ランドローバー・レンジローバー Vogue(5AT)【試乗記】
BMWの息吹 2002.07.11 試乗記 ランドローバー・レンジローバー Vogue(5AT) ……985.0万円 「世界最高峰のプレミアム4×4」と謳われる、ランドローバーのフラッグシップ「レンジローバー」の新型が、2002年7月6日から日本に導入された。それに先駆け、同年7月3日に山中湖周辺でプレス向け試乗会が開催された。自動車ジャーナリストの河村康彦が報告する。数奇な生い立ち
今でこそ、フォードPAG(プレミアムオートモーティブグループ)の一員として、4WDオフローダースペシャリストの道を歩んでいるが、つい最近まで、ランドローバー社がBMW社の傘下にあったことは、記憶に新しい。1996年に開発がスタートしたという新型「レンジローバー」には、もちろんBMWの息吹が色濃く残される。
というより、例えばこのクルマに搭載されるパワーパック(4.4リッターV8DOHCユニット+シーケンシャルモード付き5段AT)は、ひと足先にデビューして絶賛されたBMWのSUV「X5」が積むユニットそのものといってよい。そう思って室内を見まわしてみると、いくつかのスイッチ類がX5と共通デザインであることなど、このクルマの“数奇な生い立ち”が散見される。
新型レンジローバーのエクステリアデザインは、ご覧のように歴代レンジローバーのアイデンティティを、確かに受け継いだ。ヘッドライドの処理などにモダーンなアレンジを加味してはいるが、ボクシーで堂々としており、そしていかにも頑丈そうな「レンジローバーらしさ」をしっかりと継承した。
一方のインテリアは、これまでのモデルとのイメージの共通性を探すのが難しいほどの一新ぶり。各部に“光りモノ”を巧みに配し、ドイツのライバル(X5や、メルセデスベンツ「Mクラス」のことだ)ほど、ビジネスライクな見た目になることを避けたところが、なかなかうまい。ランドローバーが「コマンドポジション」と呼ぶ、見下ろし感覚の強い運転席からの視界の広がりは、ラダーフレームを捨ててモノコックボディとなった現在でも健在だ。しかし、これまで2代のレンジローバーの特徴である角度の立ったフロントウインドウが、新型では随分寝かされてしまったのは、個人的にちょっと残念に思う。
変化した「走りのテイスト」
走りのテイストが、これまでのモデルから大きく変化したことには驚いた。率直にいってそうなった要因は、やはりBMWの影響が極めて大きいようにぼくには感じられる。ひとことで表現すると「従来のレンジローバーが備える重厚感に加えて、軽快な走り味を強く加味したのが新しいレンジローバー」なのである。特に、今回テストドライブした最上級グレード「VOGUE」では、19インチという巨大なシューズを標準で装着するにもかかわらず、その悪影響をまったく意識させない、何とも軽快なばね下の動きが、強く印象に残った。
「スポーティな」と表現したくなる加速フィールも、これまでのレンジローバーとハッキリ異なるポイントだ。もちろんこれこそ、新たに搭載された“BMWの心臓”による影響にほかならない。アクセルペダルを踏み込むたびに、何ともスポーティなサウンドを響かせるV8ユニットと、それに組み合わされた5段ATのでき栄えも、走りの軽快感を助長する。
ちなみに、このクルマが現在でも本格的オフローダーであることを示す重要な記号でもある、副変速機のハイ/ロー切り替えは、走行中でも可能(ハイ→ローは16km/hまで。ロー→ハイは48km/hまで)なシステムへとアップグレードされた。ただし、2WDと4WDの切り替えレバーは、センターデフの採用でフルタイム4WD化が実現したレンジローバーにとって、すでに「過去の遺物」となっている。
生粋のオフローダー
シャシーチューニングの考え方は、姉妹車(!?)BMW X5と大きく異なる。端的に言うならば、X5がオンロード性能の高さを強く狙ったのに対し、新型レンジローバーは、初めて独立懸架サスペンションやラック&ピニオン式ステアリングを採り入れたとはいえ、あくまでも生粋のオフローダーであることを念頭に置いて開発された。レンジローバーは新型になっても、相変わらず極端なまでに長いサスペンションストロークを備える。サスのストロークを検知して自動的にオンロードとオフロード、2つのモードを切り替えるフットワークが生み出す乗り心地もよく、用意されたクロスカントリーコースを走ったときの、悪路走破性も相当なものだった。
いくつかのメカニカルコンポーネンツを共有することから、レンジローバーとX5を差別化することの難しさを指摘する声がある。しかし、ぼくは「X5があるからこそ、新型レンジローバー固有の乗り味が実現できた」と思うのだ。
(文=河村康彦/TOP、走り、リア写真=高橋信宏、他=大澤俊博/2002年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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