「ニュートラルポジションの使いかた」

2001.02.02 クルマ生活Q&A 松本 英雄 トランスミッション
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「ニュートラルポジションの使いかた」

たいていのAT車の取扱説明書には,ニュートラルポジションのまま長距離あるいは高速で走行すると、ATが損傷するおそれがあると書いてあります。なぜでしょうか。ATのニュートラルとMTのニュートラルとは別物なんでしょうか。私としては、停車直前にニュートラルポジションにすれば、クリープトルクをカットできる分ブレーキパッドの摩耗を節約できるのではないかと思っているのですが。やめたほうがいいでしょうか。(名古屋市OAさん)

お答えします。取り扱い説明書に書いてある通り、ニュートラルレンジで下り坂などを惰性で走るとトランスミッションが壊れる可能性はあります。

AT車はエンジンの回転を受けてトランスミッション内部の油圧ポンプを回し、このオイルで内部のギヤの潤滑をおこなっています。トランスミッションからタイヤへ伝える回転とエンジンの回転とは本来見合っているという設定になっています。

ニュートラルポジションのまま惰性でクルマを走らせていると、トランスミッション内部ではアイドリング(=低回転)の分しか油圧ポンプが回らないため潤滑油がいきわたらない、という結果をひきおこします。そうなると、ギアの焼き付きや内部の大きな摩耗をまねく恐れがでてきます。

停止中にニュートラルに入れるのはATにやさしい乗りかたです。信号待ちなどでDレンジに入れたままクリープ状態で停止していれば、トルクコンバーター内部でエンジンからの出力が熱となってフルードを早く劣化させます。停車直前にニュートラルにいれてしまうとエンジンブレーキがきかず、慣性でクルマの速度は増し、かえってブレーキに負担がかかるということにもなりかねません。場合にもよりますが、ギアをニュートラルにいれるのは、停車してからがいいと思います。

松本 英雄

松本 英雄

自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。