MINIジョンクーパーワークスGP(FF/6MT)【海外試乗記】
サーキットに誘う最速のMINI 2012.12.21 試乗記 MINIジョンクーパーワークスGP(FF/6MT)……460万円
MINI史上最速のモデル「ジョンクーパーワークスGP」が登場。その卓越した走りを、スペイン・マヨルカ島のサーキットで試した。
硬派中の硬派
スペインのマヨルカ島で開かれた国際試乗会で「MINIペースマン」に乗ったとき、実はもう1台、サプライズがあった。島内の空港近くにあるちょっとしたレーシングサーキットで、「ジョンクーパーワークス(JCW)」をさらにスパルタンな方向に仕立て上げたスペシャルな最高性能モデル「GP」をドライビングするチャンスが得られたのである。
よく知られているように、現行MINIの一般的なモデルには、「ONE」「クーパー」「クーパーS」の基本3グレードがあり、ONEが低出力・低速トルク型1.6リッター自然吸気(NA)の98ps、クーパーが高出力型1.6リッターNAの122ps、クーパーSが1.6リッター直噴ターボの184psと、グレードが上がるにつれてエンジンのチューンとそれにともなうパワーおよびトルクが上昇していく。したがって当然ながら、そのパフォーマンスも上がっていく。
それらの一般的モデルレンジの上に存在するホットなモデルがJCWだ。これはクーパーSをベースにしてエンジンの最高出力発生回転数を上げるなどした結果、同じ1.6リッター直噴ターボながらパワーを211psに、トルクを26.5kgmに引き上げたうえ、トランスミッションは他の3モデルが6段MTと6段ATの両方の設定があるのに対して、JCWは登場からずっとMTのみで最近になってようやくATが加わったことからも、硬派向けに特化させたモデルであることが分かる。サスペンションもクーパーSよりさらに強化され、標準で履くタイヤも16インチ径から17インチ径へとサイズアップされている。
で、そのJCWをベースにしてさらに全方位のパフォーマンスを磨き上げた特別なモデルが、今年のパリサロンでデビューし、年末から2000台の限定で生産されるその名も「JCW GP」である。
ニュル8分23秒の実力
ではこのGP、すでに十分に速く、十分にスポーティーなJCWとどこが違うのか。まず、単なるJCWが今や最新のペースマンを除くすべてのボディーに設定されているのに対して、GPはハッチバックにしか存在しない。これはハッチバックがMINIの最もトラディショナルなボディー形態であることに由来しているというから、筋のとおった理由だと思う。しかもGPのハッチバックボディーにリアシートはなく、2シーターとされていて、リアシートのあった部分にはボディー左右を結ぶ補強バーが走っているという硬派ぶりなのだ。
さらにこのボディー、フロントの大型スポイラーやサイドスカート、それにリアのルーフエンドスポイラーなどで空力的に武装していて、空気抵抗が6%減少しているという。ボディーリフトに対する抑えも万全で、リアバンパー下のディフューザーとルーフエンドスポイラーによって、後車軸のリフトが90%も軽減されているのだという。
サーキット走行を爽快にこなせるロードカーというGPのキャラクターを実現するべく、シャシーにも大幅に手が入れられた。MINIの生産型としては初めて車高調整式サスペンションが標準装備され、車高はJCWより20mm低められたほか、フロントにはビルシュタインの倒立ダンパーが用いられ、キャンバーは一段とネガティブ方向にセットされた。さらに、ハンドリング関連の電子制御デバイスたるDSCにはGPモードが加えられている。
ちょっと驚いたのは標準タイヤで、215/40R17へとJCWより扁平(へんぺい)ワイド化されて専用デザインのアロイホイールに履いたそれは、なんと韓国のクムホ・エクスタV700なるスポーツタイヤだった。一方、ブレーキはフロントに6ピストンキャリパーを備える。
エンジンは細部のセッティング変更で218psを手に入れ、1160kgまで削られたボディーを0-100km/hは6.3秒で加速させ、242km/hの最高速に導く。それらの結果、ニュルブルクリンク北コースのラップタイムはJCWより12秒短縮されて、8分23秒を記録したという。
拡大
|
拡大
|
よく煮詰められたロードゴーイングレーサー
さてそのMINI JCW GP、ドライビングしてみるとどんなクルマか。JCWベースのワンメイクレース仕様、通称カップカーに先導されて、いくつかのヘアピン状のタイトベンドが直線と高速コーナーで結ばれたサーキットを数ラップする。実のところ、ペースカーのペースが少々抑え気味だったため、ヘアピン以外では限界まで持ち込むことができなかったのが心残りだが、GPがすこぶるファン・トゥ・ドライブなクルマなのは体感できた。
こういうクルマに最も必要な条件のひとつにステアリングのフィールがあると僕は常々思っているが、その点このJCW GPはほとんど文句なしだった。基本は通常のMINIと同じEPS(電動パワーステアリング)だが、まるでパワーアシストなしのように路面の感触をネットリと伝えてくるのに加えて、コーナリング中の操舵(そうだ)力が重すぎず軽すぎずのちょうどいいレベルなのも素晴らしい。これなら例えば耐久レースにでも出て長時間ドライビングし続けても、腕が上がるということはあるまいと思った。
前記のように、高速コーナーにおける限界を味わえなかったのは残念だが、ヘアピンのようなタイトベンドでは当然スロットルコントロールは必要であるものの、過剰なアンダーステアに見舞われることはなく、インの縁石に内側前輪を乗り上げながら気持ちよく脱出していける。と同時に、コーナーに進入する際に減速Gを立ち上げるブレーキもコントロールしやすく、そのブレーキング操作自体が気持ちいい。
拡大
|
拡大
|
もうひとつ、いい意味で意外だったのが乗り心地だった。これだけ気持ちよくサーキットを攻められるハンドリングを持っていながら、サーキットのスピードで味わった乗り心地は、すこぶる快適なものだったといえる。もちろん、路面の荒れた市街地を低速で流すような場合には、それなりに上下に揺すられるであろうことは想像できるが、公道上でも高速道路のような舞台なら、乗り心地に大きな不満を抱くことはないのではないかと思う。
つまりJCW GPは、よく煮詰められたロードゴーイングレーサーという印象のクルマで、特にステアリングやブレーキや乗り心地など、肌で感じる部分のフィールがいいのが好ましい。限定生産2000台で、そのなかの200台が日本市場への割り当てだという。さて、スパルタンなMINIがお好きな硬派諸兄には、うれしい悩みの種の出現というわけである。
(文=吉田 匠/写真=BMWジャパン)

吉田 匠
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
NEW
トヨタRAV4アドベンチャー(後編)
2026.8.30思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」をドライブ。前編ではそのパワートレインの中間加速のよさを語った山野。後編ではそこをもう少し掘り下げて聞くとともに、止まる、曲がるも含めたシャシー全体の印象を聞いてみた。 -
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】
2026.8.29試乗記「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――ポルシェ・タイカンGTS編
2026.8.28webCG Moviesレーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。最高出力700PSの「GTS」グレードに、ワインディングロードでむちを当てた印象は? -
酷評もされたBEVのフェラーリが4000万ドル!? 「ルーチェ」の初物に誰が、なぜ大金を出したのか?
2026.8.28デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車として話題になった「ルーチェ」。その特別仕様の生産0号車が、米国内のカーオークションにおいて4000万ドル(約64億円)という衝撃価格で落札された。その背景について、事情に詳しい西川 淳がリポートする。 -
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは?
2026.8.27小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(前編)
2026.8.27あの多田哲哉の自動車放談BMWの期待がかかる電気自動車(EV)「iX3」の新型に、元トヨタの多田哲哉さんが試乗。その仕上がりを、BMWとの協業経験もあるエンジニアはどう評価するのだろうか?