたシューティングブレークでは、森の中やヒースの原野に足を踏み入れられるはずもない。馬の代わりに使うのなら「レンジローバー」でも持って来ないと役に立たないだろう。
要するに、現実にはほとんど使い物にならないからこそ面白く、風流であるという数寄自慢のための狩猟用スペシャルティーワゴンと言うべきものだった。その呼び名自体に、ユーモアというか皮肉が込められていたのだ。

半月状のウィンドウグラフィックが印象的なサイドビュー。道行く人を振り向かせるインパクトは十分。
半月状のウィンドウグラフィックが印象的なサイドビュー。道行く人を振り向かせるインパクトは十分。 拡大
インパネデザインは「CLS」セダンに準じる。試乗車はインパネやドアパネルにまで本革を張った「エクスクルーシブパッケージ」装着車。内装色はブラック/ポーセレン。
インパネデザインは「CLS」セダンに準じる。試乗車はインパネやドアパネルにまで本革を張った「エクスクルーシブパッケージ」装着車。内装色はブラック/ポーセレン。 拡大
4.7リッターV8ツインターボエンジンは408psを発生。駆動方式は4WD。前輪に45%、後輪に55%のトルクを配分する。
4.7リッターV8ツインターボエンジンは408psを発生。駆動方式は4WD。前輪に45%、後輪に55%のトルクを配分する。 拡大
メルセデス・ベンツ CLSシューティングブレーク の中古車webCG中古車検索

現代のシューティングブレークは実用的

貴族や中東の王族など限られた好事家向けのいわばオートクチュールとは異なり、現代のシューティングブレークはれっきとしたカタログモデルだから、“無用の用”を楽しむ特注スペシャルモデルではもちろんあり得ない。メルセデスは百も承知で、そんな遊び心と粋を感じさせるネーミングを使ったと捉えるべきだろう。

メルセデス自身はこのモデルで「スポーツクーペツアラー」という新たなカテゴリーを作ったと主張しているが、呼び名はどうあれ、「CLSシューティングブレーク」の実像はスタイリッシュなボディーを持つステーションワゴンである。当然ながら、どんなにスタイル優先に見えても必要十分な実用性は確保されている。
CLSシューティングブレークのホイールベースは「Eクラス」と同じ2875mmだが、ボディーサイズはそれよりひとまわり大きく、全長×全幅はほとんど5×2mといったところ。これだけのサイズとなれば多少屋根が低かろうがテールゲートが寝ていようが、実用上の不都合があろうはずはない。
実際、後席のレッグルームも余裕十分で、ルーフライニングが巧妙に抉(えぐ)られているおかげでヘッドルームにも問題はなく、初期型CLSのように狭い所に閉じ込められているような閉所感もない。大きなボディーサイズをぜいたくに使いながら、ちょうどいい具合のタイト感とラグジュアリー感が演出されている室内だ。

ラゲッジルームも外観から心配するほど使いにくくはない。確かにバンパー際の後端の高さは限られているが、VDA式の荷室容量は通常時で590リッター、レバーで後席のバックレストを倒せば最大1550リッターまで拡大できるから、かなり大きな獲物も余裕で積めるはずだ。

「エクスクルーシブパッケージ」ではシートがセミアニリン仕上げに。
「エクスクルーシブパッケージ」ではシートがセミアニリン仕上げに。 拡大
スタイリング重視のワゴンとはいえ、メルセデス・ブランドならやはり実用性は生命線。セダンでは2人掛けとされた後席は3人掛けとなる。
スタイリング重視のワゴンとはいえ、メルセデス・ブランドならやはり実用性は生命線。セダンでは2人掛けとされた後席は3人掛けとなる。 拡大
ラゲッジルームの容量は通常時が590リッター。最大で1550リッターまで広がる。50万円のエクストラを支払えば、フロアをしゃれたウッド張りにすることもできる。(クリックすると後席が倒れる様子を見ることができます)
ラゲッジルームの容量は通常時が590リッター。最大で1550リッターまで広がる。50万円のエクストラを支払えば、フロアをしゃれたウッド張りにすることもできる。(クリックすると後席が倒れる様子を見ることができます) 拡大

安心できるラグジュアリーさがうれしい

日本仕様のラインナップは3.5リッター直噴V6を積む「CLS350」と4.7リッターV8直噴ツインターボで4マチックの「CLS550」、それに5.5リッター直噴V8ツインターボの「CLS63 AMG」という3車種。550は4WDのせいで最も重く、車重は2トンを超えるが、それでも408ps(300kW)と61.2kgm(600Nm)を生み出すV8ツインターボと最新の7Gトロニックプラスのパワートレインはその重さをまったく苦にしない。そのうえ、4マチックにもかかわらずノイズや振動をまるで感じさせない滑らかさはさすがと言うほかない。
550はスプリングレートやダンパー減衰力を電子制御するエアマティックサスペンションが標準装備されているが、スポーツモードを選んでも決してハードではなく、あくまでラグジュアリーとスポーティーのバランスを考えてあるところが好ましい。ボディーの上下動は比較的大きめだが、フラットさは失われず、かつ強力なダンパーが揺れ戻しをきっちり抑えるという挙動はかつてのメルセデス・サルーンをほうふつとさせる。高速でも快適でくつろげるスタビリティーとラグジュアリーさがメルセデスの真骨頂である、と常々思っている私には最近で最もメルセデスらしいモデルに感じられた。
ちなみにリアサスペンションにのみセルフレベリングが付くCLS350はさらにまったり、ゆったりしており、個人的にはこちらがベストだと思う。体にピチピチフィットしたタイトなスーツのようなスポーティーさは他のブランドに任せ、メルセデスはクラシックさを残した伊達なスーツ、いや背広レベルの軽快さにとどめておいてほしいものだ。

それでも保守的だと言う人はいないはず。そのデザインとネーミングだけでも極めて挑戦的である。本来は、例えばレクサスなどがリスクを承知で攻め手を工夫するべきなのだが、逆に先手先手を押さえているのはメルセデスのほうである。伝統を誇る名門ほど変化を恐れないものではあるが、ここはひとつ横綱に一矢報いる挑戦者の奮起を期待したい。

(文=高平高輝/写真=高橋信宏)

「CLS550 4マチック」ではエアサスペンションが標準。ばね定数、減衰力、車高を自動的に調整する。
「CLS550 4マチック」ではエアサスペンションが標準。ばね定数、減衰力、車高を自動的に調整する。 拡大
タイヤサイズは前が255/35R19で、後ろが285/30R19。ホイールはAMGの5スポークが標準。
タイヤサイズは前が255/35R19で、後ろが285/30R19。ホイールはAMGの5スポークが標準。 拡大
長距離と短距離、2種のレーダーを使用した安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」を標準で搭載するなど、安全装備も充実している。
長距離と短距離、2種のレーダーを使用した安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」を標準で搭載するなど、安全装備も充実している。 拡大
試乗記の新着記事
  • BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
  • マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
  • カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
  • メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
  • 日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
試乗記の記事をもっとみる
メルセデス・ベンツ CLSシューティングブレーク の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。