トヨタ・アリオン A15(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリオン A15(4AT) 2002.01.30 試乗記 ……195.2万円 総合評価……★★★★お若い
“足のいいヤツ”だったり“丘のうえ”を走ったりしていた「カリーナ」の最新モデルが、2001年のクリスマスにデビューした「アリオン」である。名前こそ変わったが、旧「コロナ」こと現「プレミオ」の若やぎバージョンたる位置づけは同じまま。
「All In One」からという名前の由来通り、ミニバンに負けないシートアレンジの豊富さをウリとする。荷室と客室の隔壁をなくして、リアシートを大きくリクライニングできるようにしたり、長いホイールベースを活かして、前席のシートバックを後ろに倒して後席とつなげるフルフラットを可能とした。
アリオン15Aは、最廉価1.5リッターモデルながら上級グレードからほとんど装備レベルを落とすことなく、かつ軽い鼻先で軽快な走りを見せる。前マクファーソンストラット、後トーションビームというコンベンショナルな足まわりは素直で、意外や「リアを気持ちよく滑らせて」なんてドライビングにも対応する。カローラのモノを活用した「1.5リッターDOHC16バルブ+スーパーインテリジェント4段AT」はいかにも手慣れたドライブトレインで、ソツなく、イヤミなくアリオンを走らせる。ホントに若い人にはどうかと思うが、「お若い」と言われたいヒトにはオススメ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
プレミオ/アリオンは、2001年12月25日から販売が開始されたトヨタのミディアムセダン。プレミオはコロナ、アリオンはカリーナの後継モデルとなる。グリル上下やドアハンドル、細いモールなどにメッキ調の“光りモノ”を使用したのがプレミオ。アリオンはボディ同色となる。5ナンバー枠内のサイズながら、長いホイールベースによる広いキャビンと豊富なシートアレンジを実現。特にリアシートは、荷室との隔壁をなくすことで、背もたれを大きく後にリクライニングできるようになった。エンジンは、いずれも1.5、1.8、2リッターの3種類。FFのほか、1.8リッターモデルには4WDも用意される。
(グレード概要)
アリオンは排気量によって小さい順に「A15」「A18」「A20」と分けられる。「A15」の上位モデルとの違いは、ファブリックの「ダークグレー」内装しか選べず、濃色ガラス、オプティトロンメーター、本革巻きステアリングホイールなどを備える「Sパッケージ」が用意されないこと。とはいえ、「電動格納式リモコンミラー」「ワイヤレスドアロック」「オートエアコン」など、日常ユースに必要な装備は揃っている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
「木目調パネル」が使われるプレミオに対し、アリオンは「漆黒木目調」がメインとなる。「スポーティな若々しさを演出」(プレス資料)したそうです。計器類は、オプティトロンメーターは採用されず、黒い盤面の「アナログメーター」だが、何の不満もございません。ステアリングホイールは、ウレタンの3本スポークタイプ。
(前席)……★★★
プレミオと比べると、一応スポーティな位置づけのアリオンだが、シートに違いはない。柔らかく、ホールド性はあまり考慮されず、小ぶりなサイズ。ドライバーズシートには、座面と背もたれを一体に調整できるダイヤル式シートリフターが付く。プレミオ/アリオンの前席には、グレードを問わず「WIL(Whiplash Injury Lessening)」と呼ばれる頸部傷害軽減機構が採り入れられた。これは、追突された際に、上体がシートに沈み込んで頭部が急激に後ろに動くのを防ぐものだ。
(後席)……★★★★
ミニバン2列目なみのスペース、のみならず、シートアレンジまで獲得したアリオンの後部座席。足もとは広く、ヘッドクリアランスにも不足はない。バックレストの後ろには「可動式パッケージトレイ」が採用され、大きなリクライニングを可能とした。ただしこのトレイ、動くだけでなく簡単に取り外せるので、扱いに慣れないと、リクライニングの際にやたらと外れて閉口する。トヨタらしからぬユーザビリティの低さ。マイチェン時の重要カイゼン項目だろう。
(荷室)……★★★
ラゲッジルームのカーペットとサイドトリムは室内と同色。「上質感を演出しました」(カタログ)。……というより、プレミオ/アリオンは通常のセダンと異なり、トランクとキャビンを隔てるバルクヘッドを持たないので、荷室からのノイズ侵入を防ぐためには、そもそもトランク内の騒音レベルを低める必要がある。「セルシオ並」と開発陣が胸を張るトランク内の厚いトリムは、吸音効果を高めるためだ。セダンのコンフォートとミニバンの多彩なシートアレンジを両立させるには隠れた努力が必要で、しかしそれをセールスポイントにするあたり、さすがは商売上手!
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
1.5リッター直4「1NZ-FE」ユニット。可変バルブタイミング機構「VVT-i」を備え、109ps/6000rpmの最高出力と14.4kgm/4200rpmの最大トルクを発生。1.8リッターモデルと同じギア比をもつ4段ATと組み合わされる(もちろん、ファイナルは低い)。平成22年燃費基準と平成12年基準排出ガス75%低減レベルを達成。カローラでは耳につく「ビーン」という共鳴音は、吸・遮音材を多用したミディアムセダンたるアリオンでは、よく抑えられる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
軽いステアリング、ソフトな乗り心地、しかしノーズの軽さに、かすかに“スポーティ”のかおりあり。アリオン15Aのウェイトは1140kgと、2リッターモデルより100kgも軽いのだ。走りは全体に軽快で、バランスのいいシャシーに“足のいいヤツ”の残滓あり。1953年生まれの開発主査は、プレミオ/アリオンの開発を進めながらテストコースを走る楽しさに目覚めたというから、アリオンを買うアナタも、まだ遅くはない!?
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:844km
タイヤ:(前)185/70/R14 88S(後)同じ(いずれもトーヨーJ43)
オプション装備:/DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションワゴン+TVアンテナ(29.7万円)/音声案内クリアランスソナー+バックガイドモニター(4.0万円)/エアピュリファイヤー(2.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(2):山岳路(2)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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