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【スペック】全長×全幅×全高=4624×1811×1429mm/ホイールベース=2810mm/車重(ドイツ国内値)=1595kg/駆動方式=FR/2リッター直4DOHC16バルブターボ(245ps/5000-6000rpm、35.7kgm/1250-4800rpm)(欧州仕様車)

BMW 328iツーリング(FR/8AT)【海外試乗記】

カッコだけじゃないワゴン 2012.08.13 試乗記 河村 康彦 BMW 328iツーリング(FR/8AT)

BMWの基幹車種である「3シリーズ」の新型に、ワゴンモデルが登場。その走りと使い勝手を、本国ドイツで試した。
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セダンの長所はそのままに

2012年の1月にまずはセダンが導入され、その姿を目にする機会も増えてきた新型「BMW 3シリーズ」。ここに紹介するのは、BMWの流儀で今回も「ツーリング」と呼ばれる、そのステーションワゴン版だ。

先代モデルと同様に、全長、全幅、全高やホイールベースの値は、セダンのそれと同一。「従来型よりも居住性を向上させ、ボディー剛性も一段と高めながら、車両重量は低減した」というキャッチフレーズもまた、新型セダン登場の折に耳にしたものと同じである。

そんな新しい「3シリーズ ツーリング」を目の前にして、「おおかた予想できた」と「予想だにしなかった」、二つの感想が入り交じった。

予想できたことというのは、例えば視覚的な重心がより後ろに下がり、セダン以上にロングノーズ感が強調されたスポーティーなルックスに仕上がっていること。今や3シリーズ ツーリングの良き伝統となった、小物の出し入れの際などに威力を発揮するガラスハッチの採用もその一つに挙げられる。

一方、後者は、セダンとは異なり、デビューと同時に「Mスポーツパッケージ」が投入された点。ハイパフォーマンスモデルの「M3」を除く「3シリーズ」としては初めて、電子制御式可変減衰力ダンパー付きの「アダプティブMスポーツサスペンション」がオプション設定されたのも予想外だった。

ラグジュアリー、モダン、スポーツと、3種類のデザインテーマで内外装や装備品がコーディネートされるのは、セダンの場合と同様。もっともこれは、“想定内”のほうである。

 
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インテリアの様子。セダン同様、センターコンソールはややドライバーの方を向いたレイアウトが採用されている。
インテリアの様子。セダン同様、センターコンソールはややドライバーの方を向いたレイアウトが採用されている。 拡大
ヘッドランプは伝統の複眼式。ランプとグリルは初めてひとつながりのデザインになった。
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日本で威力を発揮する!?

FRの駆動レイアウトを誇示するかのような、BMWならではのロングノーズなプロポーションに、大きな傾斜角を持つガラスハッチの組み合わせ。ステーションワゴンではありながら、新しい「3シリーズ ツーリング」は、荷室の容量だけを重視したようなパッケージングからは一歩引くことで、独自の個性を手に入れている。

一方で、「先代モデルより後席ヘッドクリアランスを9mm広げ、ニースペースも17mm拡大」などと居住性の改善をうたいつつ、さりげなく使い勝手のよさもアピールしてはいる。

具体的に言えば、後席を立たせたフル乗車時での荷室容量は495リッターが確保されており、「従来に比べ35リッターのプラスであると同時に、このクラスのベンチマークになる」とのこと。
地上から62cmと低めにとられたローディングハイトや拡幅されたテールゲート開口部も、基本的な使い勝手のよさを追求したものだ。全モデルでテールゲートを電動化したこと、さらにそのテールゲートを手を使わずリアのバンパー下に足先をかざすだけで開けられる「スマートオープナー」がオプション設定された点も見逃せない。

コストアップや重量増といったハンディキャップを抱えるのは致し方ないとして、電動ゲートは、一度使ってみれば“病み付き”になるアイテムと言える。リアのガラスだけが開くハッチは、カタログ上でライバルに差を付けるだけではない。引き出したトノカバーは、そのままDピラーに沿って上方に跳ね上げられる構造になっていて、ガラスハッチからの小物の出し入れに大きな威力を発揮するのだ。

こうしたガラスハッチは、バックで駐車することの多い日本でこそ有用な装備だとも言える。前述のようにリアウィンドウの傾斜角が大きいこともあり、開閉に際して人が後ずさりするスペースを、車両後方に確保せずに済むからだ。

先代モデルに比べ、全長は97mm、ホイールベースは50mm延長。より広い室内空間が確保された。
先代モデルに比べ、全長は97mm、ホイールベースは50mm延長。より広い室内空間が確保された。 拡大
傾斜角が大きくとられたリアハッチ。Dピラー下部には、BMWが「ホフマイスターキンク」と呼ぶ特徴的なカーブが見られる。
傾斜角が大きくとられたリアハッチ。Dピラー下部には、BMWが「ホフマイスターキンク」と呼ぶ特徴的なカーブが見られる。 拡大
荷室の容量は、5名乗車時で495リッター。40:20:40の分割可倒式リアシートを倒すことで、最大1500リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると、別アングルからの荷室が見られます)
荷室の容量は、5名乗車時で495リッター。40:20:40の分割可倒式リアシートを倒すことで、最大1500リッターにまで拡大できる。(写真をクリックすると、別アングルからの荷室が見られます) 拡大

走りの質に妥協なし

そんな新しい3シリーズ ツーリングをテストドライブした印象は、それこそ“予想どおり”なものだった。
すなわち、基本的に「セダンの3シリーズとウリふたつ」。新型「3シリーズセダン」に乗った経験のある人なら、そのままそのテイストをイメージしてもらえればオーケーなのだ。

本拠地ミュンヘンの郊外をベースに開催された国際試乗会に用意されたのは、「328iラグジュアリー」。搭載される2リッターのターボ付き直噴4気筒エンジンは245psの最高出力を発生する“ハイパワー版”で、トランスミッションは欧州市場ではオプション扱いとされる8段ATだった。

ステーションワゴン化に伴う車両重量の増加は65kg。しかし、いざアクセルペダルを踏み込んでみれば、トルコン式のATではありながらMTライクな小気味よいシフト動作とともに、胸のすくような加速を見せる。それは、記憶に残る「328iセダン」のそれと変わらぬものだった。
ちなみに、0-100km/hの加速タイムは6.0秒で、セダンと同じ値。数字の上でも動力性能に差がないことは証明されているわけだ。

フットワークに関しても基本的に同様である。4本のタイヤはそれぞれバランスよく仕事をこなして、軽快かつ安定感にも富んだハンドリングをもたらす。「歴代3シリーズの中で最高!」と思われる、しなやかな乗り味も健在だ。
実は、60km/h程度までの速度域で荒れた路面を通過すると“振動波形がややとがったショック”が伝わり、ランフラットタイヤを装着していることを意識させられる場面もあったのだが、テスト車両が標準の17インチに代えて18インチを履いていた影響は考慮する必要がありそうだ。

もっとも、何から何まで完全にセダンと同一というわけではない。前述のタイヤサイズも関係があるかもしれないが、例えば、後輪から伝わるロードノイズはセダンより大きい印象があったし、セダンでは全く気にならなかった低周波のドラミングノイズも、少しは鼓膜を刺激した。

とはいえ、その差はわずか。例えルックスがセダンよりも好みだという理由だけでも「選ぶ価値アリ!」なのが新しい3シリーズ ツーリング。
デリバリーは、ヨーロッパ市場を皮切りに9月に開始。日本にも年内には上陸するものと見込まれている。

(文=河村康彦/写真=BMWジャパン)

スポーティーな走りをウリにする一方で、エンジンやトランスミッションを統合制御し燃費を最大20%向上させるという「ECO PROモード」も全車に備わる。
スポーティーな走りをウリにする一方で、エンジンやトランスミッションを統合制御し燃費を最大20%向上させるという「ECO PROモード」も全車に備わる。 拡大
フロントに縦置きされる、2リッター直4ターボエンジン。245psと35.7kgmを発生する。
フロントに縦置きされる、2リッター直4ターボエンジン。245psと35.7kgmを発生する。 拡大
 
BMW 328iツーリング(FR/8AT)【海外試乗記】の画像 拡大
 
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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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