ホンダ・シビックiE Lパッケージ(CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・シビックiE Lパッケージ(CVT) 2000.11.03 試乗記 ……167.8万円 総合評価……★★★近未来のイモムシ
アッと驚くミニバンルックで登場した7代目シビックのハッチバックモデル。ひとまず5ドアだけなのも意外だが、MM(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想への回帰を掲げ、「スポーティ」を脱ぎ捨てたことに、一抹の寂しさも。
イモムシのような、しかしクリーンなラインのボディスタイルは、「あ、新しいシビック!」と街なかでの注目度なかなか高し。
ドアを開ければ、なるほど広い。ノペッとしたフラットフロアが新しい。グレー一色のインパネまわりは、近未来の殺伐さ。
ヒーンというCVTのかすかな唸りを聞きながらドライブすると、気になるのは「EPS」と呼ばれる電動パワステの不自然さ。アシストの増減も、中央に戻る反力の弱さも、前輪が遠くに感じられて、イヤだ。が、これも来るべき電気自動車時代への備えかも。ドライブフィールも近未来のイモムシだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年9月に登場した7代目シビック。ミニバン風に変身した5ドアハッチと、保守的な4ドアセダン「フェリオ」がまずデビュー。MM思想(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)を継承したという「スマートコンパクト」が開発テーマ。1.5リッターVTEC「リーンバーン」ユニット(105ps)をメインに据え、1.5VTEC(115ps)、1.5SOHC(105ps)、1.7VTEC(130ps)と、4種類のエンジンをラインナップ。トランスミッションは、5ドアに4ATかCVT、フェリオにはさらに5MTが用意される。FFのほか、4WDもある。
(グレード概要)省燃費モデル「iE」は、パワステ、パワーウィンドウ、電動ドアミラー、オートエアコン、キーレスエントリーなど、本革仕様が選べないこととタイヤがひとまわり小さい鉄チンホイールであること以外は、1.7リッターの「X」と装備面で遜色はない。
ノーマルより5.0万円高の「Lパッケージ」は、ドアミラーが電動格納式になるほか、マイクロアンテナ、運転席ハイトアジャスター、リアアームレスト、リアリクライニング機能などが追加装備される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
シフターをセンターコンソールに配して手の動きを少なくし、かつジグザグゲイトの採用で、明確にギアチェンジできるよう工夫されたインパネ。実際、使いやすい。それにしても、灰色一色の室内はなんとかならんのでしょうか。樹脂、トリム類の質感の低さも気になる。リサイクル性を優先したためか。
(前席)……★★
低めの着座位置。フラットなフロアは、たしかに新鮮。足元スッキリ、広々感あり。しかし、シートそのものは、平板かつ腰のない座り心地。クッションが薄い感じ。バックレストの控え目なサイドサポートは、意外に有効。
(後席)……★★★★
前席より居心地のいい後席が、シビックの変化を如実に物語る。足元、頭上ともスペースに申し分ない。後ろまで延びたルーフも、真夏にはありがたかろう。バックレストは、2段階のリクライニング機構付き(Lパッケージ)。
(荷室)……★★★
最大床幅130cm、奥行き80cm、パーセルシェルフまでの高さが50cm。後部座席の居住性を重視したためか、ラゲッジスペースはカローラセダンに一歩届かない。後部座席は、ダブルフォールディング可能な分割可倒式。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
低回転時に吸気バルブのひとつを休止させ、シリンダー内に混合気のスワール(縦渦)を発生させて、希薄燃焼を可能にした燃費指向型VTECユニット。とはいえ、「食うモノ食ってない」非力感がないのが立派。ホンダマルチマチックSことCVTは、エンジン回転数と増速感のギャップが少なく、つまり自然になった。街なかでは発進加速がよく、またエンジンブレーキがよく効く。低めのギアっぽいマッピング、とでもいいましょうか。乗りやすい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
汎用タイヤのせいか、硬い乗り心地。長いホイールベースの恩恵で高速道路での安定性は高いが、道路の継ぎ目などでは、ゴツゴツとした突き上げあり。もちろん、路面の悪い一般路でも。リアサスは、このクラスでは珍しいダブルウィッショボーンの独立式。とはいえ、ハンドリングは落ち着いた地味なもの。タックインも控え目で、「ハンドルで曲がる」タイプだ。
【テストデータ】
報告者:web CG 青木禎之
テスト日:2000年10月27日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2000年型
テスト車の走行距離:6137km
タイヤ:(前)185/70R14 88S/(後)同じ(いずれもブリヂストン B381)
オプション装備:アルミホイール+MDチューナーほか+Lパッケージ(電動格納ミラー+プライバシーガラス+マイクロアンテナ+運転席ハイトコントロール+後席リクライニング+後席アームレスト+スポットライト)=計13.0万円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:294.5km
使用燃料:31.0リットル
参考燃費:9.5km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























