ポルシェ911カレラ(2002年モデル)【海外試乗記】
ニュー「カレラ」は3.6リッター 2001.08.07 試乗記 ポルシェ911(2002年モデル) 一時は、“身売り説”がまことしやかに流れたシュツットガルトのピュアスポーツカーメーカー、ポルシェ。いまや辣腕W.ヴィーデキング社長のもと、年産5万台を視野に入れる。同社のメインモデル「911」の2002年モデルに、自動車ジャーナリスト、河村康彦がドイツで乗った。シナリオの最新ページ
「業績絶好調!」が伝えられる現在のポルシェ社。その成功の秘密は、昨今の同社が手がけるシナリオライティングのうまさにある、とぼくは思う。
まずは新世代ポルシェたる「ボクスター」を1996年に200psプラス(204ps)でリリースし、翌年には300psで「新型911」(996)をスタート。両者の間に開いた“大き過ぎる隙間”を埋めるべく「ボクスターS」を99年に252psでデリバリーさせると、911シリーズ全体のイメージを再強化すべくオーバー400ps(420ps)の「911ターボ」をデビューさせる……という具合。これらの仕掛けがすべて順調に機能した結果、“身売り説”までささやかれたひと昔前の業績不振が嘘であったかのように、記録的な好成績を残すに至っている。
そんなシナリオの最新ページにかかれたのが、「911カレラ」のマイナーチェンジだ。「ボクスターに似過ぎている!」との声に応えるべく(?)、フロントマスクをターボ風テイストへと変身させ、エンジンを「200cc&20ps」スケールアップさせた。2002年モデルの911は、3.6リッターのフラット6から、320ps/6800rpmの最高出力と、37.7kgm/4250rpmの最大トルクを発生する。
もちろん、出力向上に合わせてシャシーを強化し、装備品レベルもより充実した。なかでも、不評であったカブリオレのリアウインドウを、樹脂製からガラス製へとチェンジ……、これが、新型911カレラシリーズのマイナーチェンジに盛り込まれた主なメニューといってよい。
エンジンに関しては、従来から用いられてきた吸気側の可変バルブタイミングシステム「バリオカム」に加え、ホンダ「VTEC」ばりの可変リフトシステムも加えられた。ターボモデルに一足先に搭載された「バリオカムプラス」がそれ。
前述の排気量アップもあって、911はパフォーマンスを一層アップさせた。トップエンドのパワーの伸びも素晴らしいが、体感上は3000rpm付近でパーシャルスロットルを与えた際の、トルクのつき方の方が印象的。明らかにより“空冷的”になった迫力のサウンドを響かせ、新しい911カレラは従来よりもさらに強烈な加速を示す。911カレラクーペ(6MT)の0-100km/h加速=5.0秒と資料には記載される。
カタログ値ピタリの285km/h
アルプス方面へのバカンスへと向かう渋滞の列を反対車線に見ながら、ミュンヘン郊外のアウトバーン上で、カレラクーペのデジタル・スピードメーターは、最高速度のカタログ値とピタリ同一の「285km/h」をマーク。フロントバンバーのデザイン変更およびフロントホイール前部に設けられたリップスポイラー採用により、「抵抗係数はそのままに、揚力係数を大幅ダウンさせた」という新型のエアロダイナミクス。たしかにこうした超高速域でも、基本的な安定性は十分なレベルにあると実感した。
ところが、これが4輪駆動の「カレラ4」になると、一層の信頼感が上乗せされる。超高速コーナリング中に段差を通過すると「カレラ2」はそれをきっかけにちょっと嫌な感じのヨーイングを発生させるが、カレラ4ではそれが巧みに抑制されているのだ。
新デザインのロードホイールが特に軽量化を意識してつくられたものであることもあり、国際試乗会に用意をされた新型911は、すべてオプション設定の18インチシューズを履いていた。ダンパーのセッティングが見直されるなど、一部がリファインされたシャシーは、基本的にはそれを見事に履きこなしているが、低速での乗り心地には、やはりある程度のマイナス影響が現われる。特に、首都高速道路でよく見られる、「継ぎ目のような段差」を乗り越えると、その衝撃はそれなりの大きさだ。日本での使用条件を考えると、本来は標準装備である17インチ仕様の方が、あるいはベターなのかも知れない。
(文=河村康彦/写真=ポルシェジャパン/2001年8月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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