第168回:次期「Sクラス」に搭載される最先端の安全システムを体験
2012.12.28 エディターから一言第168回:メルセデス・ベンツのテクノロジーワークショップに参加次期「Sクラス」に搭載される最先端の安全装備と運転支援システムを体験
シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ本社で行われた、最新テクノロジーワークショップに参加。その中でも、2013年に発表される予定の次期「Sクラス」に搭載されるであろう最新の安全システムについて報告する。
車線逸脱回避の装備とシステム
2013年の前半にも発表される予定の次期「メルセデス・ベンツSクラス」は、これまでのSクラスがそうだったように、最新のテクノロジーを満載しての登場となるはずである。特に安全装備、そして運転支援システムについては、メルセデス自身が「360度の視界を手に入れる」と表現する通り、あらゆる方向に機能する数多くのセンサーを搭載し、さらにはそれらで得た情報を統合的に解析することで、事故の防止や回避そして被害低減、さらにはリラックスしたドライブを可能にする最先端のシステムが搭載される予定だ。
参加したワークショップにて公開された内容のうちの一部については、シミュレーターで実際に効果を体験することもできたので、その辺りも交えて順番に解説していくこととしよう。
「アクティブレーンキープアシスト」は、対向車がいたり、あるいは隣のレーンに車両がいる時にレーンを逸脱しそうになると、片輪にブレーキをかけることでヨーを発生させ、車両をレーン内へと引き戻すシステムである。
そして「ステアリングアシスト搭載ディストロニックプラス」は、前方車両への追従走行を行うクルーズコントロールに、車線誘導機能を追加したもの。ステレオカメラで車線を認識し、電動パワーステアリングを制御して車両を車線内に収める。
かたやブレーキ制御、かたやステアリング制御なのが面白いが、開発スタッフに聞いたところ、安全装備である前者の場合、ブレーキ介入の方がドライバーの違和感が少ないのだという。ステアリング制御だと思わず介入に抗する操作を取ってしまうことがあり得るのだそうだ。
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衝突事故後の二次災害にも対応
「クロストラフィックアシスト搭載ブレーキアシストプラス」は、目の前を横切る車両や歩行者を検知して瞬時にブレーキ圧を高めるもの。瞬間的にブレーキペダルに足が乗れば、すぐさま最大限の減速Gを得ることができる。ドイツ国内の調査では、これにより交差点で発生する事故の27%を防止、もしくは被害低減できるという。
実際にシミュレーターで、その動作を“実体験”できた。油圧で動く6本の脚により前後左右に傾くカプセルの中には、現行Sクラスが丸ごと収められている。そして、その周囲には360度スクリーンで映像が映し出され、その運転席にいると、景色の流れと前後左右のGで、確かに実際にクルマを運転している状態に、とても近い感覚を得ることができる。
(実際には画面内を)走行していると、前方右手からクルマが飛び出してくるのが見えた。反応してブレーキペダルを蹴飛ばすと、車体が一気に前のめりになり減速(しているかのように感じられる)。何とか回避できた。
考えてみれば、実車でコレを体験するのは難しい。実際に道や車両を用意するだけでも大変だし、ブレーキングが遅れても実際に衝突させるわけにはいかないからだ。体験にはもちろん、開発においてもシミュレーターがどれだけ有用かは明白である。
ちょうど10年前にメルセデスが初めて導入した「PRE-SAFE」も、大幅な機能拡張を実現している。まず「PRE-SAFEブレーキ」には歩行者検知機能を追加。従来通り、衝突の危険を感知するとドライバーへの警告、ブレーキアシストの起動を行い、さらに72km/h以下では自動ブレーキをかけ、50km/h以下であれば衝突回避を可能とする。
興味深いのが「PRE-SAFEプラス」。これは後方センサーによって追突の可能性を検知すると乗員保護機能を起動し、さらに停車後のブレーキ保持を行う。これによって、例えば信号待ちで突っ込まれた際に交差点内に飛び出したり、横断歩道を渡る人を跳ねたりといった二次災害を防ぐのだ。
また「PRE-SAFEインパルス」は、前面衝突の際、乗員にかかる減速度が高まる前にシートベルトで乗員を拘束する。衝突して減速度が発生してからではなく、その前の段階で乗員を拘束するのがポイントで、これにより負傷を最小限に抑えることができるわけだ。
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後席にもベルトバッグ
セーフティー性能を語る上で、欠かすわけにはいかないのが視界である。新型Sクラスはライトシステムも最新鋭のものとしている。もはや内外装ともどもバルブは一切使われておらず、すべてをLED化。
さらに、対向車など遭遇した際にライトの一部をシャッターで隠し、できる限り照射範囲を確保しながら対向車の幻惑を防ぐ「アダプティブハイビームアシスト」や、路上に歩行者や動物が現れた際にメーター画面をナイトビューに切り替え、危険箇所の強調表示を行う「ナイトビューアシストプラス」などの新機能が備わるのである。
さらに後席シートベルトにも新機軸。「アクティブシートベルトバックル」は、ドアを開けるとバックルが立ち上がり照明がともってベルト装着をうながす。装着するとバックルは元の位置に戻り、腰椎をサポートする。そして「ベルトバッグ」は、衝突などの際にシートベルトが膨らみ、面積を拡大することで食い込みによる身体へのダメージを低減する。
以上、紹介してきたのはあくまで安全装備や運転支援システムだけである。当然、新しいSクラスともなれば、ボディーにシャシー、パワートレイン、インフォテインメント等々にも、これでもかと最新技術が投入されるはず。一体、どれほどの驚きをもったモデルが登場することになるのだろうか。そう遠くないはずの発表、大いに期待することとしたい。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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