レクサス・オールラインナップ試乗会【試乗記】
上を目指して、ゆっくり歩け 2012.12.09 試乗記 レクサスCT200h“バージョンL”(FF/CVT)/IS350C“Fスポーツ”(FR/6AT)/IS F“サーキット・クラブ・スポーツ・パーツ”(FR/8AT)……482万1400円/687万4200円/1608万885円
最近のレクサスの口ぐせは“スポーティー”。ついにはコンバーチブルの「IS C」にまで「Fスポーツ」仕様が加わった。オールラインナップ試乗会で気になる3台に乗り、レクサスが主張する「スポーツ」についてあらためて考えた。
柔らかいのは悪いことか
レクサスのハイブリッド専用車種である「CT200h」は、2年ほど前の発売直後から評判が高く、私自身も好印象を抱いていた。パワートレインはご存じのように「プリウス」と基本的に同一、すなわち1.8リッター4気筒エンジン(99ps)とモーター(82ps)を組み合わせ、トータルで136psのシステム最高出力を発生するTHSIIだが、もちろん単にボディーを着せ替えただけの車ではなく、そのかっちりとした身のこなしとしなやかな乗り心地は、レクサスであることを納得させるに十分な仕上がりだった。
この点が同じくハイブリッド専用車の「HS」とは大きな違いであり、その辺りをユーザーがちゃんと見極めていることは、これまでの販売台数に正直に表れていると言えるだろう。モデルチェンジ直後の「GS」を別にすれば、CTはSUVの「RX」と並びレクサスで一番ポピュラーな車、国内で一番売れているモデルなのだ。
実はこのCT200hも8月末にマイナーチェンジを受け、若干の改良が加えられている。まずセンターコンソールとラゲッジルームにAC100V/1500Wのアクセサリーソケットが新たに設けられた。ハイブリッド車を非常時に発電機としても使用できるようにという配慮である。また、サスペンションの特性もよりしなやかな乗り味を実現すべく見直されたという。
ただし、従来型との差異を明確に感じることはできなかった。むしろ試乗した「バージョンL」でも十分に引き締まっており、きびきびした反応、タイトなインテリアと相まって“スポーティー感”は過剰なほど。欧州のコンパクト勢よりずっと急(せ)かされている感じがする。
本音を言えばもっとソフトで、くつろげる感じが欲しい。何しろ、上質さを追求したコンパクトなハイブリッドモデルは他に見当たらない。スポーティーさを押し出すことで間口を狭めるのではなく、誰でもサラリと乗れるプレミアムコンパクトは貴重な存在だと思う。このCTもいずれはスピンドルグリルを与えられ、もっと強く自己主張することを求められるのだろうか?
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あらためて「スポーツ」を考える
レクサスのスポーティー化路線は今やシリーズほぼ全体に行き渡り、電動オープントップを持つコンバーチブルの「IS C」にも他のレクサス同様スポーティーな「Fスポーツ」が追加設定されている。これは専用のスポーツサスペンションと18インチアルミホイールに加え、専用のグリルとバンパー、さらに本革ステアリングホイールやスポーツシートなどで仕立てられた仕様である。
といっても、実際に乗ってみると心配するほどスパルタンではなく、シャープな挙動としなやかな乗り心地が実にいいあんばいでバランスしている。
初期型「IS」に長く乗っていた経験から言うと、かつては滑らかだがどこか突っ張った印象で、挙動にしなやかさが足りないと常々感じていたものだが、何度かマイナーチェンジを受けるうちにしなやかさも身につけ、今のISは見違えるようになっている。
コンパクトなサイズの上質なセダン/クーペを求めてISを選んだ(実はかなりの部分を占める)比較的年配のカスタマーからも、このようなラグジュアリー路線は歓迎されるのではないか、と思っていたのだが、そろそろ新型ISがうわさされるこの時期にIS CにもFスポーツが追加されるということは、やはりスポーティーという主張が必須なのだろうか。ただし、その割にコスメティック以外は、ごく常識的なセッティングであり特段Fスポーツと感じさせるところはない。
富士スピードウェイにちなんだ「F」の文字はレクサスにとって特別な意味を持つものだったはずだが、すべて右へならえでFスポーツを大盤振る舞いしては、かえってその特別なモデルを埋没させてしまうのではないかと心配だ。
そもそもで言えば、ISは初めからスポーティーというキャラクターを与えられており、さらに「IS F」という高性能のスペシャルモデルも存在するのだから、このうえさらにスポーツ性を強調したモデルが必要なのかという疑問もある。曖昧なメッセージを持つバリエーションを追加するより、全車をこの足まわりにそろえても何ら不都合はないと思う。
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見た目ほど怖くない「CCSP」
こんな車で一般道に乗り出したら、あっという間に舌をかむなど散々な目に遭うのではないか。そんな不安に襲われる見た目とは裏腹に、この「サーキット・クラブ・スポーツ・パーツ(CCSP)」は実にしつけが行き届いていた。
その名の通り、サーキット走行をも視野に入れた極めつけのスポーツモデルで、TRD(トヨタテクノクラフト)が、IS Fをベースに風洞実験やポストリグなどレーシングカーと同様の手法で開発したいわゆるコンプリートカーである。
パッケージにはステージ1からステージ3まであり、最高レベルのステージ3ではカーボン製のエンジンフードや前後スポイラーから減衰力調整式サスペンションキット、マグネシウム鍛造ホイール、LSD、前後のパフォーマンスダンパーやチタン製マフラーまで多岐にわたるスペシャルパーツが組み込まれている。そのステージ3ともなれば税込み550万円余りと高価だから、中途半端なサーキット仕様ではもちろん困るのだが、実際に短時間ながら一般道を走ってみても効果はてきめんだった。
ナンバー付きのロードカー(ナンバーが付かない特別モデルも相談に乗るという)として開発されたのだから当然かもしれないが、単に足まわりを締め上げたような車とは別物であり、初期型のIS Fに比べれば、このCCSPのほうがよほど滑らかにしなやかにサスペンションがストロークする。もちろん、強力なスタビライザーの効果や機械式LSDによる強烈なトラクションがタダものではないことを見せつけるのだが、ラフなハーシュネスや突き上げなどは感じられない。硬い足まわりと走行性能およびスポーティーさが直接結びつくものではないということをいみじくもこの派手なIS Fが物語っている。
ある意味贅(ぜい)を尽くした足まわりが素晴らしい仕事をすることは疑いないのだが、やはり見た目というかセンスはちょっといただけない。カーボンのウイングを立てるという方法ではなく、もっと大人っぽく洗練された、それでいて迫力をにじませるような手はないものだろうか?
(文=高平高輝/写真=高橋信宏)
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高平 高輝
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