「デスモドロミック・バルブとは?」

2001.09.05 クルマ生活Q&A 松本 英雄 エンジン
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「デスモドロミック・バルブとは?」

オートバイ「ドカティ」のエンジンに採用されている特殊なバルブ「デスモドロミック」とは何ですか? 私のバイクはドカティ900SSです。(名古屋AOさん)

お答えします。「デスモドロミック」とは日本語で「強制開閉装置」というエンジンのバルブ機構システムです。現在ポピュラーなのはスプリングを用いてバルブを開閉する仕組みですが、デスモドロミックの場合は開くカムと閉じるカムが強制的にバルブを開閉する機構になっています。

限られた排気量で出力を高めるためには、より多くの空気を燃焼室に入れることと、エンジンを高回転まで回しても確実にバルブの開閉ができることが大事です。コイルスプリングではサージングが起こり開閉が不確実なことがあります。

昔は、空気をたくさん入れるためには吸気のバルブリフト量(バルブが開く量)が大きいほうが有利とされていたので、スプリング製にくらべてバルブのリフト量が大きくとれるデスモドロミックがレーシングカーなどに採用されました。

デスモドロミックの歴史は古く、1912年のグランプリレースでプジョーに搭載されたDOHC4バルブのエンジンはこのデスモドロミックが使われていました。ドカティが今でもデスモドロミックを使っている理由には1950年代からこのデスモドロミックをレース等で使っているということもあり、その高性能なメカニズムと同時に際立つ名前からも商品価値があったのではないでしょうか。

現在はバルブスプリングの性能向上やバルブリフト量を上げても空気が入る量は決まってくることから、複雑さのわりに多くの良い点も見いだせなくなり使われなくなりました。

松本 英雄

松本 英雄

自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。