メルセデスベンツCLK200コンプレッサーアバンギャルド(5AT)【ブリーフテスト】
メルセデスベンツCLK200コンプレッサーアバンギャルド(5AT) 2000.09.24 試乗記 ……564.0万円 総合評価……★★★★「後付け」キャラクター
力強い発進。3500rpmを超え、回転計の針が右半分に移ると、しかし籠もった冴えない音を発しながら、CLK200コンプレッサーは素晴らしい加速をみせる。ターボ車の、浮遊感伴う「ワープ」とは一味違う、地に足のついた(って、ターボ車だって地に足ついとりますが)リアルな増速感。
2リッター直4はスーパーチャージャーを得て、27psと4kgmアップの163psと23.4kgmを発生。クランクシャフトから直接動力を取り出す過給器は、中低回転域でのトルク増のため。実際、わずか2500rpmで最大トルクを発生するが、街なかの加減速では「ボーボー」ウルサイ。むしろ高速巡航時にこそ頼もしい。
洒落た外観にはともかく、重厚な乗り味にはよく合った「伝統の」一品。価格上昇が5.0万円に納まったのも、「後付け」ゆえか。
スリーポインテッドスターの2リッタークーペは、V6モデルより195.0万円(!)安いだけではない、新たなキャラクターを獲得した。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1997年のデトロイトショーで姿を現わしたCクラスベースの2ドアクーペ。翌年、カブリオレが追加。2リッター、同スーパーチャージャー、2.3リッタースーパーチャージャー、いずれも直4。3.2リッターV6、4.3リッターと5.4リッターV8と豊富なエンジンラインナップを誇る。日本には、クーペが2リッター、3.2リッターV6、オープンは後者のみが輸入され、2000年には、2リッターがNAからスーパーチャージャー付きに変えられた。
(グレード概要)
CLK200コンプレッサーアバンギャルドは、従来の2リッターNAにかわり、2000年8月25日から導入されたスーパーチャージャー付きモデル。CLKには、当初より南欧諸国向けに過給器付き2リッターエンジン(192ps、27.5kgm)をラインナップしていたが、新たに導入されたのは、ニューCクラスに搭載される163ps版。5段ATが組み合わされる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
グレーとダーククレーの2トーンカラーのオプション本革内装に色を合わせた、瀟洒なインパネ回り。オーソドクスだが、使い手を迷わせない。ディスプレイへの視線移動が大きいのが減点ポイント。
(前席)……★★★★
大仰なサイドサポートを生やしたりはしないが、微妙に左右を高くした座面形状とバックレストでドライバーを拘束する。クルマのキャラクターをキッチリ反映したシート。スチール製シェルをプラスチックのリーフスプリングを介してフレームに固定、クッションは多素材の階層式と、カネかかってます。
(後席)……★★
前席背もたれ側面にあるレバーを操作すると、自動的にフロントシートが前方に移動、後席への乗り降りを容易にする「イージーエントリーシステム」装備。ただし、後席の住人は頭が天井につかえ、長時間は座れないため、別名「イージーゲットオフシステム」(ウソ)。
(荷室)……★★★
奥行き105cm、床面最大幅125cmと、数値的にはなかなかだが、マルチリンクサスの出っ張りが大きいのが欠点。ヒンジ横のレバーを引くと、後席バックレストを倒すことができる。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2つの繭型ローターをかみ合わせて回すことでエアを充填するルーツ式スーパーチャージャー装着。ワクワクするスペックとラグのない過給が魅力だが、CLKのエンジンノートは、「ボー」と冴えない籠もり音。ストップ&ゴーの多い都会では耳につく。しかし、ひとたび高速道路にのれば、リアルな力強い加速を約束してくれる。5段ATは、スムーズなシフト。よく合ったギア比。文句なし。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
205/55R16というスポーティなサイズのタイヤのせいもあってか、微速時のステアリングは重め。乗り心地は、スタイリッシュな外観とはうらはらに重厚。正確なステアリング、高い接地感、しかし軽快にノーズの向きを変える、といった類のハンドリングではない。細かい「曲がり」では、切り返し時のロールの戻りが遅く、ノソッとした印象を受ける。
(写真=五條伴好)
【テストデータ】
報告者: web CG 青木禎之
テスト日: 2000年9月6日
テスト車の形態 :広報車
テスト車の年式 :2000年型
テスト車の走行距離 :694km
タイヤ :(前)205/55R16 91H/(後)同じ(いずれもGoodyear Eagle NCT5)
オプション装備 :本革シート+フロントシートヒーター(29.0万円)
テスト形態 :ロードインプレッション
走行状態 :高速道路(6):市街地(3):山岳路(1)
走行距離 :323.9km
使用燃料 :43.0リッター
参考燃費 :7.5km/リッター
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。